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第3話 異能競技



「あれ、もしかして幻獣種を見るのって初めて?」


皐月が目を輝かせ、2人の顔を覗き込んで尋ねてくる。


「え、あ……はい。すごく珍しくて、その、」


明日香が戸惑いながら言葉を紡ごうとした瞬間、星羅がすっと割り込んだ。


「……部長は居ないんですか?」


「あ~、一応3年に1人いるんだけどね。今、海外に留学中なんだよ」


美琴が紫色の髪をがしが気怠げに掻きながら、面倒くさそうに答える。


「留学……ですか?」


明日香が興味津々な様子で、思わず皐月の方へ一歩身を乗り出した。


「うん、そうなの。その先輩、異能競技の特待枠でアメリカに留学しててね」


「……」


星羅は興味がないフリをして窓の外へ視線を外したが、内心では誰よりも強い衝撃を受けていた。 高校生にして、本場アメリカへの異能競技留学。それが意味するのはただ一つ――その不在の部長が、全国はおろか世界のトップクラスに君臨する怪物だということだ。

(……そんなヤツが、この物置みたいな部活に?)


「ま、固い話は置いといて歓迎会を始めようか。はい、2人ともそこに座って自己紹介お願い」


皐月はそう言うと、真ん中に置かれたスチールデスクの上に荷物を退け、気さくに椅子を引いてくれた。 言われるがまま腰を下ろすと、パイプ椅子から『ギー……』と悲鳴のような重い金属音が部室内へ響き渡る。見た目通り、かなりの年代物で錆びついているようだ。


「1年3組、そ、宙海明日香です!」


「同じく1年3組、雨山星羅」


「うんうん、よろしく。これでようやく規定人数が揃ったから、これで『あの大会』に参加できる」


美琴がギシギシと音を立てる部室のロッカーを開け、古びた一枚のプリントを取り出した。そこには、太字で『全国国民体育大会 異能競技の部』と書かれている。


「異能競技はマイナーだからね、基本的には国体くらいしか大きな大会がないんだ。まあ、参加者のほ

とんどは現役の高校生だけど」


「たまにゴツい大学生が混ざってたりするけどね~」


美琴と皐月が軽口を叩き合いながら、じっと2人の顔を見つめてくる。 その瞳の奥に宿るわずかな「圧」を感じ取り、明日香の肩がビクッと小さく震えた。

(――大会、出るでしょ?)

無言のプレッシャー。それを感じ取った星羅の唇に、自然と笑みが浮かぶ。 本来なら、効率や損得を気にする星羅が最も嫌うはずの「理由のない感情」だった。しかし、埃っぽく騒がしいこの部屋の空気が、今の星羅にはどうしようもなく懐かしく、温かく感じられたのだ。


「明日香。私は参加するけど……あんたはどうする?」


「――明日香も、参加する!」

迷いのない、決意に満ちた瞳。明日香はしっかりと星羅の目を見つめ返し、それから力強い視線を美琴と皐月へ向けた。

「よ~し、決まり! となれば明日から本格的に部活始動だね~。明日は取り敢えず情報整理をするけ

ど、一応自分が使う武器を持ってきてね」


「じ、情報整理……なんですよね?」


明日香が少し不安そうに皐月を見つめる。もし初日から実技で戦闘にでもなれば、間違いなく自分は病院送りにされるだろう。相手が皐月や美琴のような幻獣種なら、下手をすれば命すら危うい。


「あはは、安心して。僕は戦う気なんて全然ないから」


「ちょっと、何その言い方。私には戦う気があるみたいじゃない」


美琴の額にピキッと青筋が浮かぶ。彼女は笑顔のままギュッと拳を握りしめ、皐月を睨みつけた。

「だって美琴、根が闘争本能の塊じゃん」


「誰が闘争本能じゃあ!!」


結局、用意されていたはずの歓迎会らしいものは何もなく、星羅と明日香は目の前で繰り広げられるコントのようなやり取りを呆然と眺めるしかなかった。

(本当にこの部活……大丈夫なのかな……)


あきれ返る星羅の隣で、明日香は目を輝かせながら楽しそうに2人の喧嘩を見つめていた。

――ずっと『異点』だと見下され、透明人間のように扱われてきた。 だからこそ、こうして『普通』に仲間と笑い合い、同じ空間にいられることが、今の明日香にとっては涙が出そうなほど嬉しいことだったのだ。


「明日香……泣いてる?」


星羅は不思議そうに眉をひそめ、そっと顔を覗き込んだ。 明日香の大きなピンク色の瞳は、あふれ出そうな涙のせいで潤み、夕暮れ時の光を反射してキラキラと揺れている。唇をぎゅっと噛み締め、必死に泣くのを我慢しているのは誰の目にも明白だった。


「……ないでない」


鼻をすすり、声をかすれさせながら強がる明日香。しかし、言い終わると同時にその小さな肩がプルプルと震え始めた。どうやら図星だったらしい。 その不器用な姿に気づいた星羅は、フッと優しい息を漏らすと、そっと手を伸ばして明日香の頭を撫でた。


「大丈夫……言わなくても、なんとなくわかるから」


柔らかい声で呟きながら、星羅はゆっくりと彼女の髪を撫で続ける。 ずっと一人で傷つき、耐えてきた明日香の心を包み込むような温かい時間――。

先ほどまで取っ組み合いの喧嘩をしていた美琴と皐月もピタリと動きを止め、思わず息をのんで二人を見つめていた。そして同時に、実に意地の悪い、ニマニマとした笑みを浮かべ始める。

数分後、頭を撫でていた手を止めた星羅は、不意に視線を感じて振り返った。 そこにあったのは、生温かい目で見守る先輩二人のニヤけた顔。星羅はあからさまに眉をひそめ、不機嫌そうな声を上げる。


「……なんですか? 人の感動的な空気、見世物じゃないんですけど」


「いやいや〜、なんというか、すっごく『尊い』なぁって思ってさ」


「そうそう。尊い、実に尊いよ2人の友情……」

皐月と美琴は悪びれる様子もなく、ニヤニヤ顔のままニヤけた生温かい視線を送り続けている。

その視線の意味を理解した瞬間、明日香の顔が一気にリンゴのように真っ赤に染まった。


「な、なな何ですか急に〜っ!?!?///」


裏返った悲鳴のような声が部室内に裏返って響き渡る。 恥ずかしさのあまり真っ赤になって慌てる明日香と、顔を背けてフンと横を向く星羅。

ポカポカとした放課後の部室には、少女たちの賑やかで温かい笑い声がいつまでも響き渡っていた。

《キャラクター設定一部》

名前:雨山星羅

出身・所属:県立緑ヶ丘高校 

年齢:1年3組 16歳。

身体的特徴:髪は青色でロング。目はブルーサファイアの様な色をしている。Aカップ

キャラクター設定:ドライで冷たいが根は優しい。明日香に出会う前は物事を合理的に考えて行動していた。ただ街中での事件後明日香と出会い今まで無かった感情が生まれた。本人曰くそのことは気づいてない。


名前:宙海明日香

出身・所属:県立緑ヶ丘高校 

年齢:1年3組 16歳

身体的特徴:目と髪がピンクで髪の長さは肩くらい。Cカップ

キャラクター設定:なんでも明るく振舞うそこら辺にいる女子高生。星羅と出会う前は異点として人として見られてこなかった。”奇跡”が開花したから明日香は今まで灰色だった世界に色が塗られたと感じている。

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