第3話:【日常】寝起きの攻防と、密着のダンスレッスン
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第2話での「頭なでなで」から一夜明け、アルフレッドはさらなる試練——「お姫様のモーニングルーティン」に挑みます。
朝の無防備なリリアーヌ様と、密着度の高いダンスレッスン。
アルの理性は、果たして今回も耐えきれるのでしょうか?
専属執事としての二日目。俺は朝から最大の試練に直面していた。
それは、お姫様を起こすこと。
マーサさん曰く「朝だけは別人」という忠告を胸に、俺は静かに寝室の扉を開けた。
「リリアーヌ様、おはようございます。お目覚めの時間ですよ」
カーテンの隙間から差し込む朝日。
そこには、普段の凛とした姿からは想像もつかない光景があった。
プラチナブロンドの髪は芸術的なほどに乱れ、リリアーヌ様は抱き枕のようにシーツをぎゅっと巻き込んで、むにゃむにゃと夢の中にいた。
(……尊い。寝癖すらもはや後光が差して見える。だが、起こさねば……!)
俺がベッドの傍らに膝をつき、そっと肩を揺すった、その時だった。
「……んぅ……アル……待って、た……」
リリアーヌ様の細い腕が、俺の首筋に回された。そのまま驚くべき力で引き寄せられ、俺の視界は一気に真っ白なシーツ……もとい、お姫様の香りに包まれた。
(ちょ、まっ……!? 理性が! 俺の理性がホワイトアウトしそうだ!!)
ゼロ距離で感じる彼女の体温と、寝ぼけた甘い声。
前世のオタク知識が「これはラッキースケベという名の聖域だ」と叫ぶが、今の俺は完璧な執事だ。
俺は心の中で般若心経を唱えながら、鉄の意志で彼女の肩を優しく、かつしっかりと支えた。
「リリアーヌ様。……起きてください。朝食の時間が遅れてしまいますよ」
数秒後。ようやく焦点が合った彼女の蒼い瞳が、目の前にある俺の顔を捉えた。
「…………え? ……あ、アル……? ……あぁぁぁあああ!!!」
我に返ったリリアーヌ様は、爆発したかのように顔を真っ赤にして飛び退いた。
「ご、ごめんなさいアル! 今のは違うの、夢の中でアルが遠くに行っちゃいそうで、行かないでって……あぁ、もう! 忘れてぇー!」
「承知いたしました。……ただ、大変可愛らしい寝癖でしたよ」
「もう! 追い打ちかけないでっ!」
頭を抱えてベッドの中で転がる彼女を見て、俺は口元の緩みを必死に抑えた。
優雅な朝食、そして高鳴る鼓動
騒がしい朝を終え、お着替えの補助に入る。
下着の管理こそ彼女自身だが、仕上げのアクセサリーを選んだり、跪いて靴を履かせたりするのは執事の仕事だ。
「……アル、さっきのこと、怒ってない……?」
朝食の席で、リリアーヌ様が不安そうに上目遣いで尋ねてくる。
「怒るなど滅相もございません。むしろ、それほどまでに私を信頼してくださっているのだと、光栄に思っております」
「……信頼、だけじゃないんだけどな……」
彼女が小さな声で何かを呟いたが、俺は聞こえないフリをした。深追いしたら、俺の心臓が爆発するからだ。
午後は、近々開かれる夜会に向けてのダンスレッスンだった。
家庭教師の先生が、リリアーヌ様のステップを見て首を傾げる。
「お姫様、少し肩に力が入りすぎていますわ。……アルフレッド、貴方がお相手をしなさい。執事の嗜みとして、心得ているでしょう?」
「かしこまりました」
俺は一礼し、リリアーヌ様の前に立って手を差し出した。
彼女は震える手で俺の手を取り、ゆっくりと立ち上がる。
「……お手柔らかに、お願いします」
「お任せください。……失礼いたします」
彼女の細い腰に手を添えた瞬間、指先から彼女の緊張が伝わってきた。
音楽が始まり、俺たちはゆっくりとステップを踏み出す。
至近距離で重なる視線。彼女の長い睫毛が揺れ、甘い香りが鼻をくすぐる。
(……やばい。これ、俺が教える側なのに、俺の方が緊張してないか?)
「アル……。心臓の音、すごく速い……」
「……リリアーヌ様こそ。耳まで赤くなっていますよ」
「……貴方のせいよ……ばか」
そんな甘い毒を吐かれ、俺の心臓はさらに加速した。
ダンスという名目のおかげで、公然と「推し」に触れられる特権。
だが、その代償として俺の理性が削られていくのを感じる。
レッスンが終わる頃、先生が「素晴らしいコンビネーションですわ!」と拍手を送ったが、彼女はなかなか手を離さなかった。
リリアーヌ様は、俺の手をそっと握りしめたまま、潤んだ瞳でこちらを見上げてきた。
「アル……。……また、練習に付き合ってくれる?」
その囁きに、俺は深く頭を下げることしかできなかった。
今夜も、長い夜になりそうだ。
第3話、いかがでしたでしょうか。
朝のベッドでのハプニング……。リリアーヌ様の「ガンガン行きます」宣言が、無自覚な形でも発動していましたね(笑)。
そしてダンスレッスン。執事とお姫様という関係だからこそ許される至近距離。
アルは「主として守る」と自分に言い聞かせていますが、リリアーヌ様の「ばか」という一言で、すでに陥落寸前な気がします。
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