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私は結婚前から邪魔者だったのね!?お金以外は必要とされなかった妻でしたが、貧乏男爵家の再興が私の運命でした——そして嫁ぎ先は王家になりました  作者: 星林 和花
第4章:深紅の季節——9月3日

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63.深紅の季節——同じ時刻、違う結末

 不幸の連鎖は、どう転ぶか誰にも分からない。


 前回、メイウェアでこの通りを見たのは、少年の格好をして泥だらけのずぶ濡れで朝早くに歩いて来た時だ。今は乗馬服を着て通りに身を潜めていた。


 馬の蹄が石畳を叩く金属音、車輪が軋む音、誰かの叫び声で騒々しい音で充満していた。

 

 その時、扉を押し開けてレッドワイク・タウンハウスから出たきたのは、イーサンだった。馬車の往来が激しいのに、浮き浮きした様子でウロウロしている。

 

 イーサンが何かを見つけた様子で、飛び跳ねるようにして、通りの向こうに手を振った。

 

「あっ!アーニャだ」


 イーサンは夢中だ。


「おーい!アーニャ!」


 なんと、あろうことか、通りを渡ろうとしている。アーニャの方に行こうとしているようだ。


 私はイーサンを止めようとした。


「イーサン、危ないっ」


 グレイも叫んだ。

「イーサン・レッドワイク、戻るんだ!」


 時刻はお昼の2時28分。


 通りの向こうに、アーニャの姿が見えた。アーニャも慌てているようだ。アーニャの顔が恐怖で真っ白になっているように見えた。イーサンに止まれと合図をしている。


 だが、イーサンは手を振ってくれていると思ったのか、ますます、馬車道を渡り抜けようとし始めた。


 馬車が姿を現した。

 私とグレイはさっと通りの右を見た。


 ストロベリーリーフ8冠の紋章を掲げた、赤と金のレッドワイク伯爵家の馬車だ。


 ――なぜ!?

 ――どうしてあの馬車がここに来るの?

 ――ケリーは止めたはずではなかったの?


 イーサンがぬかるみで転ぶのが目に入った。


 ――あぁ、私の時と同じだ。


 私は必死にイーサンの腕を引き戻そうとしてつかんだ。


「イーサン、戻って!」

「戻るんだ!」

 グレイも叫んで一緒になって引っ張ってくれた。


 だが、間に合わない。

 その時、ベルローズ夫人のドレスの裾が迫ってくるのが私の視界に入った。淡いブルーのそのドレスはふわりと広がり、イーサンの上に飛び込むように覆い被さった。


 アーニャだった。


 馬が激しくいななき、石畳に蹄鉄が火花を散らした。


 馬車は軋む音を立てて止まった。

 

 

 泣きながら、私はアーニャとイーサンを引きずり出した。周囲の人々が悲鳴を上げ、御者が蒼白になって馬を抑えている。


 誰かが医者を呼べと叫んでいた。


 ――なぜ、止められなかったの……?


 イーサンは無事だった。

 アーニャが庇ったからだ。


 だが、アーニャはそのまま運ばれた。


 イーサンは泣き崩れた。


 ――アーニャ、どうしてもう一度仕掛けたの?




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