第12話
一方、真太が逃げてしまった後の紅琉家の居間での、三龍の様子に戻ってみよう。。
「ああ、あと一歩のとこで逃げられたねぇ。もしかしたらあたし達が話していた事聞こえたかな」
「随分、興奮していたものねぇ。ラランとイインは。きっと聞かれているね。その点このナナンちゃんは好印象だったはずよう」
「ふん、なによっ、誰が何しゃべったかなんて、分かってやしないわ。何だかむしゃくしゃして来るわね。そうだ。こうなったら例の一輝をシメに行こうかな」
「あたし達だけで?」
「どうせ下っ端の人間でしょ。リンちゃんの気持ちを傷つけて、ひどいじゃない。きっとあたし達ぐらいしか、あいつを締め上げようなんてアイデアは持ち合わせていないね。あたしには分かる」
「ま、あたしだって、ラランやナナンより若いから、近頃の女の子の気持ちに近い感じなのよ。だからあたしも締め上げ行く気はある」
「あんた一言多いけど、ま、数は多い方が良いね。良い子のナナンはどうするの」
「行くよ。あたしが居ないと、押さえが効かない子達だもん」
そういう訳で三龍はUSBBに存在する悪のアジトへ出発である。下っ端の一輝と思っているようだが、はたして・・・
研究所を遠巻きにして、近くのガソリンスタンドで缶コーヒーを手に、様子を窺うお嬢さん龍達。
一輝が部屋を借りて近くに住んでいるか、それとも研究所内に住むところがあるのか、どちらか分からないことに気付いた三龍。真太達より幾分か利口である。言っておくが、幾分かの差でしかない。
「ねぇ、何時迄こうしているつもり。退屈じゃない。そう言えばリンちゃんの証言で、奴の前の家の電話番号が何故かまだ生きていて、そこから連絡して来たって言っていたじゃない。ひょっとしたら、その番号で出るんじゃないの」
「ナナン、良い事思いついたじゃない。番号、あなたがファイルに記入したでしょ。イイン」
「そうよ、あたし利口だから覚えているよ。でもそこへ掛けるあたし達って、どう思われるかな」
「どう思われるって?きっとあたし達のお里は知れているってば。お互い正体は分かっていて、奴が出て来るかってとこよ。出てきたらあたし達で締め上げるの。出て来なくて、ガードマンのガーゴ君達が出てきたら、逃げるの。あいつ等よりあたし達の方が絶対早く飛ぶね。これは事実よ」
ラランの強気の意見にながされたイインは、ついに電話をしている。
「一輝さーんですねぇ。そうですぅ。お察し通り、あたくしたちぃ、レディ・ナイラが御膳立て・・じゃなくて組織したぁ、傷ついた女性を癒す目的のボランティア活動してますぅ。川岸リンさんから事情を聞きましてぇ。おたくにも、お聞きしなくてはならないですぅ。お話を伺うのにぃ、何処に行けばお会い出来ますかぁ。ええ。急ぎですぅ。えー、本部はUSBBの首都にあるのでぇ、私達、日の国からは戻ってきていますぅ。そちらのご都合の良い場所に行きますけどぉ。あたくしたちはぁ、調査が終われば本部に戻るつもりですからぁ。了解ですぅ」
イインは話し終わると、
「聞こえたでしょ。あいつ、本部に行くって、今日の便に丁度良いのがあるから、直ぐ飛行場に向うんだってさ」
「出て来るヨ。ここで待ちぶせるの?」
ラランが言うが、ナナンは、
「ここは流石に奴の縄張りじゃないか。不味すぎだよ。ターミナルに行こう」
と言う事で先回りして、ターミナルパーキングで一輝が来るのを待つ三龍。田舎なので、パーキングが一ヶ所しか無いのがついていると言える。
直ぐに一輝がやってきた。空きは彼女らの車の近くしかない。一輝が車を止めるのを見計らって、ぞろぞろと、側へ行く三龍。
彼女らを見て眉をひそめる一輝。状況を理解しただろうか。電話がかかって来て既に理解しているのでは?
