歓迎
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高い塀には有刺鉄線が張られている。あちこちの窓には鉄の格子が張っている。どうやら鑑別所とは少々勝手が違う様だ。
着いた途端に荷物は取り上げられ、髪も坊主とはいかないまでも短く刈り込まれた。地味な青のジャージに着替え丸半日掛けて教官の話を聞く。
身体検査をしながら気付いた事は、此処では規則が全てと云う事。教官の話は少しくどい様にも思えたけど心を空にさえすりゃどうって事は無い。二十四時間見られてるって事は慣れれば見られて無いのと同じって事。その時の気分次第で監視したりしなかったりする学校や家よりははっきりしている分余程マシだ。
一週間独房で過ごしてから本格的な少年院の暮らしが始まる。
教官は腰に吊した鍵をチャリチャリ鳴らせまるで政治家の隠し金庫のそれみたいな大きな錠を開け建物の中へと僕を案内する。日の光の差し込む明るい廊下を抜け、幾つもの扉の奥から二番目の部屋へ。どうやら此処で僕の四年間の共同生活が始まる事になりそうだ。
教官が扉をノックしてから開け、中に居る人達に僕を紹介する。僕が部屋を見渡すと意外に整頓された部屋の中で談笑をしていた幾人かが僕を見た。掃除の行き届いた家族的な雰囲気に驚きながら僕はペコリと頭を下げた。教官が仲良くする様にと言い残し部屋を去る。
と、途端に空気が変わるのを感じた。緊張が部屋に充満した。僕は直感でまずいな、と思った。四年間はかなり長くなりそうだと考え始めていた。
「ねえ、君若いね」
「こんな所まで何しに来たの」
「まさか更正しになんてじゃねえよな」
「何か喋れよ、無視してんじゃ無いぜ」
柔らかな口調にビリビリとささくれる。これじゃ塀の上の鉄条網よりタチが悪い。
「あれ、僕達話してるだけなんだけどなあ」
いつの間にか回り込んだ後ろから背をぐっと部屋の中央まで押される。
「ねえ、君何して此処来たの。言って御覧よ」
嘲りと好奇の目の群れが顔を覗き込む。
「ビビッとんのか、何か喋れや」
うわ、関西弁初めて聞いたよ。何かまずいな……。
「……別に」
「お前生意気やな」
「そんなつもり無いです」
気を抜くと口調が尖りそうになる。顔の壁が周りを囲み拳が固くなる。
“面倒臭いな、二、三発殴られて終わりになんないかな。”
同時に誰かが吹き出す。軽薄な笑い声が緊張を取り払う。
「別に何もしやしねえよ、只のゲームさ。此処にはロクな遊びが無いからねえ。そんな目で皆を見るなよ、ミズキクン」
「こんなとこ、早う出たいからなあ」
……タチ悪い悪戯だ。呆気に取られ立ち竦む。中々此処には馴染めそうにない。
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