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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第61章 ポルトニア~ゴルドニア神殿
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第548話『反社』

「――ってことがありました」

『ふむ、分かった。まずはお疲れ様』


 人工種蠍科レイパーを撃破してから、二時間後。ポルトニアのバスター署で、レーゼは日本にいる警部、相模原(さがみはら)優一(ゆういち)に一報を入れていた。


『予想外のことが起きたが……一先ず、誘拐と薬草の強奪のどちらも未遂に防げたのは幸いだな』

「ええ。ギリギリでしたが。誘拐されかけた子の声掛けが無かったら、まんまと奪われていましたね。あの子には感謝です」


 言いながらも、レーゼの顔はやや渋い。


 あの場には、レーゼは勿論、雅とライナにラティア、それに皇奈までいた。彼の声が無ければ誰一人気付かなかったのが、無性に悔しくて堪らない。


「クゼが薬草を求めていたのは知っていたはずなのに……はぁ」

『何とか死守出来たんだ。そう自分を責めるな。……と言っても、難しいか。ところで、捕まえた変身者の身元は分かったか?』

「イェラニアに拠点を持つ、犯罪組織『テルイート』の下っ端でした。……サルモコカイアのバイヤーもしていたそうです」

『まさか、ルーフィウスに売っていた?』


「ええ」レーゼはそう答える。


 エルフの里の、元長。ルーフィウス・エルフマンダ。ちょっとした偶然により、彼がイェラニアのバイヤーからサルモコカイアという麻薬を購入していたことが判明した。


 シェスタリアのバスター署に身柄を拘束され、取り調べを受けた結果、彼とやりとりしていたバイヤーは、イェラニアの人間と発覚。


 似顔絵なども作られ、その後はイェラニアのバスター側で捜査がされていたのだが、何という偶然か、今回捕まえた男が、まさにそいつだったのである。


「テルイートは、最近は詐欺などの犯罪も手広くやっているようですが、元々は、サルモコカイアを専門で売りさばいて利益を上げていた組織です。作るための設備もあって、何度か摘発されていますが、その度に新しいところに拠点を作り直していますね」

『設備がある、か。となると、その際に出る廃液は――』

「勿論、クゼに流れていたと思います。今回捕まえた男は、そこまでの情報は持っていませんでしたが、ほぼ間違い無いでしょう。因みに誘拐は、クゼからの依頼だったそうです」

『アラマンダの話では、クゼはこのところ、子供を集めているということだったな。廃液の処理を引き受けることを条件に、誘拐を依頼したといったところか』

「クゼからしてみれば、得しかない取引ですよ。廃液は、大きなエネルギー源になりますから」


 廃液は処分に手間とお金がかかり、そして足が着く可能性もある。それを引き取ってくれるとなれば、テルイートも喜んで協力しただろう。まさにウィンウィンの取引だ。


 最も、久世が廃液を有効活用しようとするならば、廃液に特殊な処理を施し、発する臭いを打ち消す必要があるが。あの臭いは、レイパー等を呼び寄せてしまう。今のところ、何も騒ぎが起きていないところをみると、恐らく久世はその臭いを何とか出来たのだろうと、レーゼは推測していた。


『しかし、よもやその男が人工レイパーに変身出来るとは……。いや、考えてみれば、犯罪組織への流出等、真っ先に疑ってかかるべきなのだが』

「今までの変身者が、軒並み元一般人でしたから、私も少し驚きました。……人工レイパーに変身出来るようになる薬の入手経路は、組織のボスから勧められたと言っています」

『個人ではなく、組織に売っていたとなると、他の組員にも人工レイパーがいる可能性があるな。今回捕まったのも下っ端だから、何なら、全員が変身出来る可能性も充分にありうるか。面倒だな……』


 ただの犯罪組織なら兎も角、構成員全員が人間離れした戦闘力を持っているとなると、戦略を練るのも難しい。


 予想される犠牲も考えなければならない。実に頭が痛くなる話だった。


「ポルトニアのバスターも、その可能性を考慮して捜査を進めるそうです。何か進展があったら、こちらにも情報を送ると約束してくれました。カミジキさんも、仕事の合間に調べてみてくれると。テルイートの構成員は、百を超えています。それが全員人工レイパーとなって襲い掛かってくるとなると、イェラニアだけでは手に余ります。協力体制を敷かないと」

『分かった。元々、久世は日本の、いや新潟の人間だ。それがイェラニアの犯罪組織と手を組んだのなら、イェラニアだけに任せきりにするつもりはない。……しかし、参ったな。こうも勢力を広げられると、いよいよ手が付けられん。早く奴を捕まえなくては……』

「空港や港は、常にマークしていましたよね。ならクゼは十中八九、バイヤー通しで相手とやりとりしていたはずです。まだ日本にいると思うのですが……」


 事実、久世は三月頃には新潟で目撃されている。警察の包囲網を潜り抜けて県外、まして海外に逃げるのは、かなり難易度が高い。


「それにしても、エルフの管理するコートマル鉱石といい、サルモコカイアといい……クゼは、高いエネルギーを持つものを集めていますよね。もっと人工レイパーを強くするつもりなのでしょうか? これ以上、人工レイパーが強力になる前に、手を打たなければ……。……ユウイチさん?」


 反応が無く、怪訝に思ったレーゼが彼の名を呼ぶと、優一は『あぁ、すまん』と言って、こう続ける。


『今のレーゼさんの話を聞いて、ふと思ったんだが……久世は本当に、人工レイパーを強化するつもりなのだろうか? だとすると、何故子供を集めているのだろう?』

「子供なら、言うことを聞きやすいから……だと私は思っていますが……」

『だが、今の薬には、面倒な副作用もあるだろう? それで君達が採取した『チリスハーブ』と『パリフィスソウ』を強奪しようとした。……そんな状態なのに、また人工レイパーをパワーアップさせて、果たしてそんな代物が子供に扱いきれるのだろうか?』

「つまり、ユウイチさんは、クゼがしようとしていることは、人工レイパーを強化することではなく、何か別の目的があると、そう思っているのですか?」

『……人工レイパーの薬を作るために、エネルギーとなるものが必要なのは間違いない。それもちょっとやそっとではない量のはずだ。コートマル鉱石もサルモコカイアの廃液も、その為に集めているのだろうとは思う。……が、その実験体として、何人もの子供を実験台にしようとしているというのが分からない。そんなことをせずとも、どうも我々が思っている以上に、久世の仲間は多いようだ。だから、言葉巧みに騙して実験台にする方が、足が着かないだろう。そもそも、前々から、我々は奴の掌の上で踊らされているような、そんな気持ち悪さがあるんだ。今回も、何か裏があると思うべきだと思う』


 そこまで言ってから、優一は最後に、『まぁ、刑事の勘だがな』と続けるのだった。

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