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私は結婚前から邪魔者だったのね!?お金以外は必要とされなかった妻でしたが、貧乏男爵家の再興が私の運命でした——そして嫁ぎ先は王家になりました  作者: 西野 歌夏
第3章:ヘザーの季節——私のタフタドレスではない

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55.ヘザーの季節——キャロラインに戻ったら、結婚しよう

 月光の明かりが美しかった。


「母がハロウゲイトに陥れられたんだ。だから、君がハロウゲイトの目に止まるのは、私としては耐えられないんだ」


 王子殿下が話し始めた。

「あのメイウェアの薬屋は、幽閉されている母の薬を私が毎月買う店だった」


 ――王妃様は、確か事件に巻き込まれて責任を取らされたのよね。


「偶然だが、君がホーソーン男爵の薬をロンドンに買いに行くと聞いた時、あそこが頭にあった」 


 ――あぁ、だからあそこで待っていてくれたんだわ……。


「でも、あの時から私の心は決まっていた。もう、私とキャロラインの結婚を阻むものはなくなった。レッドワイクとシーブルックは離縁したのだから」


 月明かりの中で、繋いでいた手をそっと王子殿下は離した。ゆっくりと片膝をついた。胸のポケットの中から小さなベルベッドの箱を取り出した。


 あまりに自然な動きだった。私は呆然と王子殿下を見ていた。


「君が元の姿に戻ったら、結婚しよう」


 ベルベッドの箱の中で、月光を受けたダイヤが静かに光った。その指輪を王子殿下は私に捧げた。


 胸の奥から何かが溢れ出す。


「君が彼を見ていることを知っていた。だから、私は何も言えなかった。でも、もう君を誰にも渡したくない」


 少し彼の声は震えていた。

 大きく息を吐き出し、私の顔を笑顔で見つめた。


 薄いブルーのよく知っている瞳が私をとらえて離さない。


 あぁ、私はいつからこの人のそばを離れたくないと思っていたのだろう。


 この人のいない世界を、もう想像したくなかった。

 ただ、ずっとそばにいたかった。

 彼のそばにいると、心が温かくて、このまま時間が止まればいいと思った。


「キャロラインに戻ったら、結婚してくれる?」


 もう一度、王子殿下が言ってくれた。

 

 月もダイヤも涙で滲んだ。私は何度もうなずいた。


「えぇ、キャロラインに戻ったら、結婚します」


 泣きながら返事をした。


 王子殿下は、私の指にそっと煌めくダイヤの指輪をはめて、おでこに小さなキスをした。


 月光の中で、指輪だけが静かに光っていた。



 体は違う。


 でも、心の温もりは本物だ。

 私たちは泣きながら手を繋いで、月を見上げた。


 いつ戻れるのかは、分からない。

 それでも、私たちは必ず戻れると信じていた。



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