鐘の前夜
聖光教は王宮の審議を待たず、翌朝の公開処刑を宣言した。ミレアは紙片を求め、アレンへの手紙を書く。助けに来てとは記さない。ここで見た人々すべてが敵ではなかったことと、憎しみに国を渡さないでほしいという願いだけを託した。
聖光教の教えでは、魔族は言葉をまねるだけの獣とされる。だから使節が何を話しても、理解できるという事実そのものが教義への脅威になった。
海峡は狭い。それでも知らせが往復するには時間がかかる。片方で決まったことを、もう片方は止められない。その距離が、悪意より残酷に二人を隔てていた。
アレンは怒りを否定しなかった。否定すれば、怒りは見えない場所で別の誰かを焼く。彼はすべてを聞き、誰を守り、何を止めるのかを一つずつ分けて考えた。
誰か一人の勇気ですべてが変わったわけではない。それでも沈黙しかなかった場所に、違うと言う声が生まれていた。
祈る者のすべてが処罰を望んだわけではない。声を上げられない者の沈黙まで、教会は賛同として数えていた。
港の風は白布を揺らし、その向こうで教会の旗も同じ風を受けていた。旗が違っても、空まで二つに分かれてはいない。
記録する者は、見たことと命じられた説明を別々の頁へ書いた。その小さな区別が、後に真実を選び直す場所になる。
祈る者のすべてが処罰を望んだわけではない。声を上げられない者の沈黙まで、教会は賛同として数えていた。
港の風は白布を揺らし、その向こうで教会の旗も同じ風を受けていた。旗が違っても、空まで二つに分かれてはいない。
記録する者は、見たことと命じられた説明を別々の頁へ書いた。その小さな区別が、後に真実を選び直す場所になる。
(本文実測:685字)




