57.深紅の季節——キャロライン・シーブルック、戻る
1768年9月2日がついにやってきた。
私は明日の午後の2時30分にはこの世から消えていたはずだ。ロンドンのホーソーン・タウンハウスの寝室で、私は神に祈った。
神さま。
この奇跡の機会を与えてくださり、本当にありがとうございました。
私は今まで自分のことしか考えていなかったのです。
それが、生まれ変わったかのように考えが変わりました。今までまるで見えなかったことが見えるようになったのです。死に戻る前は、私が見ている世界は、都合よく私中心の世界でした。
ホーソーン・マナーで、他人を幸せにする喜びを学びました。妹たち、男爵、ホロウェイ夫人、ブリジット、ジャック、ミラーさんを初め村の多くの小作人の方々、私は皆を幸せにして初めて、自分がより幸せになれる、この上ない喜びがこの世にあることを学びました。
この奇跡を与えてくれたことに感謝したいのです。
私は、幸せでした。
ホーソーン・マナーで過ごした日々は、確かに私に幸せをもたらしました。
妹たちが笑うこと。
村人たちが冬を越せること。
誰かの食卓に灯りが灯ること。
そんなことを、私は初めて知りました。
私はとてつもない幸運をあなたに授けられました。
私のちっぽけな考えでは想像もつかなかった世界が広がり、多くの人々が一緒に生きていくという幸せに気づけたこと、周りの人みんなを幸せにする喜びがこれほど大きいことを学びました。
ありがとう。
本当にありがとう。
両手を胸の前で組み、感謝の言葉をベッドの中で唱えると、私は深い眠りについた。
朝、目が覚めた。
天井はよく知っているものだ。
私の生家のロンドンタウンハウスだ。
私は飛び起きて、見慣れたドレッサーの鏡で自分の顔を見た。
――キャロライン・シーブルック!
――戻っているわ!
涙が溢れた。私は部屋を飛び出した。寝巻きのままで。
「あら、お嬢様、どうなさったのです?」
懐かしいネルの顔を見て、私は飛びついた。インディゴ染めの深いネイビーのドレスを着て、純白リネンのエプロンを付け、キャップには白いレースと小さな濃紺リボンが付いていた。足元は黒レザーの革靴だ。いつもの温かさの溢れるいつもの笑みを浮かべて、ネルは私を抱きしめてくれた。
「お嬢様ったら。まるで昔に戻ったようですよ」
「あら、キャロライン、どうしたの?」
「どうした?」
懐かしい父と母だった。
泣いてしまうからと、ロンドンでも、ブライトンでも、陰でしかいつも見ることができなかった2人が、私をキャロラインと呼んでくれる。
目の前にいる2人を見て、私は肩を震わせて泣いた。
嗚咽が止まらず、何も喋れなくなった。
ただ、ただ、泣く私を、父と母は優しく抱きしめて、子供の頃にそうしてくれていたように、背中をトントンと叩いてくれた。
「子供の頃のキャロラインが戻ってきたみたいだな」
「あなた、本当に……」
父も母も、なぜかネルまでもらい泣きをしていた。
――エドワードに知らせなきゃ!
「ごめんなさいっ!私は今日はやらなければならないことがあったのだわ。お父様、お母様、ネル、みんなあとでね。あとで、またちゃんとお話ししましょうね」
私は名残惜しかったが、必ずまた会えるようにすると心に誓い、自分の部屋に戻った。




