第21話
真太は、イデのいる部屋に行ってみた。
かぎは掛かっているが、おもちゃのような代物だった。分かっていたがイデ、元シンは逃げる気はない。真太はイデに何がどうミスなのか、聞いてみるつもりだ。おそらく大した話は無いだろうと思う。鍵がかかったまま、ドアをブイっと開けると、鍵がちぎれてしまった。
「おいおい、ドアを壊すんじゃないよ」
「イデのあほう。どうしてさっきずらからなかったんだよ。話がややこしくなるんだよ」
「俺のミスでアバやイダは死ぬしかなくなったんだよ。あのとき、俺は愚かにも、何度ミスしたと思うか真太。後悔してもミスはもうどうにもならない所まで来てしまった。魔王は計画を変えていたことに気付かないで、のほほんと過ごしてしまっていた。魔王を取り逃がして、それを気付かずに、探しもせず野放しにして、やりたい放題にさせた挙句、ナイラを巻き添えに、アバとイダを死なせ、才能のあった筈の研究者の道を誤らせて死なせ、そんな事はしたくなかったはずなのに、その手を人間の血で染めさせ、罪の意識を持たせた。そうだ、お前のアボパパの事だ。必死で生き永らえたのは、こんな罪をかぶるためじゃなかったはずだ。俺はアボの前に現れる事は、もうできない。無理だ。もうこんな不始末は死で償うしかない。そう思わないか、真太。このしくじりの後始末として、俺は人間の手にかかるべきではないのか」
「おれ、何でシンがそんなに気に病んでいるのか、さっぱり分からないけど」
「そうか、愚かなおまえには分かるまいな。俺の愚かさを説明する気にはなれない」
「俺って、シンの子孫だよな。と言う事は、愚か者の血筋を脈々と受け継いで来たんじゃないのか」
「ううっ、そうだったな。おそらくそれが真実に近い」
「じゃぁ、俺に分かるように言って欲しいな。さっきから何をミスったのか知らないけど、ぶつぶつ言ってさ。」
「前世の事だ。俺が地獄で奴に負けて魂が無くなりそうになっていたら、お前が御神刀を持って来た事があっただろう」
「うん、あった、あった。思い出したぞ」
「俺はお前が持って来た御神刀で、魔王を倒した気になっていただろう」
「倒してなかったって?」
「体だけ置いて、魂は抜けて逃げていた」
「それが分かったって、何時?すごいじゃん」
「褒めるな。俺が分かった訳じゃない。大露羅が指摘したんだ。あの時、俺は取り逃がしたってな。最近、奴の気配がして来たって言った。大露羅は生前、奴に会った事があるって言った。気配を覚えているってな。あいつ死んでから何年たったと思う。まだ覚えていやがるんだ」
「それはまあ、大したお方でしたね」
「言っておくが、あいつが死んだのも、俺の責任さね」
「あー、噂は聞いたことがあるな。でも、お前の所為だとか、文句言われたことは無いだろ。親だもん」
「その件はな、魔王を取り逃がした件は、あの時、本当に手ごたえを感じていたのか、と聞かれた」
「聞くぐらいの事、誰でも聞くだろう。知らない事は」
「あの時、俺はばらばらだった魂を元に戻したばかりで、何だか自分がふわふわしていたから、良く分からなかった」
「ほら、ミスじゃない。具合が悪かったからだろ」
「今、言い訳してしまったな。俺のミスだ。手ごたえを感じないから、抜け殻だと分かるべきだった」
「今、魂がくっついたばかりだったとか、言ったばかりだよね。ふわふわして分からなかったって言ったよね。聞いたからな」
「言い訳だ」
「言い訳じゃない。事実だ。事実だから、逃げたと分からなかったし、探さなかったし、何時も会っていた訳じゃないから気配も知らなかった。それでおしまい。さっさとずらかれよ。鍵開けてやったの見ただろ。外から壊したのぐらい現場の捜査に慣れた警察は、分かるよ」
「俺の仕業だってみんな知っているのに、どうして逃げ延びれる?」
「ナイラが、シークレット事情ってのだって言ったけど」
「わからないことはな、そのままにして置く事っていう事情だ。分かっている事は、処理するべきだ」
「どうして、あいつ等が死体になったか皆、知らないんだ。だからシークレット。本当は刺されても皆眠って居て、目が覚めたらいつも通りとういう筈だった。だけど、同化していたから死んでしまったと言う事を、皆は知らないと言うシークレットだな。違うか?」
「お前、利口じゃないのか、本当は。誰かが馬鹿のふりしろと言ったんだろうな。そうだ、分かった。夕霧殿が教えたはずだ。目立っちゃいけないとか言ってな」
「何だか関係ない事、推理してんな。随分余裕こいてるけど、朝になる前にアマズンに帰ってね。しばらく川に潜って居れば?」
「そうはいかない。責任を取りに行くって大神様にお願いしたんだからな」
「さっき魔王達を始末していたよネ。あれを責任取るっていうんじゃないかな。普通は」
「あれは、前に取り逃がした魔王を始末しただけ。今回の騒動の責任は、極刑になる事だ。大神様も察している筈」
「どうだかなぁ、察していない気がする。確かめに行ってみたら。イデ、割と元気そうだし、大神様に聞きに行く元気は有りそうだな」
「そう言って、逃げて行かせる気だな」
「だけど、その件は確かめた方が良い案件だな。それに、シークレットなのに人間と同じ扱いにして、後で気が付く執行人の寝覚めの悪さ、察した方が良いと思うよ」
そこで、イデは言葉に詰まった。あと一押し、と思う真太。
「そういえば、ナイラ様の所に、ナイラ川のお嬢さんたちが表敬訪問するって聞いたな。いつだったっけ。そうそう、烈もさらわれて結婚したっていう話だよ。ほら、血筋が良いのは人気なんだって。僕はアボパパが毒でひょろ付いた感じだからね。そういうとこ、遺伝して居るかも。その点、イダさんは恰幅が良くて、優良物件と言えるかも・・・」
「大神様の所へ行って確かめて来る」
「そうしてよ」
壊れたドアから出て行ったイデ、幾分か急いでいるように見えた。
真太は内心、
「もう帰って来なくて良いよ」
と思った。イデはそれを感じているだろう。
この真太とイデの様子を眺めていたナイラは思う。
『本当に真太って、面白くていい子ね』
次の22話で最終話になります。
この21話で終わるつもりでしたが、なんだか長すぎる気がして、二つに分けました。分けてしまうと、それほど長くなかったようでした。(;^_^A
次の22話が最終話です。すぐに投稿します。




