23.アーニャSide——私の顔をした見知らぬ女
いつものように、親友へ近づくように私は歩み寄った。私が仕立て直したドレスを着て、私の顔をしていた彼女は、白い礼拝帽の下で微笑んでいた。
見慣れた私の顔だ。
「昨日は結婚式に来てくれて、ありがとう」
「……ええ。とても綺麗だったわ」
彼女はそう言って、右手の手袋の指先を整えた。
キャロラインが緊張した時にだけする癖だ。
私の胸がわずかに騒いだ。
ーーあなたはキャロラインなの?
ーーそれとも、本当に私自身なの?
ーー揺さぶりをかけてみないと、全然わからない……。
「イーサンが言っていたの。あなた、昨日グレイという方と一緒だったって」
彼女の瞳が、ほんの一瞬だけ揺れた気がした。
「ええ。ブライトンの港で働く方らしいわ。お父様に、何か利益になる話を持ってきてくださったの」
穏やかで、当たり障りのない返事だった。
ーーやはり、あなたなの?どっち?
私は迷った。
ーーキャロラインの顔をして、キャロラインのドレスを着ている私が、まさか中身はアーニャだなんて、誰も思わないわ。アーニャ・ホーソーンが同時に2人いるということかしら。
「あのね、アーニャ……」
背後から足音がした。
「アーニャ!」
イーサンだった。彼が私にいつも向ける熱烈な愛情を側から見ると、少し複雑だ。昨晩は初夜だった。それなのに、イーサンはキャロラインである私に指一本触れなかった。アーニャ一筋であることを改めて思い知らされたのも、とても複雑な気持ちだ。
ーーキャロラインさえ、この世にいなければ。
と思った瞬間、自分でゾッとした。すぐにその考えを打ち消した。
私は微笑みだけ残して身を引いた。イーサンがすぐ後ろまで来ていた。
「またあとでね、アーニャ」
目の前の蜂蜜色の髪とアーモンド形の瞳をした女性は、何気ない様子で微笑んだ。
私の顔で微笑む彼女が、誰よりも見知らぬ女に見えた。
この後、イーサンSide、グレイSideと続きます。




