第13話
それから、真太とイヅは棺桶トリオじゃあ魔界の奴らとの戦争になれば戦力が足りないのではと、戦いに加えて欲しがったが、大人の龍神達に断固拒否されてしまい、迫力負けで終わった。
真太とイヅはパパ達から追い返されて、真太の家に戻った。今回は窓から入った。
「ちぇっ、なんで一緒に戦わせてくれないんだろ。俺ら、役に立つのにっ」
真太が憤慨して言うと、イヅは普段と違って顔をしかめて、
「何だか、パパはワザとふざけた言い方したけれど、本当の所はかなり深刻になりそうだな」
「つまり、かなりやばいって事?」
相変わらずの雰囲気の真太。そこへ2階にドタドタ上がって来る足音が聞こえてくる。千佳由佳である。襖をぴしゃっと引き開け、
「真太とイヅは帰らせられたんだねっ、やっぱりみんな死んじゃうんだ」
千佳が叫び出し、由佳は泣き出した。そういう騒ぎを見て、真太は深刻にならざるを得ない。
「俺、やっぱり戻って戦って来る。イヅはここに居な。ここはママが結界張ったから、家に居れば安全だし」
そう言って、窓から飛び出そうとしたのだが、
「んっ?あれっ?」
「どうしたの、真太」
不思議がるイヅに真太はこの状況を説明した。
「変だな。窓から出られないや」
とは言え真太は、ママは家の結界を、窓から自由に出入り出来ない仕様にしたと悟った。それが分かると、真太はいよいよ焦って来て、
「マジかこれ、これはかなり不味いな。ちょっと玄関からにしてみようかな」
さっきは玄関から出ることが出来ていた。お嬢さん龍のピンチに気付いたイヅと一緒に出たのだ。
真太が慌てて玄関に行くので、残り三人はその後をぞろぞろ付いて行った。
ゴッツン、玄関では勢いよく頭から飛び出そうとして、駄目だった。かなり良い音がした。
「真太頭大丈夫?」
心配する千佳由佳。
「さっきまで出られたのに。ママは今日結界を修正しようとしたみたいだけど、今は居なくなっているし。何時帰って来たかな。イヅ、分かるだろ」
真太はイヅを見ると、分かって無い事が分かった。不思議である。そして、アボパパが本当に危ないのだと思った。
「んー、んー」
真太は玄関から、何とか出ようと、唸りながら頭を結界に擦り付けてみる。
三人はそれを呆れて見ていたが、
「無理みたいだね、真太。ママが帰って来たら、お願いしてみた方が良いよ。これじゃあ、体力の消耗だね」
千佳に言われて、それもそうだと思う真太。体力勝負になるかもしれないのに、馬鹿な事をしていたと思う。バカは今更だが、最近真太は、己の馬鹿さ加減にしみじみとした感覚を持ち始めて居た。そして呟く、
「俺、どうして、段々馬鹿になって行くのかな」
由佳が指摘する。
「好き嫌いして野菜食べないからじゃない。腸は脳だってどこかで聞いたよ」
イヅは、
「由佳ちゃんは大きくなってきたら、随分と面妖な話題を話すんだね」
と静かに言い出した。
その時ふと真太は、イヅは由佳が大人になるのを待つつもりなのではないかと思った。兄として、じゃなくて弟として、真太は複雑な気持ちになる。真太の気分に気付いたイヅと、気まずい雰囲気が出て来そうになった所で、とうとうママのお帰りである。
「ただいま。あらあらお揃いで玄関に居るのね。」
すかさず千佳由佳は、
「ママっ、きっとパパはこのままじゃ死んじゃうよ」
「真太は加勢に行きたいのに行けないの。真太を通してあげてよ」
ママの顔色が変わった。
「そうなの、でも真太が出ていけないのは、ママの所為じゃないよ。この結界は・・・きっとシンね。アボパパに頼まれたんだと思う。パパ、もう覚悟しているのね。あたしとの約束破る気だっ。あたしを看取ってから死ぬって言ってくれたのに。約束したくせに、アボの嘘つきっ」
ママは泣き出して、真太を外に出してくれそうにもない。しかし、この雰囲気にもめげず、真太は、
「ママ、泣くのは僕を外に出してからにしてくれないかな」
「バカッ、あたしに龍神の力を上回る能力なんか無いよ」
「そんなぁ、シンー、シーンー、ここから出してよー」
仕方なく、真太はあても無くシンを呼ぶが、外に行かせる気が無くて、結界を張ったのだから、シンが出て来る筈も無し。ふと思いついた真太は、イヅに、
「イヅ、試しに例の高温レザー光線風の火を、玄関に吹いてみてくれないか」
「気安く頼まないでね。死んで向うに行った時は僕、きっと、シンに〆られる。それに光線で結界が破れるなんて、ありえないよ」
「きっと、当分は生き永らえさせてくれるつもりだから、その内忘れてしまうよ、きっと。シン、割と馬鹿だから。子孫の俺が言うんだから、間違いないってば」
そこへ不機嫌そうにシンが出て来た。真太は、今言った事を気にもせず、
「あ、シン。来てくれたんだ。出してよ、僕だけで良いから。パパを助けに行くんだ」
「ふん、お前の手に負えるものか。奴らは例の毒の作り方を知っておっての。警察やら、軍隊やらの飛び道具にはすべて塗っておる。行けば死ぬぞ。我が出て来たのは、お前を外に出すためではないからの。イヅが光線を吐くのを止める為じゃ」
「えっ、本当にイヅの光線で結界が破れるんだね。じゃあ、シンは帰って。イヅ」
と言って、真太がイヅに向って目くばせすると、シンに思いっきり拳骨を食らった。
真太は気絶しながら、『これ、懐かしい感じ。前世でもあった展開だな』と思った。
シンに真太がぶちのめされたのを見て、驚く香奈ママ及び千佳由佳、
「わぁっ、真太気絶しちゃった。シン、そんなに頭ぶって、ホントに馬鹿になったら困るよぅ」
由佳の可愛い抗議により、少し反省したふりをするシン、
「おや、これ以上馬鹿になっても困るかのぉ。由佳ちゃんが面倒見切れなくなっては大変じゃ。目を覚まさせて、どうなっておるか確かめようぞ」
そう言いながらシンは、真太を水のジェルの様な物でぐるぐる巻きにして、足で突いている。
「手で突いて」
千佳にも抗議されて、ハイハイとばかりに真太を手でゆすってみるシン。
目を瞬かせ気付いた真太。
「あ、これ何。動けないじゃないか。シン、最近は根性も悪くなったな」
「やれやれじゃ。我はこうしてはおられぬのじゃ。主の替わりに助太刀に行くよって、付いて来ぬようにした。これでは結界を開けても出られぬな。残念無念と言う所であろう。いい気味じゃ。馬鹿のやり様を思い知るが良い」
そう、捨て台詞を言って立ち去ったシンである。先程からの真太の言い様を聞いて、根に持っているらしい。
「畜生。イヅ、これ何とかしてどけろよ」
「シンのやった事を打ち消す能力なんか無いけど」
「さっきの話、聞いてなかったのか。結界だってお前の火で破れるんだ。こいつも退かせられるに決まっている」
「真太も一緒に、この世から退かせられそうだけど」
「工夫しろ、工夫だっ。お前が考えるんだ。俺は無理」
千佳は忠告した。
「真太、人に何か頼むときはね、もう少し態度を考えようね」




