第5話:【波乱】お風呂の誘惑と、王妃様の「添い寝」許可
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第4話での穏やかなティータイムから一転。第5話では、王宮の「お風呂事情」と、王妃様による衝撃的な「業務命令」が下ります。
アルの理性を試すようなリリアーヌ様の無自覚な誘惑……。
そして、まさかの「添い寝」許可!?
今夜も心臓のバクバクが止まらない展開をお楽しみください!
穏やかな午後の陽光が沈みかけ、庭園に長い影が伸びる頃。バラの剪定と手入れは、大きなトラブルもなく無事に終了した。
「ふぅ……。アル、ありがとう。おかげで早く終わったわ」
「そう言っていただけると、執事冥利に尽きます。土汚れがついてしまいましたね、リリアーヌ様。お着替えの前に、お風呂になさいますか?」
「ええ、そうするわ」
城に戻り、リリアーヌ様は自身の部屋に備え付けられた浴室へと向かった。
ここの浴室は、前世の感覚で言うと、洗い場だけで八畳はある。一人が泳げるほどの巨大な浴槽に、最高級の大理石。
(……流石は王族。前世の俺の部屋、この洗い場より狭かったぞ……)
そんなことを考えながら、俺はいつものように脱衣所の外で待機していた。お姫様に万が一のことがあってはならない。扉一枚隔てた向こう側で、俺は全神経を集中させて周囲を警戒する。
——すると、いつもより少し早く、呼び出しのベルが鳴った。
「失礼いたします。リリアーヌ様、いかがなさいましたか?」
「あ、あのね……アル。……服、忘れちゃったの」
扉越しに聞こえる、少し困ったような、でも甘えたような声。
「……承知いたしました。ただいまお持ちします」
クローゼットへ向かい、俺は猛スピードで思考を回転させる。
この後は夕食だ。派手すぎず、かといって部屋着ほど崩れすぎない……。俺は数あるドレスの中から、淡いブルーのミディアムドレスを選び出した。
「リリアーヌ様、こちらでよろしいでしょうか」
扉を少しだけ開け、顔を背けながら服を差し出す。すると、湯気と共にリリアーヌ様の白い腕が伸びてきた。
「ありがとう。……ねえ、アル。アルはいつお風呂に入るの?」
「私は、リリアーヌ様が休まれる準備をすべて終え、業務が終了した後に頂戴いたします」
「えっ、それじゃあ凄く遅くなっちゃうじゃない。……ねえ、だったら今から、入って行ったら?」
「…………はい?」
一瞬、耳を疑った。今、このお姫様は何と言った?
「いえ、滅相もございません! 私は執事、主と同じ時間に入浴するなど不敬の極みです!」
「でも、お風呂は広いし……。……私の使ったお風呂、嫌なの?」
上目遣いで、少し悲しそうにそんなことを言われる。
(そうゆうことを言ってるんじゃないんだよ!!!)
必死に首を振って固辞したが、彼女は納得いかない様子で、頬を膨らませながら着替えを終えて出てきた。
その後の晩御飯。リリアーヌ様は、同席していた王妃様に今日の出来事を話し始めた。
「……というわけで、お母様。アルが全然お風呂に誘っても入ってくれないの」
俺は隣で控えているが、冷や汗が止まらない。
王妃様は優雅にスープを口に運び、少し困ったように微笑んだ。
「リリアーヌ、あまりアルを困らせてはいけませんよ。彼は真面目な執事なのですから」
(王妃様……! さすが、話が分かる……!)
俺が心の中で拝んだ、その直後だった。
「……そうね。お風呂がダメなら、添い寝くらいにしておきなさい」
「……えっ?」
俺の口から、執事らしからぬ素っ頓狂な声が漏れた。
王妃様は「あら、名案でしょ?」と言わんばかりにウィンクをして見せる。
「わかりました、お母様! それならアルも困りませんね!」
(いや、困る!! 困るどころか、俺の命が危ない!!)
「お、王妃様!? 添い寝など、それこそ不敬が過ぎます!」
「あら、アレン家の執事は王族を『盾』として守るのが仕事でしょう? 眠っている間も無防備なお姫様を守る……立派な業務じゃないかしら。……ふふ、頑張ってね、アル」
(楽しんでる!?)
王妃様は母上の親友だけあって、やはりとんでもないことをたまに言う。
逃げ場を失った俺の横で、リリアーヌ様は「今夜はぐっすり眠れそう!」と、これ以上ないほどの幸せな笑顔を浮かべていた。
……シンさん、助けてくれ。
今夜、俺の理性が、そして俺の人生が、最大の正念場を迎えようとしている。
第5話、いかがでしたでしょうか。
王妃様……! 完全に面白がっていますよね(笑)。
「お風呂がダメなら添い寝」という、全く解決になっていないどころか火に油を注ぐような代案。
リリアーヌ様の「わかりました!」という即答が、彼女の純粋さとアルへの巨大な愛を物語っています。
「アルの理性に、幸あれ……」と思った方は、ぜひ評価やブックマークをいただけると嬉しいです!




