帰還先
「よく来てくれたねー。貴方はいくつー?12歳くらいかな?」
局長はダムキナを気に入ってくれている様だ。
「あ…あんまりペタペタ触ると怒られちゃうよ。」
あれだけ説明したのに、ペンドラさんはまだ勘違いしている様だ。
「38歳っす。」
「!?」
一瞬にして…辺りの空気が凍りついた…ダムキナは人間…の筈…
「そ…そそそんな事より局長、急ぎの用事って何ですか?」
「そうだね。これなんだけど。」
局長がポケットから出したのは、薄く光る黒色の刃物らしきものだった。黒曜石にも見えるそれは、怪しく光を紫色に反射していた。
「壊された発生装置の中から出てきた。初め部品か何かだと思ったけど、機械の損傷部分とぴったりの大きさなんだ。」
「発生装置?何のすか?」
「そりゃモンスターのって、あれ?メメ教えてないの?」
「すみません。忘れてました。」
「何すかモンスター発生装置って!モンスターって、あの?」
ダムキナはかなり錯乱している様だった。局長は少々参った様子ではあるが、落ち着いた語り口で説明を始めた。
「にっこりさんって知ってる?」
「はいっす。大昔に一度見ただけっすが…」
「モンスター発生装置って言うのは、にっこりさんが作ったテラテクノロジーの一つ。光とか煙とか、4次元的なエネルギーを使って虚弱生命体、モンスターを生成して地上に放つ機械だよ。いや、厳密に言えばモンスターは副産物みたいな物。本命は一緒に生成されるアイテムだ。」
「な…なるほどっす…ちょっと頭が追いつかないっすが…」
そして、私の困り事は、その機械を誰が壊したかと言うことだ。
「え、それなら、強い魔物を倒した時とか、強くなるのは何でっすか?」
「諸説あるけど、モンスターの4次元エネルギーの一部が人間に移るって言うのが通説だね。」
「なんか、此処が世界の深淵なんすね。」
そんな事は無い。本当の世界の深淵は、恐らくにっこりさんたちだろう。しかし今はそんな事より…
「これが何なのかですね。」
「そう言えばさっきの子は何処っすか?」
言われてみればペンドラさんの姿が見えない。その時、
「連れてきたよ!にっこりさん!」
「とっとと。ん、やあ!ルドラ、メメも帰って来てたのかい?」
はあ、これはどう考えても私の屋敷のにっこりさんだ。
「ねえにっこりさん!これ直せる?」
「どれどれ?なるほど。”卵嚢のオブジェクト”か。また見事に壊したね。自己防衛機能は働かなかったのかい?」
「じこぼうえー?」
「うん。そうさ。例えば…」
にっこりさんは何処から取り出した小石を、その機械に投げつけると、近くに異様な空間の歪みが現れた。
「ゴオオオオオ…」
全体が黒く、無機質な物で形ずくられた機械が現れた。聖典に現れる聖母の様な姿をしているが、頭部はトカゲかドラゴンを模しており、不自然な風の音が常にそれから聞こえていた。
「“魔物慈母オーガニゼイション”さ。この二機がセットでね。」
魔物慈母はにっこりさんに向かって来たが、にっこりさんの目の前でピタリと動きを止めた。
「access ID.194646498126467411694595-917293749-67182679162937383649519273648」
魔物慈母は電子音を放つ。
「・ーー・ー・ー・ー・・・・・・・・・ーー・・・ー・ーー・・・・・・・・・・ーーーー・」
「撤退を申請。」
「ーーー・ー・ー・・・・ー・・ー・ーー・・ーー・・ー・ーーー・・・ー・ー・ー・・」
魔物慈母は、その音声を流し終えると、再び空間の歪みの中に消えていった。
「やっぱりだね。」
「何か分かったの?」
「うん。簡単に言うと。」
にっこりさんは、スクラップ同然の発生装置に視線をおとす。
「これは偽物だ。」




