第17話
真太はやる気が出てイキイキと夕飯を食べ出したが、他の皆はまさにお通夜的雰囲気である。レディ・ナイラのボディガードになりに出発したら、今生の別れとなり、お通夜の前倒しの夜?と言った感じである。アボパパは只でさえ具合が悪くなっているのに、この話を聞き元気を無くして、2階で安静にしている。心配したママに追いやられたとも言える。
香奈ママは真太を睨み、
「絶対行かせないから」
と息巻いている。
真太はママに睨まれ、イキイキ気分は削がれて、今度は意気消沈となった。
そんな雰囲気の紅琉家にイヅが急に現れた。
「イヅっー」
皆で一斉に驚いたその訳は、急に現れたからではなく、1歳ぐらいの子供をおぶっているからだ。
「驚いているね、みんな。この子、イダパパが最近2度目の結婚をして。あ、真太以外は知らなかったって。そうだった、バタついて言ってなかったですね。そして、さっき僕のその継母がこの子を生んだんです。年寄りの龍神達がイダパパが亡くなっていて危ないから、香奈ママの結界のお世話になれって言うんです。御迷惑じゃないでしょうか」
「ううん、良いわよ。そうよね、パパも亡くなってその人・・じゃなくてその龍神さんも心細いでしょうね。私達で出来る限りお世話しますって伝えてね、イヅ」
「はい、そして、もうひとつ、驚くことがありますよ。こっちの方が驚くかも」
その時、由佳は、
「ひっ」
と息をのんだ。そのまま泡を吹いて倒れそうな驚きようで、他の皆はそれを見てあたふたするが、イヅは、
「由佳ちゃん。そんなに驚いちゃ、本人じゃなく本龍に失礼ですよ」
「何だよ、どういう事」
真太はイヅが失礼とか言うので、まさかと思ったが、
「まさか、アバの生まれ変わりとか言わないよね」
「言わない、言わない。アバさんはこれでゆっくり眠れるって、喜んでいるらしいです。パパは僕のママに2度目の結婚を怒られてしぼられ、戻りたそうだったけど、一歩出遅れたって悔しがっていたそうです」
香奈ママは、
「そういう会話、ひょっとしてその子からの情報なの?」
「そうです。そこで、クイズです。そうなると残りは誰でしょう。その残りが生まれてきた彼です。あまり難しくないですよね」
皆で、恐る恐る言ってみる。
「まさか、シン?」
「パンパカパ~ン、アッタリー」
高い声で、機嫌良くファンファーレのマネをする赤ちゃん、歯が無い所為だろう、不明瞭な発音だが、確かにそう言っているように聞こえた真太達である。
「な、なぜ、どうして転生してきたわけ。い、今更じゃない?」
真太は驚きすぎて、うまく言えなかったが、どうやら意味は分かった様で、
「真太にちゅいてって、ないらのいえにいこうとおもっての。そのころにはおおきくなるからの」
それを聞いて、香奈ママは、
「何と言う有難いお言葉、シンがついて行ってくれるなら、安心です。この子の為にそんなにまでしていただいて・・・」
「あんしんはやめてね。ちゅよくはないからね。りこうなだけでちゅから」
「だろうな。馬鹿な俺のサポートかよ。それにしても思い切った事するよな。止める奴は居なかったのかな。霊魂のまま俺を助ける訳にはいかなかったの。自分でも強く無くなるのは分かっていたようだけど」
「イダがもどろうとしたから、おもいちゅいた。せんてをうってきてやった。あはは」
その時、真太も思いついた。『イヅが、何だか由佳を気に入って居て、大人になるのを待っている感じがしていたし・・・。まさか、シンは舞羅と・・・だけど、舞羅はシンのあのきらきら容姿が気に入っている気がするけど。南国の黒々火吹き龍に変わってしまっては、どうだろうかな。アビのことは、タイプじゃなかったはずだけど。あいつの押しが強かったからだったはず』
するとシンが、真太にテレパシーで、
『まいらはみかけをすきには、ならないよ。ぼくのこころでちゅ。それにこれで、せんぞと、しそんの、かんけいではなくなるよ。これはだぶーだったからね。いまは、ぼくたちには、もうなんのしょうがいもないでちゅ』
