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無限の加速には、無限の代償。 〜Light-year〜

「ではでは!初出陣をいわってーぇ...第一事例《ルカ》!ココはあなたが乾杯《コール》するのっ!」



早く!早く!と急かす第三事例《シャドウ》


「え、そう!?え、えっと、かん、ぱい?」



グラスがぶつかる音が、部屋に響く。それぞれの光が交差する。



「もう、ちゃんと仕切ってよぉ。リーダーなんだから」


「ご、ごめんなさい...」


「そこで、謝ったら怒られますよ」



サラッと指摘を入れる第二事例《レコーダー》。


「そうよ!第一事例《ルカ》は謝り過ぎ!何度も言ってるのにぃ」


「はい、私もここまでの流れを何度も見せられています」



少し楽しそうな第二事例《レコーダー》。声もわずかだがトーンが高い。



「ま、まぁ、下流階級《ワタシタチ》はこういうの今まで経験したことないし、ネ?」


「そうなんだけど!第四事例《スリット》は本当に甘いんだから...」



ヤレヤレ顔の第三事例《シャドウ》



「経験したことがないからこそでしょ?こういうのを楽しむのは!私達が頑張れば、美味しい物食べて!帰る家があって!タダイマが言える!」


「確かに、今までは想像もできなかった生活です」



珍しく第二事例《レコーダー》が割って入る機会が多い。



「甘いものが、沢山食べれるのは嬉しいでス...」



モジモジと喋る第四事例《スリット》



「またそう言って〜太るわよぉ〜?」



茶化す第三事例《シャドウ》に対し、



「ソ、その分、訓練頑張ります!みんなの為にも、能力がちゃんと使えるように!」



立ちに向かう第四事例《スリット》。



「いい心がけですね」



笑ってその光景を見る主任。



「てか!主任の娘さんはー!?」



第三事例《シャドウ》がツインテールを揺らしながら尋ねる。



「少し、立て込んでるみたいで。もう少ししたら来るらしいですよ。多分、手作りのお菓子を沢山用意しているのでしょう。あの子は手先が器用ですから」


「ど、どんなお菓子ですか?」


「ティーケーキとか、フィナンシェとか。他にもマカロンも作れたはず」



興味津々に聞く第四事例《スリット》と自慢げに話す主任。


第四事例《スリット》は食べたことないお菓子や聞いた事のないお菓子の話で目を輝かせていた。


(この子達は、本当にどこかで見たような反応をなぞる...まだ、時間がかかりますか。自発的な感情は)


その時、ドアからノックの音が聞こえる。



「お、来たみたいですね」



切り替えてドアを開けようと、駆け寄る...



***



時間は少しだけ巻き戻る。

監査官が評議会から退室したあとの話。



「はぁ...話がなげぇんだよ。御上さん方も多過ぎるわ。見渡す身にもなれ、首が疲れるわ」



そう、監査官の愚痴の通りである。

このギリシア文字が当て振られた席、

"24席だからギリシア文字が当てられた"

のではなく、

"ギリシア文字に合わせて24席用意された"

のである。



「監査の俺には、別の案件の話してくれねぇし。の割には関係ないトコまで探ってこいとか言うしよぉ。はぁ、結局BB炉(ホンメイ)はどの段階まで行ってんだ?いつになったら実用してくれんだよ...」



顎で空を仰ぐ。そして、その舌でキャンディを回して遊ぶ。

監査官は評議会の帰り、キャンディを舐めながら愚痴を垂れていた。愚痴をたれることができるのも、特権である。



「アレさえ、完成すれば地球なんて気にしなくていいし、中流以下もなぁ」



監査官は、もうポケットのキャンディがないことに気がつく。反対側のポケットを漁ると、『バグバグ!パクチーバグ!』というパッケージに包まれたグミが入っていた。



「あーこれ、主任に食べさせようと思ってたのに...子供に渡す前に、主任に渡すんだったなぁ。こんなん自分で食べたくねぇよ」



最後の一つとなったキャンディを長く味わう為に、噛み砕く選択は除外した。もう少しこのキャンディと舌で遊んでいよう。


有刺鉄線を始めとする拒絶設備で囲まれた、巨大都市施設を改めて高台から一望する。この景色は、上流階級が嫌うここでしか楽しめない。だから、わざわざ汚染対策をして、定期的にここに通っているのだ。


この景色の大半を占領している、巨大都市施設。御上さん方のBB炉(ホンメイ)の為だけに用意された施設で、大都市を4つ程入れてもまだ余裕のある大きさを誇る。



「BB炉(ホンメイ)が動けば、λさんのテレポーテーションもなぁ...こんな地球《ホシ》からとっととおさらばしようz......は?」



監査官が目にしたのは、あの巨大な都市施設が、それ以上に巨大なシャボンのように膨れ上がる光景だった。シャボン玉が地面に落ちた時のように、半球状に。



「オイオイオイ、どうなってんだよ」



監査官は急いで逃げようとした。しかし上手くいかず、コケてしまう。

慌てて、パニックになったせいで、舐めていたキャンディを喉に詰まらせる。


その時、風が変わった。防護スーツ越しにでもわかる。


必死に咳き込んでいるうちに、目の前で例のナニカが現れた。


(楽しくなってきやがった...)


最後の軽口、監査官はいつものように言葉にすることが出来なかった。

サイボーグ化していれば、誰かには届いたかもしれないが、生身《オーガニック》の彼にそれは叶わなった。


(噛み砕いた方が良かったなぁ、キャンディ.....)

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