朝の鐘
朝の鐘が鳴り、使節団は広場へ連れ出された。ミレアは群衆の中に白布を握る手を見つけ、最後まで目を伏せなかった。海の向こうでは、別の小舟が持ち帰った手紙をアレンが開く。読み終えても、彼は叫ばず剣も抜かなかった。
港務官の中にも、教会の強引さへ疑問を持つ者はいた。しかし疑問を口にすれば家族まで背教者になる。恐怖は人を一度に狂信者へ変えず、まず沈黙を選ばせた。
使節団の誰も、自分たちの死を英雄譚にするため来たのではない。家へ帰り、航海の失敗を笑い、次の荷を相談するつもりだった。その当たり前の予定が、教義の都合だけで奪われていく。
アレンは怒りを否定しなかった。否定すれば、怒りは見えない場所で別の誰かを焼く。彼はすべてを聞き、誰を守り、何を止めるのかを一つずつ分けて考えた。
誰か一人の勇気ですべてが変わったわけではない。それでも沈黙しかなかった場所に、違うと言う声が生まれていた。
処刑の刃が落ち、使節団の声は途切れた。アレンは手紙を畳み、人類を滅ぼすとは言わなかった。彼が静かに告げたのは一つだけだった。人が互いを知ろうとする道を塞ぎ、恐怖を救済と呼ぶ聖光教を、必ず終わらせる。
港の風は白布を揺らし、その向こうで教会の旗も同じ風を受けていた。旗が違っても、空まで二つに分かれてはいない。
記録する者は、見たことと命じられた説明を別々の頁へ書いた。その小さな区別が、後に真実を選び直す場所になる。
祈る者のすべてが処罰を望んだわけではない。声を上げられない者の沈黙まで、教会は賛同として数えていた。
港の風は白布を揺らし、その向こうで教会の旗も同じ風を受けていた。旗が違っても、空まで二つに分かれてはいない。
(本文実測:696字)