「おや。もう此処におそろいとは」
「そうなのよ、あたし達はボランティアで、日本語で言う所のぉ、『シカエシ』っていうのも、請け負っているのよぉ」
イインがニッと笑うのを合図にナナンとラランが両側から一輝を拘束しようとした。ところが、何という事だろう。一輝は見る見るうちに巨大な巨人に変化したのだ。三龍は素早く間合いを開けた。そして同時に龍の姿となり火を噴く。ナイラ川の龍も、アマズン川と同じく火吹き龍である。因みに彼女たちは今、龍神界に移動しており、彼女たちが吹く炎は人間界にも届く仕様となって居り、三龍同時に火を引けば、逃れられる隙間は無い。・・・筈だったが、なぜか巨大一輝は炎を避けて、辺りの車を掴んで彼女らに投げ飛ばした。人間界からなので当たる筈が無いはずだから、これには油断した三龍。しかし咄嗟に龍神界に飛んで来た車を間一髪で避けた。
「まっ、どういう事?」
少しうろたえる三龍だが、なぜか自分達が人間界にいる事に気が付くそして、肝心の巨大一輝は、どうやら龍神界に居るもよう、と言うのも。辺りの人間が電話で助けを呼んでおり、
「大変です。怪獣が三匹、飛行場で火を噴いて暴れています」
巨大な一輝の話はしていない。ピンチを悟る三龍。
「変よ、あたし達。人間界に来てる。逃げなきゃ」
三龍が慌てて、飛ぼうとすると、
「そうはさせるか」
一輝しか巨大になった人間はいないと思っていた三龍の目の前で、野次馬と思っていた人間が5,6人巨大化してしまった。そして飛んで立ち去ろうとする三龍の足や尾っぽを掴み持って、地面に叩き付ける。しかし、巨大人間は人間界では目にかからないらしく、野次馬は、
「あ、怪獣は飛べなくなったのか?落ちてしまったな」
と言っている。そして、巨大一輝は巨大ナイフを何処からか出してきて、ラランに切りつけようと、腕を振りかざす。ナイフは妙な輝きだ。ラランはそこに毒を塗っていると見た。転がって避けるララン。今の所ナイフは一輝しか持っていないが、ピンチである。ナナンやイインが助けようとするのを、
「来たらダメ。毒よ」
と止めるララン。どうしようかと皆でうろたえる所へ真太が来た。
龍になって一瞬で移動してきた真太が、足でナイフを蹴散らした。
「逃げろ。あんたらの手には負えない」
「ありがとう、真太」
三龍は口々に礼を言いながら上空に移動した。引きずり降ろそうとする巨大人間は、真太が素早く次々に倒していった。龍神の姿であるがその大きさをものともせず?人間の様な動きであり、そして圧倒的な速さで倒すのだった。
警察車両や、空軍が遠くからっやって来るのが見えたが、皆で逃げ出す時間は十分あった。
逃げていると、イヅが人間の状態で普通に飛んでやって来た。イヅは人型で火を噴ける唯一の龍である。そして、彼は瞬間移動はまだ出来ない。
「終わったの、真太。僕が行かなくても良かったね」
「いや、今日は大丈夫だったけど、あいつらは地獄の毒を手に入れている。油断できないからな。こっちも波状攻撃みたいなのが、有っても良いんじゃないか。直に、イヅの出番も有ると思うよ」
「ふうん、僕は第2弾だね」
「あなた達って、ホント、ステキね」
お嬢さんたち三龍が感動したらしく、目をウルウルさせて言うので、ぎょっとする真太とイヅである。
「うわん、酷い。失恋かな」
と嘆かれたが、レディ・ナイラの住処の上空迄、三龍をさっさと送り、真太とイヅは、慌てて退散した。
帰りながら、
「やっぱり、あの圧は苦手だな」
「うん、年上は僕らの趣味じゃないよね。パパに断ってもらうよ。僕ら、まだ幼稚園児って事で」
二人はアマズンに戻ってみると、アボパパも来ていて、アバとアボパパとイダパパ、何やら深刻な会議中のようだった。報告するまでもなくアバは全てを把握している。
「どうやら、今日は無事だったな」
「真太は前世でもあの毒にやられたし、今度は俺ら棺桶トリオに任せろ」
アボパパは変な事を言い出した。
「棺桶トリオって、どうしてそうなる」
真太が呆れて聞くと、
イダパパは、説明した。
「俺はアバの怒りにやられて棺桶入りの筈だったけど、アバの睡眠中の見張りの仕事の為に生きているから、棺桶からつまみ出されて来た感じ。アボは棺桶に片足突っ込んだ健康状態で、アバに至っては、半身は棺桶に入っているものの、元が丈夫な質なのでなかなか死なないし、で、棺桶トリオさ。お前ら若いのはまだ将来があるからな。俺達に任せておけ」
イヅは、
「そういう事なら任せても良いけど、その将来の事だけど、伴侶って言うのは自分で見つけるから。あの三龍は歳の差があり過ぎて、遠慮したいね。真太もそう言っているから。パパ、断ってから現場に行ってね」
「ぶはっ」
アバが噴き出した。
「うやむやにして死ぬなってさ、イダ」