真太は、シンのもくろみはうまく行くだろうか、舞羅は彼を見てどう思うかなと疑ったが、まぁ、気にしてやる必要は無いだろう。
一方、イヅはシンの生まれ変わりである弟をおぶったまま、香奈ママからお茶をもらい、お茶をすすりながら、
「ナイラ様のボディガードになりに行くんだろ。そして、そこの誰かが取り付かれていたら、魔物を退治するんだね。この役、きっと真太にしか出来ないんだろうね。アビは僕には、言って来なかったな」
「そうなんだね。イヅは龍神界のトップになるから、危険な事はしない方が良いんじゃないかな。それで頼まなかったんだろうな」
「真太、僕はそれは無いと思う。シンが転生して生まれてきたんだから、シンがトップになるよ、きっと。大人になったら能力とか、多分僕らとは出来が違っているはず。きっと雲泥の差だろうな」
「あっ、それもそうだった」
「おはなしちゅう、わるいがの。そういうもくてきで、うまれかわったわけではないから。ひのくにですえながく、くらすつもりだからね」
「ああ、そうだったね。でも、一言、言っておくとそういうのは、相手次第だからね」
真太が釘を刺すと、その世間話風な会話を聞いていた、香奈ママと千佳由佳、
「はぁ、なるほど」
と、シンの転生して来た訳に納得したが、千佳は、
「舞羅は、高校を卒業したら歌手になるんだって」
と知っている情報を言っておいた。
「え、なに。ぼく、名はイデ、アマズンからやってきました。イヅの弟です。」
急にすっとぼけて、自己紹介し出した元シンのイデ。見ると3歳ほどになっている。さっきの話は打ち切りと言う事らしい。
「せっかく来たんだし、イヅ君も此処に居ても良いのよ」
香奈ママの言葉に、にっこりしたイヅ。真太はイヅのにっこりの意味、ママは勘違いしていると思ったが、もちろん黙っておくとイヅに約束してやった。
そして、イヅならあの三人の事、どうなったか知っているのではと思った真太は、
「ところでイヅ、あの三人はナイラ川に行ったの」
「烈は行ったけど、悠一とロバートは途中で失神したから、あの龍達が家に送って行ったよ。だからナナンとイインはまだフリー。烈は大露羅の尊様の子孫だし、シンの子孫でもあるから、ナイラ川に着いたら他の独身の女性龍神が大騒ぎしたようだよ。言わばいい血筋の人間の男が現れた訳だな。ラランは烈を誰かに取られるんじゃないかと、恐れてかなり焦っていたけど、ナイラ川にも、誰もが一目置く重鎮の龍神がいて、そのお方が、女性の龍神が誘って連れてきた男性は、ついて来た時点で夫婦の約束が出来ているんだと、言ってくれてね。ラランは烈を婿として連れて来たのを、認められたそうだよ。烈はあれで水遊びに来たつもりだったそうだけど、その辺のこと分からないかな。真太も呆れるだろ。だけど、烈はそれを口に出す雰囲気じゃないと思って、そのまま結婚したって言うんだ。そういう話を、僕がアマズンにさっきまで居た時に、テレパシーで言って来たよ。僕のテレパシーが烈の様子を見に来たのが分かったって。烈、人間だけど龍神みたいな能力が有るね。本人も最近そういう能力者になったって言っていた」
「烈は、島育ちでさ、世間知らずと世事に長けている感が同居した不思議な能力者だよな。前からそんな感じだった」
「前からって翔の時からって事」
イヅの問いに、
「そうだった、また前世思い出してきた。あの奥義、思い出せると良いな。ボディガードに雇われる前に」
真太は思わず自分の心配の種をイヅに言った。
「僕と練習しようよ。もう少し僕が大きくなったらね」
シンことイデにそう言われて、真太はやはりシンは真太の心配から転生して来たのだが、それを言わずに、舞羅の事が理由のように言っている気がする。能力をどうこう指摘する事は、シンの流儀では無いのだろう。前世の翔の頃から、彼の考えは遥かな所にあったのを思い出した真太である。




