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第18話 圧倒的強者

(……遅い。こいつ、明日香より全然弱いじゃん)

星羅は容赦なく放たれる激しい魔法を軽やかに回避しながら、心の中で冷静に目の前の相手を評価していた。

自身の能力――【星宿運命ホロ・スコープ】の出力はわずか15%。それだけの出力で、完全に相手を圧倒している。


「ねぇ? 本気でやるならさぁ、さっさとやってよ」


絶え間なく押し寄せる攻撃を紙一重でかわしながら、白髪の少女へ問いかける。決して相手を煽っているわけでも、油断しているわけでもない。

ただの純粋で素直な感想。圧倒的強者の余裕があるからこそ、そんな言葉が自然と口から漏れ出てしまうのだ。


佳子かこ……だっけ。あんたのチームメイト、もう全員負けたみたいだけど? まだ続けるの?」


手に握ったハルバードを一閃させ、星羅が一気に佳子の懐へと肉薄する。


「そんなの……出鱈目よっ!!」


「いや、本当はもう分かってんでしょ?」


佳子の悲鳴のような叫びを冷たく遮り、星羅は手加減なしの鋭い前蹴りを叩き込んだ。

ドゴォンッ!と重い音を立てて後方へ吹き飛ばされた佳子は、そのまま背後のビルに激突し、身体が九の字に折れ曲がる。

魔法すら乗せていないただの物理的な蹴り一発で、星羅は相手を瀕死の重傷まで追いやってみせた。


「……っ、ふざけるな……! 先輩達なら、お前なんか……ッ!」


敗者の遠吠えとも取れる戯言を、佳子は血を吐き出しながら叫ぶ。


「……もういいよ」


星羅の冷ややかな言葉が落ちた。

その言葉が届くと同時に佳子の身体は青い光の粒子に包まれ、その場から綺麗に消え去っていった。

ピコン――。

端末スマホから、無機質な通知音が静かに響く。

『+5ポイント獲得』





「うわぁ……っ、明日香ボロボロじゃん」


戦闘を終えた明日香たちは、非戦闘エリアに指定されている安全地帯の近くで合流していた。


「なんで星羅ちゃんは無傷なの!? 文句言いたくなるんだけど!」


「相手が弱かっただけ」


明日香の理不尽な抗議に、星羅は淡々と短く返す。 そして、周囲を見渡した。


「……先輩たちは?」


「まだ来てないよ~」


明日香はベンチにドサッと座り込み、疲れ切った大きなため息をつく。 時刻は18:40。夕闇が迫る空を見上げながら、星羅はポツリと呟いた。


「……負けたのかな」


冗談めかして口にしたその言葉は、静かな空間の中でしっかりと二人の耳に届いた。


「おめーら、誰が負けたって?」


「やれやれ~、後輩たちがどんどん生意気になっていくね」


バサッと聖なる羽音が響き、ボロボロの美琴を背負った皐月が空から悠々と降り立ってきた。


「お疲れ様です……美琴先輩、本当にボロボロですね……」


星羅は血だらけで気を失っている美琴を見て顔をひきつらせた。


「なのに皐月先輩はピンピンしてるし!」


明日香が呆れつつも、美琴の身体を皐月と一緒に支えながら言う。


「まぁ~ねぇ」


皐月は鼻歌まじりの声で答える。


「早く休むぞ~、今日はもう寝る!!」

夕暮れに染まりながら、4人の影は安全地帯のビル内へと吸い込まれていった。





私立白百合の丘学園が大会2日目で敗退したという情報は、瞬く間に参戦校全体へ広まった。 去年の準優勝校が、これまで何の成果も上げていなかった無名校に敗北したのだ。その衝撃の情報は――


真理まり、何見てるの?」


狐耳の少女が、上機嫌に猫耳をピコピコと動かしながら真理に尋ねる。


月下げっか、面白いよ~。白百合の丘学園が敗退したんだ~」


真理は端末スマホの掲示板を月下に見せる。


「ええっ!? うそでしょ!? どこに負けたの?」


月下は駆け足で真理に近づき、画面を覗き込む。 そこにはデカデカと『昨年の準優勝校、無名の高校に敗北』と書かれていた。


「なになに~?」


黒髪の『獣人種』――犬の耳と尾を持つ少女が、二人の騒がしさにつられて駆け寄ってくる。


「へぇ~……『県立緑ヶ丘高校』か」


「知ってるの? 千夏ちなつ


月下が尋ねると、千夏はけろりとした顔で答えた。


「え? 全然知らないけど」



「ねぇ、聞いた?」


茶髪のエルフの少女が、廃ビルの窓台に腰かけている少女に問いかける。


「なにを?」


興味なさそうに、彼女は視線も向けずに答える。


「私立白百合の丘学園が負けたんだって」


その言葉が部屋に落ちたと瞬間、少女の目の色が一変した。


「へぇ……」


口元を歪めるその姿は、まるで獲物を狙う狩人――食物連鎖の頂点に立つ猛獣のそれだった。

「なんで嬉しそうなのよ」


エルフの少女が呆れたように彼女を見つめる。 白髪に、黄金の鋭い瞳。丸っこい獣耳と、先っぽが箒の

ようにフサフサとした尻尾が愉悦に揺れていた。


「まぁ、想定内なんでしょうね……瓢華ひょうか


《大会点数総合2位》最強の一角『獣人種』・獅子――国立桜木大学、伊藤瓢華。

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