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夜空の星に願う前に、足元の星を。 〜Careless mistake〜

薄暗い路地...いや、薄暗いんじゃない。

ススで汚れてるのだ。



「ゴフォッ、、、」


「今度はなんだよ...最近、変だぞ?」


「ウイルスでも、仕込まれたかも、しれねェ」



瞼の動きがおかしい...動く度に軋む音が聞こえる。



「あぁ?いつ仕込めるんだよ。無理だろ」


「で、でも、もしモシmo,m,ooo...」


「あーあ。余計なこと、"考える"から」



調子が悪そうにしてた男が、動きを止め反対側に歩き出す。軋む瞼は両眼ともに閉じられ、もうあの嫌な音はしない。

あの不調にもう付き合わなくていい。



「しかし、便利な世の中だな」



置いていかれた男は、反対側に歩く男の背中ではなく、その先、リブートセンターを見ていた。


"壊れてしまっても大丈夫"


と電光掲示板に大きく示されている通りだ。



「本当に、便利な世界になったな...」



男の目が一瞬曇る。

記憶をインストールする時間だ。



...思い出シタ。

地球の環境保全に完全に失敗したんだった、俺たちは。


環境汚染は勿論、人類にも牙を剥く。

環境に汚染が蓄積されるのであれば、人体にも汚染が蓄積され続ける。

この汚染の蓄積は、母体だけでナく胎児にも及ぶ...



虚ろな目は巨大モニターを捉える。



『諸君、より良い国家とは何か!?より良い演算装置ッ!より良いネットワークッ!より良い義体を国民に提供できる国だッ!そして、それこそ我が国であるッ!!』



そうだ...我が国の大統領が言ってくれているように、国は"救済"ヲ俺たちに提示してくれた。


無駄な足掻きとされた環境保全技術、それこそ救済。

環境に優しいと言うことは、人体にも馴染み易いと言うこと。流石は我が国の科学者達。よク考えたもんだ。


これがサイボーグ技術と結びつき、機能を果たせなクなった臓器等のサポートをするようになり、汚れきった地球に光が見え始める。


最初に解決しないといけなかったのは脳。汚染の影響を最も多く受けた器官であり、縮退から始まり、機能不全による精神疾患は慢性的な社会問題だった。まるで吹き溜まりのヨうに無言で人が群がる様は、なんとも酷いものだった。それがあチこちで、だ。


しかし、これは脳に送受信機を埋め込むというサイボーグ化で解決。これにより、国家が提供する人工知能に接続できるようになり、脳の機能不全を補うことで解決した。実に素晴らシい。我が国、万歳だ。


これを起点に眼や耳、舌に留まらず様々な部位に対応するサイボーグ用の器官《パーツ》が、民衆に提供されて行くようになる。


そう、俺らは完全に救われたのさ、国家によって。



「ん?なんだ?」



男の目が一瞬、クリアになる。目の前に珍しいのが居て、それに気を取られたからだった。



「思考と経験(プライベート)がないってどんな気分かしらねぇ」


「そもそも、気分もプログラムできるんだから、同情しなくていいわよ。早く行動得点《ポイント》を稼いで行きましょう」



そしてまた、虚ろな目にもどる。



この"救済"、同時に『完全管理社会への移行』を進められてイた。脳を始めとして常にネットワークに接続すると言うのは、ネットワークを介して受信を行う。と言うだけでなく、送信もスるということ。

つまり、個々人の思考と経験(プライベート)は常に国家に共有さレる...


ただ、それほど問題だろうか?この汚れきった地球では、健康体で産まレることすらできないのだ。



『諸君、国家の在り方とはなにか?弱者生存!弱きに手を差し伸べるのが!国家であるべきだろう!?』



あぁ、大統領の言う通りだ...だってそうでもしないと、生キてけないんだからな...



「生身の母体(オーガニック)で出産したらしいわよ。向こうの」


「そんなの生前からの虐待じゃない...」



さっきから、俺を物珍シそうに見てるのは、きっと上流階級の方々だろう。あの方々はよくそウいう話をしている。最近は、「義体を極力使用しない」というのも主流となりつつあるらしい。物珍しく、よく来るやつがそう言っていた。汚染対策のマスク越しにキャンディを舐める音がよく聞こえる奴だ。生身《オーガニック》のせいで、舌の使い方が下手なノかもしれない。



「不便じゃないか?生身《オーガニック》ってのは。その汚染対策も不自由そうだ」



前に聞いてみた。



「"義体を使用しない"というのは、思考と経験(プライベート)を保てると言うこと。それこそ、上流階級の特権なのさ。俺からしたら、今考えていることも、与えられたものってのは不気味だし、居心地が悪いんだよ。今のお前みたいにな」



そうソイツが言っていたが、上手く処理出来なかった。



***



「そんな時代、下流階級で奇跡が産まれた。

その奇跡の子を拾って『第一事例《ルカ》』と名付けたって訳か。主任もロマンチストだよなぁ」



監査官は、改めて星屑計画《プロジェクトミーティア》の資料にある第一事例《ルカ》の項目に目を通す。生身《オーガニック》の脳が故に、暗記は出世への必須能力である。



「んーっで、その第一事例《ルカ》ちゃんは、汚染に侵されながらも、運動系以外はほぼ万全の脳の状態と。それで、事例《ケース》の起点が脳にありそうだから、下手にいじれず情動や記憶のコントロールが難しいねぇ...」



暗記は"口に出した方がいい"。今日まで、生身《オーガニック》の人生で得た教訓だ。



「さて、行きますか。主任を待たせるのも悪いし」

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