64.アーニャSide——永遠の庭
目を開けた。
病室のようだ。泣き声がする。
私が寝ているすぐそばで、リディアとエリスが泣き崩れていた。
――あぁ、2人とも大きくなったわ。
「お姉様……」
「お気づきになったのね、お姉様!?」
リディアとエリスは号泣していたが、私が気づいたことで、嬉し涙に変わったようだ。
「お……お父様」
私はリディアとエリスの後ろに、年老いた父がいるのを見て、涙が溢れるのを止められなくなった。
私はイーサンとの逢瀬の後、帰る前に馬車小屋に立ち寄った。細工がばれて、コーチマンの2人が馬車を元通りにしていた。
サミュエルに二度目のお金を渡したのは、お茶の時間の直前だった。
——キャロラインさえいなければ。
そう、何度も思った。
シーブルック家はいつだって何でも持っていた。イーサンも、キャロラインも。私だけが何も持っていなかった。
シーブルック家が憎かった。
亡くなった母の金庫がホーソーン商会のタウンハウスにあるのを見た時、これは好機だと思った。
ずっと考えていたことを、実行に移すべきだ。そう思った。
私はホーソーン商会で得た利益で、「永遠の庭」という名の病棟に入ることができた。看護師も医師も一流で、施設も実に贅沢なものだった。
「やぁ、アーニャ」
毎週のようにやって来てくれるのは、あの人だ。
イーサン。
私の最愛の人。
イーサンは毎週のようにやって来て、私に商売やら色んな話をしてくれる。ブライアコームの人の話とか、ブライトンの街の様子、ロンドン社交界の様子。
妹たちが仕切れない話をたくさんしてくれる。
一生、車椅子になった私に、イーサンは愛想をつかさないのだろうか。
「俺は、アーニャに救われたんだ。アーニャのおかげで今俺が生きている」
イーサンはいつもそう言う。
イーサン、違うの。
私は私のせいでこうなったのよ。
だが、私は今、幸せかもしれない。
イーサンが帰り際におでこにキスをしてくれる。それだけで例えようもなく幸せを感じるのだから。
もう、どこへも行けなくてもいい。
イーサンが、ここに来てくれるのなら。




