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28.奈落蚯蚓の最期

 アリス・ジル・ローズ・リリィの四人が、アビスワームの巨大な頭部から繰り出される凶悪な攻撃を躱しつつ、斬撃や魔法攻撃を加えていく。


 隊商の用心棒や商人たちもギリギリのところで身の安全を確保しつつ、砂地で蠢く巨大な胴体部分に片っ端から武器を振り下ろし続けている。


「商人の皆さん、なかなかやるわね」


 アリスの横でローズが呟いた。アリスも無言で頷く。


 彼らの視線の先では、隊商の用心棒と商人たちがヒットアンドアウェイのスタイルで猛攻を続けている。

 軍人の統率の取れたそれではないが、決して無理をせず、自分の身を守りながらも、隙あらば怪物の胴体に得物を突き立てていく。


 明らかに自分たちの力量と役割を弁えた動きだ。


「アリス、ローズ、余所見するな!後ろだ」


 横からジルが叫ぶ声がする。


 振り返ると、いつの間にか砂の下を高速移動した魔物の頭部が、音もなくアリスとローズの真後ろに出現していた。


 目のない巨大なミミズの頭のような形が、なんとも悍ましい。


 そしてその醜怪な頭部にピシッと亀裂が入り、今まさにまた三つに分かれようとしている。


「ダメよ!」


 瞬時に馬の背を蹴って、ローズは跳躍した。

 中空で鮮やかに身を翻すと、右手に持った武器を振るう。


 まるで舞いを踊るような華麗な動作だった。


 次の瞬間、ローズの右手から伸びた細く長い、紐状の輝く物体がアビスワームの頭部に高速で巻き付いたかと思うと、開きかけた口を縛り上げて強引にまた閉じさせる。


「えい!」


 一呼吸の間をおいて、ローズと同じく馬上から跳ぶと、リリィはアビスワームの頭部の正面で小さな身を捻って優雅に回転。

 その遠心力を利用して両手に持った板状の輝く何かを瞬時に連続で叩き込んだ。


 雷光が閃くような、目にも止まらぬ疾さだ。


 光の紐の拘束を怪力で逃れようとしていた怪物の頭部から、緑色の体液が噴き出す。


 怪物の動きが一瞬止まる。


「エイリーク!」


「——分かっていますよ!」


 アリスの叫びに、遠くからエイリークが応じる声がした。


 ——ズドンッ!!


 次の瞬間、眩い烈光が、輝く紐に拘束されているアビスワームの巨大な頭部の、その中心を射抜いた。


 人間で言えば眉間と思しき部位に巨大な穴が穿たれる。


 ブシュウウウウウウウウウウアアアアアアッ――!!!


 開けない口から断末魔の呻きが漏れ出す。


 その後数秒、時間が止まったかのようにその巨大な魔物の動きが止まった。


 やがてゆらりと揺らめいたかと思うと、擡げられた頭部がゆっくりと崩れていく。


「相変わらず、大砲にも負けない威力ね」


 ローズが右手をブンと一振りして、怪物の頭部に巻き付いていた武器を回収すると、アリスを振り返って笑った。


「今だ、かかれぇ!」


 用心棒の長が叫ぶと、用心棒たち、隊商の戦士たちが倒れたアビスワームにダメ押しの総攻撃を仕掛ける。


「トドメは……彼らに任せて大丈夫だな」


 いつの間にかアリスの隣に来ていたジルが、額の汗を拭って言う。


「そうですね」


 アリスが苦笑して頷いた。


「……骨も残らなさそうね」


「そもそもあの魔物に骨ってあるのかな?」


 ローズの感想に、リリィが素朴な疑問で返した。


「おおーい!」


 そのとき、巨体に群がる『砂漠渡り』の商人達の勢いに若干引き気味なアリス達のもとへ、遠くから馬で駆けてくる姿があった。


お読みいただきありがとうございました!

どんなファンタジーでも、大抵、砂漠の魔物って手強いですよね。


もしよろしければ正直な評価や感想、ブクマなどいただけるととても嬉しいです。

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