広場の噂
広場では、姿を見たこともない使節団について噂が膨らんだ。毒を持つ、夜に子を奪う、竜を呼ぶ。聖光教の説教師は否定できない話だけを選び、恐怖を確信へ変えていった。港の魚売りだけが、荷箱から薬草の匂いがしたと繰り返した。
港務官の中にも、教会の強引さへ疑問を持つ者はいた。しかし疑問を口にすれば家族まで背教者になる。恐怖は人を一度に狂信者へ変えず、まず沈黙を選ばせた。
王国の兵にも迷いはあった。命令書には魔物の拘束とあるが、牢の中から聞こえるのは仲間の傷を案じる声と、薬を求める声だった。剣を握る手は、教えと目の前の事実の間で震えた。
港で荷を扱った者たちは、使節が誰一人として威嚇しなかったことを見ている。命じられた説明と自分の目が食い違い、その違和感はまだ小さな声で交わされた。
鐘の音は町中へ届いたが、同じ意味では聞かれなかった。救いの合図と思う者、命令と受け取る者、初めて恐ろしいと感じる者がいた。
記録する者は、見たことと命じられた説明を別々の頁へ書いた。その小さな区別が、後に真実を選び直す場所になる。
祈る者のすべてが処罰を望んだわけではない。声を上げられない者の沈黙まで、教会は賛同として数えていた。
港の風は白布を揺らし、その向こうで教会の旗も同じ風を受けていた。旗が違っても、空まで二つに分かれてはいない。
記録する者は、見たことと命じられた説明を別々の頁へ書いた。その小さな区別が、後に真実を選び直す場所になる。
祈る者のすべてが処罰を望んだわけではない。声を上げられない者の沈黙まで、教会は賛同として数えていた。
港の風は白布を揺らし、その向こうで教会の旗も同じ風を受けていた。旗が違っても、空まで二つに分かれてはいない。
(本文実測:711字)




