届かない文
和平文書は王宮へ運ばれず、異端文書の箱へ入れられた。ミレアはせめて封蝋と署名を確認するよう求めたが、審問官は魔族の文字に意味はないと言う。読まないことを選んだ者に、内容の真偽を問う資格はなかった。
聖光教の教えでは、魔族は言葉をまねるだけの獣とされる。だから使節が何を話しても、理解できるという事実そのものが教義への脅威になった。
使節団の誰も、自分たちの死を英雄譚にするため来たのではない。家へ帰り、航海の失敗を笑い、次の荷を相談するつもりだった。その当たり前の予定が、教義の都合だけで奪われていく。
港で荷を扱った者たちは、使節が誰一人として威嚇しなかったことを見ている。命じられた説明と自分の目が食い違い、その違和感はまだ小さな声で交わされた。
鐘の音は町中へ届いたが、同じ意味では聞かれなかった。救いの合図と思う者、命令と受け取る者、初めて恐ろしいと感じる者がいた。
港の風は白布を揺らし、その向こうで教会の旗も同じ風を受けていた。旗が違っても、空まで二つに分かれてはいない。
記録する者は、見たことと命じられた説明を別々の頁へ書いた。その小さな区別が、後に真実を選び直す場所になる。
祈る者のすべてが処罰を望んだわけではない。声を上げられない者の沈黙まで、教会は賛同として数えていた。
港の風は白布を揺らし、その向こうで教会の旗も同じ風を受けていた。旗が違っても、空まで二つに分かれてはいない。
記録する者は、見たことと命じられた説明を別々の頁へ書いた。その小さな区別が、後に真実を選び直す場所になる。
祈る者のすべてが処罰を望んだわけではない。声を上げられない者の沈黙まで、教会は賛同として数えていた。
(本文実測:697字)




