第6章 純愛
りさとは何度もデートをした。
会うたびに、彼女が少しずつ俺に心を開いてくれている気がする。
くったくなく笑う彼女。
電話をするたびに、その声が愛おしくなる。
会うたびに、彼女への想いが積み重なっていく。
──もっと笑わせたい。
──一生守りたい。
それが俺の本心だった。
映画の感想を話すときの彼女の視点も、俺には思いもつかない角度で世界を切り取っていて、その度に「すげぇな」と思う。
俺は彼女を愛していて、そして同時に尊敬していた。
だが、まだ気持ちは伝えていない。
もうすぐクリスマスだ。
その日、彼女に告白しようと決めている。
振られても構わない。
俺の目はもう、彼女しか見ていない。
何度振られても心は折れない。
それほどに、俺はりさに惹かれている。
クリスマスに会う約束も、もう取り付けた。
浮き足立ったまま、プレゼントを選びにショッピングモールへ向かった。
何がいいだろう。
ハンカチ?
──いや、ハンカチは「縁が切れる」って意味がある。
だめだ。それに地味すぎる。自分のセンスにツッコミを入れたくなる。
店内には陽気なクリスマスソングが流れていて、その明るさがさらに俺の心を浮つかせる。
ふと、甘ったるい香りが鼻についた。
その匂いをたどると、店先で泡をたてて接客する女性店員がいた。
……うるさいし、くさい。
「りさ、どういう匂いが好きなんだろう」
りさが香水をつけているところを見たことがない。
どんな香りを好むのかも、よく知らない。
前の彼女はこういうのが好きだった。
なんとかボム……?
でも、りさが喜ぶかはわからない。却下だ。
ふと視界にジュエリーショップが入った。
ショーケースの中で光る指輪が目にとまる。
「……いいかも」
そう思って値札を見た瞬間、目が飛び出そうになった。
ゼロがひとつ、多い。
俺の給料の半年分じゃねぇか。
指輪ってこんなに高いのか。
──あ、ていうか俺、りさの指輪のサイズも知らないじゃん。
好きな香りも、指輪のサイズも知らない。
俺は彼女の何を知っているんだ?
考え出すと、少し胸の奥がざわついた。
でも、すぐに思い直す。
「まだ知らないだけだ。これから知っていけばいい」
彼女が喜ぶ顔が見たい。
ふと隣のショーケースを見ると、雪の結晶をモチーフにした銀色のネックレスが目に入る。
「氷の女王」
学生時代の思い出が頭を横切る。
卒業式の日、氷のように溶けていなくなったりさ。
その時の喪失感を思い出して、一瞬だけ胸が軋んだ。
俺は直感で「これにしよう」と決めた。
彼女はこれを見たらどんな顔するかな。
おどろくか、また笑顔を見せてくれるのか。
レジで会計をするとき、そんなことを考えていたから、無意識にニヤニヤしてしまう。
プレゼントを選ぶって、なんて楽しいんだろう。
きっとこれは幸せの絶頂なのだ。
そう思った。
そして、その“幸せ”をくれた彼女を、俺は必ず幸せにする。
こんな奇跡のような人に出会えたことを、
生まれて初めて神様に感謝した。
普段は神様なんて信じないのに、このときだけは心の底から「ありがとう」と思った。




