↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/102

52.蜂型魔導式自動機械『ランチャー・ホーネットVer.1.5』

『い、一瞬!一瞬だぁぁぁ!!光の糸が一瞬であの巨体をただの”(まき)”にしてしまったぁぁぁあ!!!あの華奢な細腕で信じられないパワー!!圧勝だああ!!!』


「——馬鹿か。あれは魔力だろ。腕の太さは関係ねえ」


 ナレーションを鼻で笑うレンの隣では、マイクを握りしめたガンドルが声を震わせている。


「や、や、やるじゃないか……いやしかし!まだまだじゃあっ!!」


「真横でうるせえな、ジジィ」


 しかめっ面で毒づく褐色のエルフを無視して、ガンドルがマイクに向かってまくし立てる。


「次は吾輩のとっておき......その名も『ランチャー・ホーネットVer.1.5』!!こ奴等のボディは土や木や鉄ではないぞ!なんとミスリルじゃあ!しかもただのミスリルゴーレムでもないぞぉ!!自動機械と魔導人形の掛け合わせじゃああああ!!!しかもしかもぉ、ゴーレムなのに飛行型じゃあああほげええ!!?」」


「だから耳元でうるっせえんだよ!」


 ドワーフの後頭部をエルフの手刀が直撃。とんがり帽子が宙を舞う。



     Ψ


「あ、お兄さんとおじいちゃんがまたコントやってるー」


「ローズ前見て、前!始まるよ!」


 貴賓席に向かって目を凝らすローズの腕をリリィが慌てたように揺さぶる。


 すでに開始のゴングは鳴り終わったところだ。


 彼女たちの前方には、九つの影。

 白色の金属光沢を放つ、体長一メートル程のスズメバチ型の自動機械式魔導人形。

 全てがミスリル製の薄い羽根を高速にはばたかせて滞空している。


「凄い。ゴーレムなのに、空飛んでんじゃん」


「しかも九体もいるよ!」


「それにあのお尻の先っぽについてるのは、針……じゃなくて銃身だね」


「ローズ、来る!」


 リリィの短い警告と同時に、九体のハチ型ゴーレムが一斉にその銃口を二人の少女に向ける。


 ズドドドドドド——ッ!!!


 同時に銃弾を放つ。


「おっと」

「ひゃっ」


 二人の少女は同時にリンクを蹴って跳躍。

 九体の飛行兵器から放たれた銃弾が石畳に着弾すると、一つ一つが炸裂して石片がはじけ飛ぶ。


「——さ、炸裂弾!?」


「……物騒な威力だね」


 リリィが悲鳴じみた声をあげ、さすがのローズも粉砕された石畳に目を見張る。


「……でも、羽虫型なんてあたし達の敵じゃないよ!なぜならあたしは」


 着地と同時に再び跳躍し、ハチ型兵器が再びその銃口の照準を調整するより先にローズは素早く呪文を詠唱する。


「《突風ウインドブラスト》!」


 瞬時にローズの両の掌から爆風が巻き起こり、ゴーレムたちを襲う。


「……からのぉ!——《旋風ホワールウインド》!!」


 先ほどの突風が収まらぬうちに、ダメ押しの一撃。

 荒れ狂うつむじ風がハチ型兵器を一体残らず包み込む。


「——なぜならあたしは〈星芒騎士団スターナイツ〉の麗しき『風使い』ローズちゃんだからね!羽虫型モンスターなんて楽勝だよ」


「ローズ、『風使い』は風の精霊使いにだけ許された称号(タイトル)でしょ」


「気持ちは精霊使い」


「気持ちだけで名乗っちゃダメなやつ」


「ノリが悪いわねえ、リリィ。いいじゃん、ちょっと自称するくらい——っと!!」


 ズドドドドドッ——!!


 少女たちの他愛もない会話を妨害して、炸裂音が鳴り響く。

 紙一重で(かわ)したリリィのブレストプレートを、石片が掠める。


 暴風が止んだそこには、先ほどと変わらず薄い羽根を羽ばたかせて滞空している九体のハチ型兵器。


『おおおっとぉ!?あの凄まじい風魔法が全く効いていないのかぁぁあ??』


『グワハハハハッ!!甘いぞお嬢ちゃんたち!このサイズの飛行型の弱点が“風”であることなど百も承知!風魔法対策を施してあるんじゃよ』


 驚くナレーターの声と、得意げなドワーフの声。


「また魔法障壁?うそ、見えなかった……」


「違うリリィ。あれは結界じゃない。たぶん、アンチマジックだよ。風魔法にだけ反応して自分の周りだけ魔力を“キャンセル”したんだ」


 戸惑うリリィとは対照的に、ローズは動じた様子がない。


『ぐふふ。どうじゃ、耐風の護符(タリスマン)と炸裂弾を搭載したミスリル製の飛行型ゴーレム!しかも自動機械の制御で魔導人形より複雑な動作を可能とした優れものじゃ。まさに死角なし!ぐふふふふ、ぐへへへへ、ぐえっへっへっへ——ぶへっつ!?』


『……笑い方が気持ち悪りいんだよ』


 すでに聞きなれたドワーフの呻きと、マイクが微かに拾ったエルフの悪態。そして鈍い音。


『なああんとぉぉ、風魔法も効かない上に触れると爆発する炸裂弾!!もはや反則だあ!我らが麗しき挑戦者たちも万事休すかぁあ!??』


「……風魔法をレジストしたくらいで舐めてもらっちゃ困るよ。そもそもあたし、あんまり精霊魔法は得意じゃないし」


「さっき自分で『風使い』って言ってたクセにー……」


 ナレーションに不満げに口を尖らすローズと苦笑するリリィ。


 ズドドドドドッ——!!!


「「!」」


 そこへ九体の飛行型魔導式自動機械が集中砲火を浴びせる。

 轟音とともに、二人の少女の華奢な身体が瞬く間に爆煙に包まれ、影さえも見えなくなる。


『うわああああ!!なんと無慈悲な一斉攻撃だぁ!!凄まじい煙で何も見えないが、さすがにこれは脱落かぁ!!?……というかこれ全部、護符の効果で防げるのでしょうかぁ!?防げなかったら大惨事だぞぉ!??』


『大丈夫に決まっとろうが、失敬なっ!『不殺の契り』の結界持続時間はおよそ一分間じゃ。吾輩の魔導式自動機械人形(マシンゴーレム)はどれも結界の発動を瞬時に感知して確実に〇・一秒以内に攻撃を停止できるわ!』


 半ギレと自慢の入り混じったドワーフの解説が場内に響く。



『——しかしこれで勝負は決まったかのう?』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。