第2話:【初仕事】完璧な引き継ぎと、夜の「頭なでなで」命令
第1話での衝撃の再会から一夜明け、ついにアルフレッドの「専属執事」としての初仕事が始まります。
執事ならではの完璧な引き継ぎ……のはずが、アルの脳内は大忙し。
そして、リリアーヌ様がこっそり教えてくれた「お母様との約束」とは?
今夜も糖度マシマシでお送りします!
リリアーヌ様にお傍にいると誓ったあと、俺の仕事は、長年リリアーヌ様に仕えてきたベテランメイド、マーサさんからの引き継ぎから始まった。
「いい、アルフレッド。お姫様は好き嫌いこそありませんが、非常に『繊細』です。お食事やお召し物は、その日の気分を察して提案しなさい」
「承知いたしました」
手帳にさらさらと筆を走らせる。
起きる時間、食事の好み、一日のルーティン……。興味深かったのは、お召し物のルールだ。
公務の日は豪華なドレス。自室では動きやすいラフな格好。そして、家庭教師との勉強の時間は……なぜか、前世の「女子高生の制服」に酷似したデザインの服を着るらしい。
(……待て、誰だその服をデザインした奴は。天才か? 勉強中に推しの制服姿が拝めるなんて、どんなご褒美だよ……!)
内心でガッツポーズを決めていると、マーサさんが真剣な顔で付け加えた。
「あと、下着の類はお姫様がご自身で管理されています。貴方は気にしなくて結構よ」
「……左様でございますか。承知いたしました(よしっっっ!!!)」
平静を装って答えたが、心の中では激しく安堵していた。流石にそこまで担当させられたら、俺の理性が秒速で蒸発してしまう。
引き継ぎが終わったのは午後17時。
執事の仕事に明確な「定時」はない。夕食の給仕を完璧にこなし、お風呂の時間は扉の外で待機する。
(ふぅ……初日から緊張の連続だ。さて、お姫様が寝室に入られたし、俺も外の廊下で待機するか……)
そう思った矢先、寝室の扉がわずかに開き、小さな声で呼ばれた。
「……アル、入って」
「失礼いたします、リリアーヌ様。……どうされましたか? お疲れで寝付けませんか?」
冷静な執事の顔で入室したが、俺の心臓はすでに限界だ。
薄暗い寝室。リリアーヌ様は、ふかふかのソファに腰掛けると、俺の手をぎゅっと握って隣に座らせた。
「あのね、アル。本当は今日、もっとお話ししたかったの。……もっと、貴方に触れたかった」
「リリアーヌ様……」
「でも、お母様(王妃)から言われたの。アルは仕事で来ているんだから、あまり困らせちゃダメよって。だから我慢してたんだけど……」
潤んだ瞳で見つめられ、俺の鉄面皮が崩れそうになる。
「アルは……私とお話ししたり、その、スキンシップをしたりしたら……困る?」
(困るわけない! )
だが、俺はプロの執事だ。深呼吸をして、努めて穏やかに答える。
「……あまりに過度なものは確かに困ってしまうかもしれませんが、主との心の交流も執事の務め。多少であれば問題ありませんよ」
その瞬間、リリアーヌ様の顔がパァッと明るくなった。
「本当!? ……よかった。わかりました、アル。明日からガンガン行きますね!」
「…………はい?」
ガンガン? 多少って言ったよね俺?
話し聞いてたかな、と一抹の不安がよぎる。
しかし、彼女のあまりに嬉しそうな笑顔に、それ以上の追求はできなかった。
「では、そろそろ休みますね。……最後に一つ、お願いがあります」
「何なりと」
「……私の頭を、なでてください。命令です」
「……っ」
これだ。これだよ。
主従関係という盾を使い、逃げ道を塞いでの直球。
俺は内心で「参ったな」と苦笑しながら、手袋を脱いで慎重に彼女の髪に手を置いた。
「失礼いたします……」
リリアーヌ様のプラチナブロンドは、シルクのように柔らかく、そして温かかった。
なでられる彼女は、顔を林檎のように真っ赤にしながら、今にも蕩けそうな表情で目を細めている。
(……やばい。これ、なでている俺の方が癒やされてる。っていうか、可愛すぎて心臓がもたない……!)
結局、三分間ほどひたすら頭をなで続け、ようやく解放された。
「……おやすみなさい、アル。また明日ね」
「おやすみなさいませ、リリアーヌ様。……良い夢を」
部屋を出て扉を閉めた瞬間、俺はその場に崩れ落ちそうになった。
壁に背を預け、熱くなった自分の顔を抑える。
……もしかして、この「なでなで」の儀式、明日からも毎日続くのか?
俺の理性は、一ヶ月も持たないかもしれない。
第2話をお読みいただき、ありがとうございました!
「下着の管理は自分でする」と聞いて心底安心するアルに、思わず笑ってしまいました。プロの執事とはいえ、中身は健全(?)な男子高校生ですからね。
そして……ラストの「頭なでなで」命令!
リリアーヌ様の「明日からガンガン行きます」宣言、これはもう宣戦布告ならぬ、求愛布告ではないでしょうか。
アルの理性がいつまで持つのか、筆者もハラハラ(ニヤニヤ)しながら見守っております。
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