トンツー
「へえ!?」
局長と私は思わず声を上げる。
「いやー偽物と言ってもかなり良く出来てるねー。見た目はそっくり。本体とまでリンクしている点、かなりの技量が必要な筈だけどね。」
局長はかなり錯乱している。
「本体?どう言う事?」
「本体は本体。さっき出てきた機構がそう。発生装置はあくまでもデバイス。もしデバイスが壊れたり修理が必要になっても、本来ならあれが自動でメンテナンスするってわけ。まあ、そもそも核でも傷一つつかない発生装置が壊されたって言うのも初めっから怪しい話だったんだよ。」
「なるほど…つまりは…」
「本物が何処かにある…筈。」
ペンドラさんは問いかける。
「治せたり、作り直したり出来ないの?」
「もし本当に壊れていたらそうしていたんだけど、仮に作り直したりして、本物が何処かで稼働を始めれば、魔物の数は当然倍になる。それこそ人類滅亡だよ。」
「そっか。」
しかし厄介な事になった。何とかして本物の場所を突き止めなければ…
「そうだ。」
にっこりさんは何かを思いついたのか、再び魔物慈母を呼び出した。
「現在稼働中のデバイス情報を検索」
「・・・・・ー・ー・ーーーー・ー・・・・・・・ー・ー・・ー・・・ーーーーー」
「非稼動デバイス数」
「・・ーーー」
「デバイスα位置情報を検索」
にっこりさんの異次元の言葉と、魔物慈母の電子音の問答は少しの間辺りに異様な雰囲気を創り出した。
「よし、本物の場所は大体わかった。天界だ。」
「どーしてわかったの?」
ペンドラさんの無邪気な質問が、
「簡単に言うと、チリッツ信号から座標を割り出し、四方試演方にもとずき…」
意味不明な言語の海に沈められた時に、局長は割って入る。
「わかったわかった。とりあえず上の上に行けば良いのね。」
「そう言う事だよ。」
にっこりさんは満足そうだ。だけど私は一つ不可解な事がある。
「どうして貴方はそんな事を知っているの?」
「にっこりさんは沢山居ても、記憶の大部分は共有されているからね。インターネットって奴だね。」
やっぱり私には理解できなかった。いんたーねっと…?
「これ、そろそろ出してもいいっすか?何か青臭くて…」
「窒息死したいならどうぞ。」
「やっぱこの葉っぱ好きっす。」
話し合いの結果、私とペンドラさんが向かう事になった。ペンドラさんは純朴な戦力として、私はペンドラさんのお守りとして…?
「それなら局長の方が…」
「あたしはしばらくあけてた仕事があるし、この子はペンドラの部屋くらいでしか生きられないから。」
「成る程…。」
分かった様な分からない様なだが、行くしかない様だ。全く、こんな事ならはしゃいで遠出なんてしなければ良かった…まさかこの一か月で三界を回る事になるとは…
「じゃ、行ってくるね!お姉ちゃん!」
「じゃーねー。」
私達は今度、天界門の前に立つ。地上門とは打って変わって光り輝き、装飾品も豪華な物だ。
「うっ…やっぱり止めよかな…」
ペンドラさんは弱気な事を言うが、
「大丈夫。」
「ミャアッ!?」
私が天界門に放り込んだ。もちろん私も続く。天界には幼い頃一度行った事があるが、数秒でギブアップした思い出しかない。魔族にとって、あそこは眩しすぎた。
「うぐ…」
地面は雲の様で、空は澄んだ青空。辺りには黄金の様に輝く石材の構造体が無数に建てられ、遠くから鐘や賛美歌が聞こえる。本当に胸焼けがするほど嫌な場所だ。
「ペンドラさん…大丈夫ですか…?生きてますか…?」
「な…なんとか…」
早く見つけ出して、とっとと帰りたいものだ。
「カシャカシャカシャカシャカシャ。」
不意に私達の背後から二匹の小さな金属の蟹が現れていた。それは私とペンドラさんの右耳に取り付く。不思議と違和感や嫌な感じは無かった。
「やあやあ聞こえるかい?」
「にっこりさん?」
「その機構を通してぼくが大体の位置を教えてあげるよ。」
「それは良いですね…ゲッホゲッホ!」
「大丈夫?魔族にとって天界は毒だからね。強い光とかには近づかないでね。」
「うん…」
深呼吸を一つして、歩みを始めた。
「あの神殿の地下に反応があるってさ!行こうよ!」
「え?貴方は誰と話してたの?」
「にっこりさんだよ!何で?」
…深く考えないようにしよう。考えてもきっと私には理解出来ない。
「見て…あれ…」
「魔族だと…?穢らわしい。離れよ!」
やはりこうなるか。面倒ごとにならないと言いが…
「おい!あれを見ろ!魔族共だ!あのままでは聖域に…」
「させるか!」
翼の生えた白馬の引く戦車に乗った天使が、神速のごとく現れた。
「うひゃあ!」
ペンドラさんの身体を突き抜けたが、ペンドラさんの身体そのものが気化し、受け流した。
「ここから先は主神の神殿。穢れた魔族を通す訳にはいかない!」
「やああ!」
ペンドラさんが爪に力を纏わせると。爪は黒色の鉱石に覆われて、巨大かつ殺傷性の高いものになった。天使はそれを見計らうと、背後から大きな光り輝く矛を取り出して、それを構えた。
「やあ!」
矛と爪はぶつかり合う。矛は砕け、爪は鉱石の一部が欠けただけであった。
「何!」
「やああ!」
ペンドラさんの爪が天使の身体を引き裂く。紅く染まった白い羽が辺りに舞い散る。
「はあ…はあ…はあ…やった…!」
「やってない!神殿に急ぐよ!」
こんな所で暴れては、天使達の注意を引くだけだ。数では圧倒的に不利な現状、戦闘は避けたかったが仕方ない。局長め…考えたではないか。
「待てー!」
「やだー!」
もうすぐ神殿だ。状況が好転するとは限らないが、目的地に向かう。




