第4話:【献身】理想の献立と、お庭での共同作業
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第3話のダンスレッスンで距離が縮まった二人。第4話では、より「日常」に近いシーンをお届けします。
執事としてのプロフェッショナルなこだわりと、収納魔法の便利な使い方。
そして、お姫様からのちょっと強引で嬉しいお誘い。
二人ののんびりした午後を、ごゆっくりお楽しみください!
専属執事としての仕事は、お姫様の身の回りのお世話だけではない。
午前中のダンスレッスンを終えた俺は、その足で厨房へと向かった。
「……というわけで料理長。本日の昼食ですが、リリアーヌ様は午前中に少し体力を消耗されました。消化に良く、かつ彼女の好きな蜂蜜をアクセントに使ったメニューを提案したいのですが」
「ほう、流石はアレン家の次男坊だ。栄養バランスまで完璧だな。よし、その献立で行こう!」
厨房の主である頑固な料理長も、俺の提案には二つ返事で頷いてくれる。
修行中の栄養学の知識と、六年間手紙でリサーチし続けたリリアーヌ様の好物リスト。
これらを組み合わせた、推しのための最強メニューだ。
実際のランチタイム。俺は彼女の斜め後ろに控え、給仕を行う。
執事とお姫様が一緒に食卓を囲むことはない。
彼女が焦らず、かつ優雅に食事を進める姿を見守るのが俺の役目だ。
「……ふふ、とっても美味しいわ、アル。貴方が選んでくれたんでしょう?」
「恐縮です。午後のお仕事に障らぬよう、軽めながら栄養のあるものを選ばせていただきました」
「ありがとう。……貴方が見ていてくれると、いつもの食事がもっと美味しく感じるわ」
満足そうに完食し、はにかむリリアーヌ様。その笑顔だけで、俺の午前中の疲れは完全に吹き飛んだ。
午後の予定は、庭園の手入れだった。
リリアーヌ様には、趣味で育てている小さなバラ園がある。
「アル、そこを持っていてくれるかしら。私が剪定するから」
「かしこまりました。……お召し物が汚れないよう、ご注意ください」
二人で並んで土をいじり、枝を整える。
俺にとっては執事の業務の一環だが、リリアーヌ様にとっては違う意味を持っていたらしい。
(……アルと並んで、同じ作業。これって、なんだか……その、共同作業みたい……!)
隣で作業するリリアーヌ様の顔が、みるみるうちに赤くなっていく。
俺はあえて気づかないフリをして、テキパキと作業を進める。
下手に突っ込んで、彼女がハサミで指を切ったりしたら大変だからな。
一通りの作業を終え、リリアーヌ様は庭の片隅にある石造りの椅子に腰掛けた。
「ふぅ……。少し、疲れちゃったわね」
「お疲れ様でございます。……ちょうど、良いものがございますよ」
俺はスッと右手をかざし、『収納魔法』を発動させた。
何もない空間から、アンティーク調のティーテーブル、純白のクロス、そして最高級の茶葉が入ったポットと、色鮮やかなマカロンが次々と現れる。
「えっ……!? 魔法で、こんなにたくさん……?」
「庭園での休憩を予想し、あらかじめ用意しておきました。少し冷えたハーブティーです。リフレッシュにどうぞ」
「……凄いわ、アル。魔法まで完璧なのね」
驚き、そして「自分のために準備してくれていた」という事実に、彼女の瞳が潤む。
俺がカップに紅茶を注ぐと、リリアーヌ様は椅子を少し横にずらして、自分の隣をポンポンと叩いた。
「アル。……一人で食べるのは寂しいわ。貴方も、隣で一緒に食べて?」
「……不敬にあたります、リリアーヌ様」
「命令、と言ったら?」
困ったような、でも悪戯っぽく微笑むお姫様。
こうなると、俺に拒否権はない。
「……かしこまりました。では、お言葉に甘えて」
俺は一歩下がった場所ではなく、彼女の許可した距離で、一緒にお茶とお菓子を楽しんだ。
美味しそうにマカロンを頬張り、「次はこれが食べたいわ」と楽しげに話すリリアーヌ様。
(……ああ。俺が転生したのは、この笑顔を一番近くで守るためだったんだな)
穏やかな午後の陽光の中、俺は前世では決して味わえなかった「推しとのティータイム」という究極の多幸感に、深く浸っていた。
第4話、いかがでしたでしょうか。
共同作業と赤面するリリアーヌ様、初々しくて可愛いですね(笑)。
アルフレッドも、執事の仮面を被りつつ、収納魔法でちゃっかり「推しへのサプライズ」を仕込むあたり、手慣れたものです。
不敬だと分かりつつも、お姫様のお願い(命令)に負けて隣に座るアル。
この「少しずつルールを破っていく二人」の空気感を楽しんでいただけていれば幸いです!
「収納魔法、便利すぎて欲しい!」と思った方は、ぜひ評価やブックマークをよろしくお願いします!




