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私は結婚前から邪魔者だったのね!?お金以外は必要とされなかった妻でしたが、貧乏男爵家の再興が私の運命でした——そして嫁ぎ先は王家になりました  作者: 西野 歌夏
第4章:深紅の季節——9月3日

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58.深紅の季節——私たちは入れ替わっていた

 今日は決戦の日だ。

 本来であれば、私が命を失った日。

 

 百ポンドの契約を勝ち取る奇跡を起こした時は、少年の格好をしていた。


 今日も動きやすい、決戦にふさわしい格好にしなければ。

 

 ボルドーのロングジャケットをクローゼットから取り出し、ベッドの上に広げた。


 白いブラウスにクラバット風リボンをし、乗馬用スカートを履いた。靴は走れるように革ブーツだ。ロンドンの泥はねをモノともせずに、私を守ったのはジャックのブーツだったのだから。


 ブロンドの髪は後ろで低く束ねて、リボンで結んだ。アーニャとしてホーソーン商会の仕事をするので、最近はいつもこのヘアスタイルだ。


 ボルドーのロングジャケットを最後に羽織り、ダークブラウン革のサッチェルを鞄として肩からかけた。そして、机の上に置かれていた革表紙の手帳を鞄に入れた。


 そのまま部屋を飛び出した。


「あら、キャロライン、どうしたのその格好?」

「乗馬に行くのか?」

「お嬢様っ!」


 背中から母と父とネルの言葉が追いかけてきたが、私は階段を飛ぶように駆け降り、大サロンを抜け、玄関ホールを飛び出した。


 執事が慌てて何か言っていたが、私は真っ直ぐに厩舎に向かい、気心の知れた馬番に笑顔を向けて、何気ない手慣れた手つきで馬の手綱を取った。


「お嬢様、お久しぶりです」

「えぇ、久しぶりね。3年ぶりかしら?」


 私は昔からよく知る馬番に聞いた。


「あぁ、ちょうどそのくらいになりますね」


 馬番のその言葉が、頭の中で何かを解きほぐした。

 私の体にいたのはアーニャだ。

 私たちは、入れ替わっていたのだ。

 私はずっと昔の自分がそのまま残っていると思っていた。


 でも、間違いない。

 私の部屋の机の上にあった革表紙の手帳。


 3年前、ヘザーが丘を紫に染めたあの日から、消えていたものだ。


 キャロライン・レッドワイクが私の部屋にやってきて以来、行方不明になっていた手帳だった。


 あの短い時間で、あの引き出しを開け、手帳を持ち出せる人間は、一人しかいない。


 ――本物のアーニャ・ホーソーンしかできない。


 そして今、その手帳は、キャロライン・シーブルックの寝室に置かれてあった。


 私は、その意味を理解した。

 この3年間。

 私たちは——。


 私がアーニャの体の中にいた時、アーニャが私の体の中にいた。


 私たちは、3年間入れ替わっていたのだ。

 

 

 エドワードに会いたい。

 今すぐに。

 何がなんでも会いにいかなければ。


 ――今日のあの時間が来る前に。


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