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お題【永遠の舞】

 あの夏の夕暮れが僕の記憶に絡み付いたまま離れない。風が強い日だった。近所の土手を歩いていた僕の顔に不意に蜘蛛の糸のようなものが絡まった。だけど手で拭ったそれは糸というよりはリボンのように幅があり、妙な温もりまであって。向こうが透けるほど薄い「それ」越しに見た景色の中に浴衣を着た女の人の笑顔が見えた。その人はゆっくりと近づいてきて僕の目の前で立ち止まり「それ」をつかんで空へふわりと放った。「それ」は風に乗ってくるくると舞い上がり空の彼方へと踊るように消えてゆく。

 不意の突風。よろめいた僕が思わず伸ばした手が、浴衣の隙間から出た彼女の膝へと触れた。

「切断した足をジュシで加工したからね、ギソクだけど本物なのよ」

 当時の僕はギソクとかジュシとかいう言葉の意味は分からなかったけれど強い秘密の匂いは感じたし、同時にあのリボンの手触りを思い出しもしていた。

「事故でね。バレリーナを目指していた娘と一緒に失くしたの。あの子、もっと踊りたいって言っていたから……」

 彼女の言葉が途切れた瞬間、思わず走り出した。


 その後、彼女が鰹節屋の女将だと知ってから、僕は鰹節を食べられなくなった。


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