62.イーサンSide——待ちきれない
信じられない。
今日、信じられない幸運がやってきた。
ずっとずっと、俺はアーニャを求めていた。
キャロラインには悪いことをした。
離縁は当然だ。
今では、離縁を通告したトマス・シーブルックには感謝している。
それがなければ、今の幸運はありえないのだから。
アーニャが没落したホーソーン家を建て直すのを見て、俺も心を入れ替えた。ハロウゲイトに弟子入りを志願して、貴族の力を応用しながら、商売をする方法を学んで実践した。
まぁ、少しばかり危ない橋も渡った。
だが、仕方がない。
自力で財政破綻を食い止めるしかなかった。
アーニャに振り向いて欲しかったから、俺は頑張った。
俺が頑張っていることをアーニャに示すには、黙って黙々と家を建てなおすしかないのだから。
だから、ハロウゲイト失脚の資料をアーニャに渡した。王子殿下が王妃様が陥れた証拠を探しているのは噂で知っていた。アーニャとハロウゲイトが手を組んだ時点で、アーニャの目的は証拠を探すことだと分かっていた。
ハロウゲイトを売れば、自分の後ろ盾も消える。
それでも良かった。
アーニャの望みを叶えられるなら、それでよかった。
今朝、うちにアーニャ・ホーソーンがやってきたと聞いて、小躍りするほど俺は喜んだ。
ついに、俺の気持ちが分かってくれたのだろう。
あぁ、3年ぶりだった。
キスも3年ぶり、あんなことも、こんなことも、信じられないほどの愛を持ってアーニャとの逢瀬を楽しんだ。
3年前より、俺の気持ちが深くなったからか、泣きたほどの幸せを感じた。
俺は、ようやく人生を取り戻せた気がした。
これを幸運と言わずして、何を幸運というのだ。
俺とたっぷり楽しんだ後、また午後のお茶の時間にくると言って、アーニャは帰って行った。
あぁ、待ちきれない。
でも、なぜ今になってキャロラインも呼ぶというのかが分からない。
キャロラインは仮にも俺の元妻だ。
昔の幼馴染だからと言っても、色々ありすぎた。
キャロラインだって戸惑っているに違いない。
アーニャが王子殿下と婚約したという噂は聞こえてこなかった。
王子殿下は振られたってことだ。
ああ、待ちきれないぞ。
表まで迎えに行こう。
もうすぐお昼の2時30分になる。
家令たちにもメイドにも、張り切って準備をするように伝えた。
最愛の人が、3年ぶりに俺の元に帰ってきてくれた。
通りに飛び出して行ってでも出迎えたいぐらいだ。
「あっ!アーニャだ」
ほら、いわんこっちゃない。
こんな馬車の往来の激しい通りで、あんな綺麗で可憐なレディが渡れるわけがない。
馬車で来なかったのか?
「おーい!アーニャ!」
俺は通りに足を踏み出した。




