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私は結婚前から邪魔者だったのね!?お金以外は必要とされなかった妻でしたが、貧乏男爵家の再興が私の運命でした——そして嫁ぎ先は王家になりました  作者: 西野 歌夏
第3章:ヘザーの季節——私のタフタドレスではない

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54.ヘザーの季節——グレイ、あなたは王子殿下なの?

「キャロライン!」


 舞踏会場に戻ると、真っ青な顔をしたグレイが駆け寄ってきた。


「どこにいた?」

「ハロウゲイトのところよ」

「なんだって?何をされた?」


「何ももされていないわ」


「ここを出よう」


「まだ、積荷分の商売が少し残っているわ」

「いい、今日はここでやめよう」


「いいって……これは稼業がかかっているのよ」


 これほど取り乱したようなグレイを見るのは初めてだった。


「キャロライン、頼む……今日はやめて欲しい」


「まあ、しけで積荷が遅れるからいいわ。今回は状態を見てから売りたいから」

「ありがとう」


 グレイが私の手を繋いだ。そのまま私の手を引いて、人気のない回廊へ進んだ。グレイは迷わずどんどん歩いていく。まるで勝手知ったる場所であるかのように。


 いくつかの扉を抜けて回廊を歩くと、途中で王家の従者に遭遇したが、皆、さっと道を開けてくれた。


 ――なぜ?

「グレイ?どうしたの?」


 私はグレイに囁いたが、グレイはいいからと囁き返すだけで、何も教えてくれない。


 舞踏会の音が嘘のように消えた。別世界に迷い込んだようだった。


 私のサテンのフラットシューズは、音もなく沈む絨毯の上を進んだ。従者たちが、誰一人として彼を止めなかった。


「ここから先は招かれた者しか入れない」


 グレイはそう言って、ようやく私の手を離した。


 彼は、ゆっくりと手袋を外した。


 声だけが同じだった。

「キャロライン」



 そこに丁寧にかけられていた淡い銀灰のコートをグレイが羽織った。赤茶色のかつらをゆっくりと外し、メガネを外した。


 ブロンドのふわりとした髪の束が落ち、薄いブルーの瞳が私を見つめていた。


「王子殿下……?」


 私はあまりの衝撃に、後ずさった。


 王子殿下は私の近くまできて、極小パールをつけた私の耳元に囁いた。


「キャロライン、息を吸うんだ」


 私の体を電流のように何かが流れた。


「グレイ……あなたは王子殿下なの?」


 グレイは私の手を取り、そのまま中庭に私を連れ出した。月光が美しい夜だった。星も煌めく夜空の下で、グレイは私に囁いた。

「目を瞑ってごらん」


 私は目を瞑った。


「踊っていただけますか?」


 低い低い声がした。だが、私の手は一度も離されなかった。


 ゆっくりと目を開けた私の目の前には、グレイにそっくりな瞳と口元のブロンドの男性がいた。衣装から何から何まで王子殿下に見えた。


「いつでも待っている。私の運命の相手はキャロライン、君だ」


 それはグレイだった。


 だから、だから、ハロウゲイトはあれほど王子殿下との関係を聞いたのだ。



「王子殿下が私のためにロンドンまで来て、一晩中探してくれていたの……?」


 ――泣きながら?

 

 ――あの朝、だからメイウェアのゴールデン・モータールの周りに王の騎兵がたくさんいたのね?


 今までの色んなことが頭をよぎり、私はあまりの事に胸が震えた。


「……ホーソーン・マナーで奮闘する私のそばにいてくれたグレイは、王子殿下なのね?」


「そうだ、キャロライン。権力や名誉や財力がどれほどあっても、何を私が差し出しても、君を元の姿に戻してあげられない。だから、私はずっと君のそばにいようと決めた」


「なぜ?」

「なぜって……ずっと好きだったから。今も好きだから」


 私の胸は温かいもので溢れた。


 私はその手を離したくなかった。


 

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