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私は結婚前から邪魔者だったのね!?お金以外は必要とされなかった妻でしたが、貧乏男爵家の再興が私の運命でした——そして嫁ぎ先は王家になりました  作者: 西野 歌夏
第3章:ヘザーの季節——私のタフタドレスではない

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45.ヘザーの季節——王子殿下主催の舞踏会への招待状

 私のタフタドレスではない。私の使う紙ではない。私の使うハンカチではない。


 初めてホーソーンの娘になった日の事を覚えている。だが、私のシーブルック・ハウスで培った世界はヘザーの季節に復活の兆しを見せていた。

 

 倉庫を貸すだけではなく、いよいよ密輸品の卸しに業務を拡大したのだ。


 王子殿下主催の舞踏会への招待状が届いたのは、ちょうど紫や淡桃のヘザーが丘を埋め尽くし始めた頃だった。ブライトン社交界への切符だ。


 サセックスのヒースランドに紫や淡桃のヘザーが咲き、野薔薇が顔をひそめ、絵画のような美しい景色が広がっていた。


 黄色のハリエニシダが風に揺れ、シダは赤褐色に変わり、村の子供たちはブラックベリーの実を集めて食べていた。野薔薇の実であるローズヒップや黒紫の実のエルダーベリーも収穫されている。


 紫や白のミカエルマス・デイジーが足元で揺れ、ノコギリソウや青紫色のスカビオサ、白くレースのように繊細なワイルドキャロットがホーソーン・マナーの庭を彩っていた。


 遅咲きの秋バラも美しかった。

 

 ロンドンのセカンド社交シーズンの開幕は、季節社交都市であるブライトンで始まる。海水療養も兼ねて、華やかな社交界の人々がブライトンに押し寄せるのが夏から秋。


 野薔薇の季節から回復の兆しを見せていたホーソーン家にとって、新たなる舞台に躍り出る絶好の機会が訪れたのだ。

 

 貴族であるアーニャ・ホーソンに王子殿下主催の舞踏会への招待状が届いたその日、ホーソーン・マナーは大騒ぎとなった。


 格式ある上質の紙を久しぶりに見た。封蝋に王家の紋章が押してあり、リディアとエリスは招待状を手に飛び跳ねた。


「フランス製品のレース・香水、ブランデー、絹を喜んで大量に購入してくれるお金のある上客を見つける機会だと思うわ」


 私は皆に作戦を相談した。


「あぁ、なんと……奥様が生きていらしたら……」


 ホロウェイ夫人は感動なのか、武者ぶるいなのかよくわからないほどの感激の表情を見せ、ブリジットもリディアもエリスも大はしゃぎだった。


「販売網拡張が狙いだから、みんなそんなに……」


 だが、他に感涙の涙と使命感を露わにする人物がもう一人いた。ベルローズ夫人だ。


 ベルローズ夫人に王子殿下主催の舞踏会を見せると、卒倒する勢いだった。店の職人たちも黄色い悲鳴をあげて、大興奮する騒ぎとなった。


 つるりとした高級ヴェラム紙で、アイボリーがかかっていて、光に透かすと水印が見えるその紙は、天井人へのお近づきを意味していた。


「私は長年の夢だったのです!あなたを完璧なレディに仕立て上げますわ!」


 ベルローズ夫人と職人たちは、いつも仕立てているドレスとは2階級も3階級も上のドレスの仕立てを要求されることになる。


 だが、そこは、私の世界だった。

 

 私は的確にデザインを指定し、布を指定し、職人泣かせの刺繍柄と刺繍系を指定した。


「裏地はリネンで構いません。表だけ整えてください」


 人生で初めてツケ払いと言うのを経験した。


 サテンの靴と手袋とストッキング、ショール、扇子、ダンスカード、ハンカチ、髪飾りは金貨で支払った。しかし、ドレスは10ポンドの手付金を支払い、残りはツケにしてもらった。ドレスは到底払える額ではなかったのだ。


「もちろん、あなた、これはツケで構わないわ。私の最高傑作が王子殿下主催の舞踏会でワルツを舞うだなんて……」


 ベルローズ夫人は即断してくれ、瞳を煌めかせて私が試着した姿に惚れ惚れした。


 淡い象牙色のシルクのドレス。


 光沢はあるが、一流仕立て屋が作るような重たく輝くそれとは違う。柔らかく、光を受けて静かに揺れる、控えめな艶だ。胸元も広く開きすぎない程度に整えられ、細いリボンとレースが縁取り、袖は短く、肩をやや露出させる形だ。品を失うほどではなく、節度ある仕立てだ。


 縫い目は恐ろしいほど丁寧で、布の落ち方だけで美しさを作っていた。裏地はシルクではなくリネンだが、動いた時の軽やかさは計算され尽くしたものだった。


 何もかもが、アーニャ・ホーソンがそれまで持っていたものとは違った。



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