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お題【湖畔の漂着物】
静寂の中、わずかに響く振動。それに誘われるかのように幾つもの声が夜の闇に咲く。
「来たね」
「ああ、来た」
「久々に乗っているね?」
「乗っていると思う」
「そうね、私も感じた」
「どの辺り?」
「希望の湖の湖畔付近だな」
「いい場所に流れ着いたね」
「ああ、いい場所だ」
しばらく後、声たちはその漂い着いたモノの周りに集まっていた。モノの外壁には無残な穴が穿たれている。
「おおい、起きろ」
「……ん……ここは?」
穴から声が抜けて現れる。
「ここは希望の湖、だからアンタはこれから希望2だ」
「希望……2?」
「話は移動しながらだ。さあ行くぞ。ここもじきに昼に曝される」
「昼に?」
「俺たちは夜の中にしか遺れないんだ。着いたのが夜なんてアンタ……希望2は名の通り運が良い。ほら発つぞ」
無慈悲な光がじわじわと地の面を舐め広げてゆく。声たちが離れたその場所に陽が届いたとき、漂着した脱出用救命ポッドの中、遺体の見開かれた目には青い大きな地球が映っていた。
月面をぞろぞろと移動してゆく影たちの一つが名残惜しそうにそれに手を振った。




