獣
「わあ!」
地上にはかつての有象無象のモンスター達で溢れかえっていた。おっと、有象無象と言っては、このモンスター達をデザインした局長に失礼だろうか。
「モンスターに出会って感動なんて、私、生まれて初めてかもっす。」
「………」
今、確かに聞こえた。明らかにモンスターのそれとは逸脱した咆哮が、微かに。
「どこ見てるんすか…?」
「別に。何でも…」
「メメさんも、あの山に行くんすか…?また私を、置き去りにして行っちゃうんすか…?」
やはり、ダムキナはあの剣士の事を理解していたらしい。
「嫌っす…。行かないでっす…。」
「ごめんなさい…。」
私はダムキナの腕を掴む。
「でも、貴方も一緒。」
「……!はいっす!」
咆哮がもう一度聞こえる。今度はさっきよりも長く、大きかった。
「大丈夫っすか?急がなくてもいいんすか?」
「ちょっと急ごうか。私の背中に乗って、手綱は無いから我慢して!」
我が肉体よ…死國の駿馬となれ。
「うお!馬になった!」
最高速度が出せる姿だ。
「ブルル…。」
「うおおおおおお!落ちるっすうううう!死ぬっすううう!!!」
化け物の正体は一向に掴めないが、それが余りにも危険な存在である事だけは理解できた。
「シュパン!」
不意に首筋に斬撃を感じ取り、慌てて変身を解いて回避した。
「誰!」
岩壁から飛び降りてきたのは、あの剣士であった。が、身体が黒い鋭利な物に侵食されているように見えた。
「先輩!どこ行ってたんすか!ずっと待ってたんすよ!」
ダムキナはその剣士の方に駆け寄る。
「やあ、ごめんな、ダムキナ。」
剣士は大剣を構える。
「危ない!」
ダムキナを払い避け、私が攻撃を受ける。
「ぐう…」
「ちっ…一匹減らせると思ったんだけどな…」
人間については勉強していないが、ここまで豹変するのは何か訳があるはずだ。
「グルルルル…」
剣士の後ろから、黒鱗の獣が現れる。
「先輩…どうしちゃったんすか…?」
剣士は獣の首を撫でる。
「俺はこいつに惚れたのさ。」
私から見れば、操られている様にしか見えない。
「何行ってるんすか!それはただのモンスターっすよ!一緒に帰るっすよ!うひゃあ!」
斬り殺されそうになったダムキナを、腕を引いて守る。
「何言っても無駄だと思うよ…。」
「うう…でも…」
獣は一つ、咆哮を上げた。




