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三話  悲劇

※十一話まで、前の六話までの内容を分割、整理して作りました。

華鈴は鈴音が修行しているであろう場所を通ると……


「え……これ、血……だよね?」


しかし彼はおらず、岩場には血飛沫があったのだ。


「鈴音、どこに行ったの。ねえー出てきてよ‼︎」


華鈴が辺りを呼びかけるが、応答がない。


「私の異能をうまく使えば……」


華鈴は集中して、一帯のオーラの揺らぎを感じ取ろうとするが……

しかし、鈴音の爽やかなグリーンなオーラは感じ取れなかった。


「鈴音いるの、いるのなら返事をしてぇ‼︎

 私も悪かったよ、言いすぎたって認めるから出てきてよ。」


華鈴が鈴音を探しながら、辺りを散策していると家の方角から火の手が起こっていたのだ。遠くからもかすかに感じられる家族のオーラが、炎に包まれて、ぷつぷつと消えていく。


「まさか……」


全身の血の気が引いた。

急いで、家の方へと華鈴は駆け出す。


(あれは家の方角だった……)


息が絶え絶えになっても、途中で木に引っかかって転んでも、必死に走り続ける。


「さっき見えた家族のオーラの様子は勘違いだよ、きっと!」


華鈴はそう思っていた。

数分後ようやく玄関の前に辿り着くと家は火の海に包まれていた。


「うそだ……」


 華鈴が呆然と立ち尽くしていると玄関を中からどんどんと叩く音が聞こえる。

ドアを乱暴に開く……

そこから転がり出てきたのは顔に凄惨な火傷を負った美鈴だった。


「おねえちゃ…ん?」


「美鈴……どういうこと、これは……一体何があったの!?」


「わかんない。

いきなり美鈴たちみたいに能力を持っている人に襲われた。」


美鈴はーーはぁはぁーーと乱れた呼吸をしていた。

火傷の具合はひどく、頭蓋骨が覗くほどに酷いものだった。


「お姉ちゃん……助けて……まだ死にたくない」


「何言ってんの、絶対助かるよ……

私はまだ美鈴にお姉ちゃんらしいこと全然できてないのに!」


この言葉はもう彼女には聞こえていなかった。


「あぁ……そんなぁ美鈴‼︎」


姉に助けを求めながらも、美鈴は亡くなった。

絶望のあまり華鈴はその場から動けず、ただ美鈴の亡骸を眺めていた。


「鈴音……そうだ。鈴音はどこだろう?」

 

 華鈴の消えかけた希望の灯火は鈴音の笑顔を思い出し、再び灯り出す。

 訓練中に流血など珍しいことである、せめて華鈴は鈴音と最期に話したかった。

美鈴の亡骸を家の近くに埋葬して、再び家の中に飛び込む、


「うぇ……煙臭い」


煙が充満してきて、その匂いのせいで頭がくらくらとするが、それでも華鈴は進む。


「華鈴……戻ってきたの?」


「そうだよ、心配するに決まってんじゃん母さん‼︎、一応家族なんだから!」


見つかったのは、惨殺された父の遺体と瀕死の母だった。

奥には姉や兄たちの死体が転がっていてその光景はまさしく地獄絵図だった。


「あんなに『自分は強い』って私に誇示していたくせに……」


 華鈴は姉や兄の遺体にこう吐き捨てた。

 彼女の中から、彼らの死に対する悲しみなんて感情は一ミリも湧いてこなかった。


「ねぇ……母さん、私がいない間に何があったの?

 あと、鈴音はどこにいるの!」


「わからない……でもみんな殺されたわよ、黒いローブの異能力者に襲われて……

 顔もよく見えなかった……何者かすらもわからなかったの……」


この言葉で華鈴の中の希望の灯火はふっと吹き消されてしまった。


「華鈴、ごめんね。

遅すぎたなぁ……近くで見るとこんなに可愛かったのに……」


「母さん……」


華鈴の頬に手を当てたあと、母も力尽きてしまった。


――温かい――


 母の手は、周りの炎とは違う暖かさだった。その温もりが消えていくのと同時に、華鈴は初めて親の愛というものを知れたような気がした。

その後、彼女は黒煙が広がる家から外に出た。

華鈴は家も焼かれてしまい家族も死んでしまった。


(もう私に「帰る場所」なんてない、これからどうすれば良いんだろう?)


華鈴が途方に暮れて、敷地内を歩いていると、おいわさまのある修練場にまたもどってきた。いつも通りにおいわさまは怪しく輝いていた。


「私たちはあんたを守ってきたのに、なんでこういう時は助けてくれないの⁉︎」


 とやるせない思いをおいわさまに目一杯ぶつけるもなにも起こらない。

心の中は「絶望」の二文字だった。


「ははぁ……もうどうでも良いや……」


華鈴は虚な目を浮かべて、山の岸に立ち……


「こんなことは望んでいない、私は自由に生きたかったのに……」


 目を瞑り、崖から身を投げ出した。

次に華鈴が目を覚ますと、――何もない空間――だった。

 辺り一面が真っ白で、虚無という言葉が相応しい空間。


「……ようやく会えた」


「え……誰、私は死んだはず……あなたが助けてくれたの?」


華鈴の前には、顔を覆い隠すほどの銀髪があった。


「私はスーザン。まぁ、そういう感じだよ。」


「私は全部、失った……もう何もないの!!

 もう終わらせたい……だから、なんで死なせてくれなかったの!!」


華鈴は前に出て、スーザンの服の襟を掴む。

 涙を浮かべながら、恨めしそうに彼女は睨んだ。


「それがあなたの望みですか。

あなたは全てを失った、でも……死にたかったの?」


「はい……」


スーザンは、ギロリと長い髪からでもわかるような鋭い視線を華鈴に向ける。


「嘘でしょうね?あなたは『自由に生きたい』と言ったね!」


「う……」


 聞かれていたのかと華鈴は次に出す言葉に戸惑う。


「本当は私は生きたかった、弟の鈴音とも妹の美鈴とも……

でも二人はいない、私だけ生き残ってもなにも意味がないよ……」


「じゃあ、あなたのその『自由に行きたい』という依頼は受け取りました。

このスーザンさまが、叶えて差し上げましょうか?」


「へ……?」


[スーザンの異能――次元の扉――]

 自分が認知した座標にワープすることができる力。


「私の力で、あなたをワープさせてあげる。」


 そのスーザンと名乗る少女が手をかざすと、何もない空間がひび割れていき……

 何もかも飲み込むブラックホールのような黒い空間が露わになる。

 

「ワープってどこに?」


「えい!」


「わっ⁉︎」


 スーザンは華鈴をその裂け目に押し込む。


「私の宮殿があったところだよ〜

 今は研究所だけどね、言葉とかは……まぁ、大丈夫でしょう!」


「ちょ……待ってえぇぇ、どういうこと〜」


 華鈴はその穴に吸い込まれっていった。

 スーザンは心配そうに華鈴を上から見つめている。


「私たち『シャドウ』の役に立ってね……」


 スーザンは華鈴が完全に穴に吸い込まれたのを見て、ーーニヤリと笑っていた

チラリと見えた顔の両頬には、蛇のようなうねる刺青が彫られていて、赤い赤眼が輝いていた。




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