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私は結婚前から邪魔者だったのね!?お金以外は必要とされなかった妻でしたが、貧乏男爵家の再興が私の運命でした——そして嫁ぎ先は王家になりました  作者: 西野 歌夏
第3章:ヘザーの季節——私のタフタドレスではない

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49.イーサンSide——完全に道を間違えた

 最愛のアーニャの近くには、王子殿下がいた。

 本気でいらした。


 その本気っぷりが明らかになったのは、あの没落男爵家に王子殿下主催舞踏会の招待状が届いたという話を聞いた時だ。


 俺のアーニャが——奪われる。

 俺のアーニャが——奪われるなんて、あっていいはずがない。

 


 今朝、ブライトンの街に出かけた家令が言うには、昨晩の舞踏会で王子殿下が唯一踊った相手がアーニャだというではないか?ブライトン中の噂になっているらしい。


 それはそれは美しく、2人の息はぴったりだったと。


 なんでだよ……。

 俺のアーニャだったんだよ……。

 あぁ、本気でいらっしゃるに違いない。

 これは、本気でアーニャと王子殿下の婚約が発表されるに違いない。


 もう、生きていたくない。

 財政破綻の重圧から逃れたい。

 俺は最悪だったかもしれない。


 キャロラインは最近俺の世話をあれこれと焼いてくれる。

 まるで、アーニャが姿を変えてそばにいるような気分にさせられる。裁縫だって料理だって得意だとは、これまで知らなかった。

 

 だが、俺の心を奪ったのは、アーニャなんだよ……。


 キャロラインは、よくできた妻だ。

 だが——それは違う。

 

 俺が欲しかったのは、そんなものじゃない。


 しかし、どういうことだろう。

 ブライアコームの村が非常に活気付いていると、屋敷中の者が不思議がっていた。中心はホーソーン・マナーだというが、俺がそもそも結婚できなかったのは、レッドワイク家が財政破綻している中で、没落済みのホーソーン家の娘とは結婚できないからだった。


 なのにどうした?

 俺がシーブルックのキャロラインと結婚した途端、ホーソーン男爵家が本気で復興に力を入れ出したと囁かれる始末……。


「お取り込み中のところ、申し訳ないですが……」


 髪の毛をかきむしって考え込んでいる俺のところに、家令が手紙を持ってきた。

 

 えぇっ!

 シーブルック家からだと?


 厚手の高級ヴェラム紙には、濃淡が美しく滲まないウォードブルーインクで書かれた文字が綴られていた。

 封蝋は上品な葡萄色だ。


 封を開けて手紙を読み始めた俺は、頭から何か重いのものを落とされたような衝撃を受けた。


「資金供与停止!?」


 俺の鋭い叫ぶような声に、家令も持っていたトレイを思わず落としかけた。


「なんですって!?」


「ほら、見てくれ。もう、わけわっかんない……」


 家令の声と、俺の叫び声を聞きつけたキャロラインが走って駆けつけてきた。


「どうしたの?」

「どうもこうもないよ……義父が資金供与を停止すると言ってきたんだ。どういうことだよ……」


 キャロラインはまず俺のために水差しから水を汲み、俺の手にコップを握らせた。


「飲んで落ちついて」


 そして、家令から手紙を受け取ったキャロラインは、実の父からの冷酷な手紙を読み始めて顔色を変えた。


 しばらく誰も喋らなかった。


 沈黙を破ったのは、キャロラインだった。


「ホーソーン・マナーまで行ってきます」

「何で!?」


 ーー俺の気持ちがバレた?

 ーーえ?

 

 やっぱり結婚式翌日の教会礼拝堂での失敗が、原因!?

 

 キャロラインはあの件については、一切何も言わなかった。

 

 ちょっと待って……キャロライン。

 悪かったから、アーニャを責めないで。

 本当に悪かった。

 俺が全部悪かった。

 だから、ホーソーン家に行くのはまずいって……。


「ことの原因は——アーニャと、あなたでしょう」


 耳を疑った。

 はっきりとアーニャと俺が原因だと言った……。

 バレてたか。


 いや、どこまでの関係かは、誰にもバレていないと思うが……今、ホーソーン家に乗り込んだら、バレるんじゃ……。


 俺は深く深く息を吐いた。


 最悪だ。


 もっと最悪なことが起きる。


「いや……そうとも限らないんじゃ……」

「そうでしょう!」


 キャロラインに一括された。


「……はい……」


「アーニャにシーブルック家に一緒に行って釈明してもらえないか頼んでみるわ」


 俺はうなだれた。

 止めたい。

 

 だが、資金供与停止を止める方法が他にあるのか?と言われたら、何も思いつかない。


 能面のように無表情のキャロラインはすぐに屋敷を飛び出して行った。


 少年時代、ブライアコームの村で同じく少女のアーニャとキャロラインと3人で遊んでいた頃のように。走って、森を抜けてホーソーン男爵家に行くのだろう。

 

 俺は、完全に道を間違えた。


 ——だが、まだ、引き返せないだろうか。それでも、アーニャを諦める理由にはならない気が——する。





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