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私は結婚前から邪魔者だったのね!?お金以外は必要とされなかった妻でしたが、貧乏男爵家の再興が私の運命でした——そして嫁ぎ先は王家になりました  作者: 西野 歌夏
第1章:深紅の季節——亡霊の春

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10.ハニーサックルの誘惑と執着(2)

 夫であるイーサンは、結婚してから一度も私に触れなかった。その理由が今はっきりと分かった。結婚前からアーニャと愛し合っていたからだ。

 



 アーニャは最後は泣いていた。

 事が終わった後、アーニャはイーサンにしがみついて泣いた。


 私もロッジの外で耳をふさぎ、あとからあとから泣けてきて、どうしようもなかった。

 

 涙が足元のブルーベール花の上に落ちた。


 私の結婚はやめるべきだ……。


 自分がイーサンを愛していたという事実と、アーニャとイーサンに裏切られていたという事実でどうにかなってしまいそうだった。



 私は自分がイーサンとの結婚という、とんでもない過ちを犯した事に気づいて青ざめた。

 こんな男と結婚した自分に大きく失望したのだ。


 私は何も見えていなかったわ……。


 私は涙を拭き、イーサンと結婚しないという新しい考えに身を震わせ、窓からそっとのぞいた。


 イーサンの上着もウエストコートも椅子の上に脱ぎ捨てられ、ネッククロスが無造作に机の上に置かれていた。


 イーサンの汗で濡れた胸元……。アーニャを愛おしそうに撫でるイーサンの瞳は愛に溢れていた。彼はリネンのシャツを脱ぎ捨てた後は獣のようだった。


 だが、アーニャを愛していることは痛いほど伝わった。彼の絹のストッキングのガーターが床に落ちているのが目に入った。


 私はここからすぐに離れなければと思った。アーニャの淡い桃色のペティコートが柔らかく重なってその隣に落ちている。


 2人はきっとここで、今のように逢瀬を重ねて一線を超えたに違いない。だから、私が嫉妬と怒りで我を忘れても結局無駄だ。


 私が馬車に轢かれる直前に知った2人の密会は、3年も前から密かに続けられていたのだから。

 

 アーニャが身を起こして、シフトを急いで身につけ、ステイズを身につける様子が呆然とする私の目に入った。

 

 彼女は小机の上にあった小さな鏡をのぞいて髪を整えている。アーニャがアイロンをかけていた小さなリボンには、結び目の跡があり、それで彼女は髪をハーフアップに整えた。ペティコートとモスリンのドレスを身につけた。ドレスの胸元には、アーニャの施した小花の刺繍があった。


 私はこのドレスを身につけた清楚で可憐なアーニャの姿を覚えている。このドレスを身につけたアーニャが、隠れて狩猟用ロッジで夫のイーサンとこんなことをしていたなんて、当時は思いもよらなかった。

 

 鏡の向こうから、輝かしい美貌のアーニャが映っていた。一線を超えた後のアーニャは、変わらずにますます美しく見えた。


 私は惨めで泣きたい気持ちだった。


 イーサンがアーニャのそばにやってきて、髪をふわりと撫で、アーニャを抱きしめて口づけをした。


 

「大丈夫?」


 イーサンがアーニャに囁いていた。


 拒絶感で私はみじろぎをして、狩猟用ロッジから数歩後退った。


 私は自分の事も、この夫の事も嫌いだ。


 何より、今は自分自身が嫌いだった。

 

 騙された自分が。


 イーサンは心配そうにアーニャを見つめていたのだ。彼の瞳は煌めき、ブロンドの髪は汗で濡れていた。イーサンのアーニャを見つめる眼差しは、私には向けられなかった眼差しだった。


 囁くように告げるアーニャの声が聞こえた。

  

「じゃあ、誰か来る前に私はここを離れるわ。」


 窓から5月の光とさわやかな風がふわりと舞い込んでいたロッジは、秘密の逢瀬の場所だった。


 私は一刻も早くこの場を去らなければならないと思った。


 ーーお父様とお母様に、結婚を白紙に戻すと伝えなければ。

 



 3年後に死んでしまう自分の真の原因は、おそらく結婚に間違いない。



 5月の森を走るように抜けて、レッドワイク伯爵家の方に戻った。あのベンチまで息を切らして戻った。


 季節が変わる前に、私は6月の結婚式を中止にするのよ!

 

 レッドワイク伯爵家の裏門の方に走るように進むと、心配げなネルの顔が見えて、私は心底ほっとした。


「お嬢様っ!まぁ、しばらくお姿が見えなくなって、心配しましたわ。イーサン様もお留守のようですし、今日は帰りましょう。ブライトンの街一番の仕立て屋にドレスの仮縫いに行くご予定でしたから、もうここを出た方がいいですわ」


 ネルはふくよかな顔に笑みを浮かべて、優しい瞳をキラキラとさせて、ドレスの仮縫いというフレーズにときめく乙女の表情を見せた。


 あぁ、ネル……。

 私たちは騙されているのよ……。


 この結婚は過ちなの。今すぐに中止にしなければならないの。


 愛した男がとんでもない男だと分かった。私の財産目当てだけではなく、親友と愛し合っていたなんて……。



 温かさの溢れるいつもの笑みを浮かべて、ネルは私に馬車に戻るように促した。


「お嬢様、今日はきっと一番お綺麗ですわ」


 私は涙が溢れるのを堪えて、ただ頷くと、シーブルック家の馬車に乗った。資産家の娘であることは、こういう財産目当ての結婚に耐えなければならないということだろうか。


 私の愛する男性は、私の敵だった。



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