知らない間に、膨れ上がった利息。 〜Compound interest〜
パーティ中に響いたノックの音。その主は主任の娘ではなく、研究員だった。すぐに主任が反応し、研究員と少し話す。
その間にまた第一事例の携帯端末が震える。
「すみません、出撃です...」
言い淀む主任。
いつもならば、こんな姿を彼女たちの前には見せないのだが。
「えぇー、いまからー?場所は?」
第三事例のツインテールが彼女の落胆を分かりやすく表現してくれる
「......」
主任は返事をしない。
「...すぐ近くの巨大都市施設、ですよね...?」
第一事例が、珍しく指摘する。
目を逸らす主任。珍しい反応だ。
「え、えるどらど?」
ついていけず、周りを見渡す第四事例。
「主任の娘さんから、連絡が来ました」
第一事例は自分の携帯端末を指で叩く。チャット画面には『始まった』の文字。
「せ、説明になってないんだけど」
第三事例は、どうやら事の重大さを理解し始めているようだ。
「恐らくですが...私達が、私達だけが処理できると言われている事案は、巨大都市施設の実験が理由で発生しています」
「友達なのは嬉しいですが、娘の話を鵜呑みにしないでください...」
「主任もその筋に当たりをつけて、研究していましたよね?娘さんから聞いてます」
どんどん主任を詰める第一事例。目を合わせない主任。主任は普段、必ず目を見て話すようにしている分、それが際立つ。
「そんな場所で起こった事案という訳ですか」
完全に任務モードに切り替わって指摘する第二事例。
「そういうこと、です...」
第一事例の腹を括ったような顔。普段なら絶対に見せない表情である。
「待って、わかんないんだけど」
「も、もしかして、一番大きな戦闘になるってことですか?」
内心気がついていながらも、無意識に誤魔化そうとする第三事例。なのに、ソコを第四事例がついてしまう。
「えぇ...負傷者ゼロは難しいでしょう」
ようやく口を開いた主任。
「全滅の方が有り得るのでは?」
間髪入れない第一事例
「...いずれにせよ、対処しないといけない事案です。やるしかありません」
「......」
主任と第一事例の間が、淀んだ空気に満たされる。
睨みつける第一事例を無視し、準備を進める主任や他の研究員。
仕方なく、4人も準備を始める。
「第二事例、解っているとは思いますが、いつでも私からの指示が通るように」
「はい。私より他の子たちを見てください。私は大丈夫です」
ここのやり取りはいつもと変わらない。この状況の中、落ち着いて準備が出来ているのは、彼女ぐらいだ。
「心配しないで、主任!みんなで帰ってくるわよ!戦闘向きの私が居るもの!」
「そうですね。第三事例が居るなら安心です」
快活に話してくれる第三事例だが、いつもと違う。緊張から来る快活さなのだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
「第四事例、もっとゆっくり。深呼吸です」
「は、はいッ」
これまで以上に震えている第四事例。正直、連れていかない方がマシな気もするが、彼女の能力が一番強力であり、本人もその自覚はあるようで、弱音は吐かない。吐かないように堪えている、というのが正しそうだが。
「第一事例、頼みました...」
「私、戦闘に関しては、何もできませんよ。この通り貧弱なんですから」
そう言って、コメットに乗る第一事例。
そう、このコメットは、元々激しい運動ができない第一事例の為に用意したものだった。
「接続完了です。いつでも」
第二事例の青い目がほんの少しだけ、光っているように見える。
「...行ってらっしゃい」
振り向きながら手を振る第三事例。
不安そうにこちらを何度も見る第四事例。
見向きもしない第二事例。
最後に睨む第一事例。
主任は、モニター室で4人を見守ることしか出来なかった...




