三十
『ザ・セツメカーイ』です。
「これからとっても大事な話をしまーす」
全然そんな風に聞こえないのは、俺の頭がおかしいのが原因というわけではないはずだ。
俺はそんなことを考えながら、満面の笑みを浮かべながら右手を挙げて跳ねるビーを見た。
「何について話すんだ?」
胡坐を掻いて座る壱乃樹がビーに質問した。
「えっとー、なんだっけ?」
「なんとかなんばーについてじゃなかったか?」
首を傾げるビーを弐騎継がフォローする。
「あ、そう! オリジナルナンバー00X!」
「おりじなるなんばーぜろぜろえっくすぅ?」
「そう、00X」
弐騎継の合いの手のおかげでビーの話が滑らかに進んでいく気がする。基本ビーも弐騎継も話が飛ぶからな。どうしようもない時以外はビーのことは弐騎継に任せておこう。
「サイボーグか何かか?」
「現時点のオリジナルナンバーでサイボーグは弐だけですよ?」
「なんだ残念」
しかし壱乃樹のせいで話が進まない……!
「オリジナルナンバーって言うのは、『壱』、『弐』、『参』を名前または名字に冠する人間と、『零』と呼ばれる、本計画の要となる人間を指します」
ビーは俺が用意したホワイトボードと赤と黒の水性ペンを使って説明していく。字はローブで擦って消している。
それを見て壱乃樹が首を傾げた。
「『壱』とか『弐』は俺達三人の事だってわかるけど、『零』ってなんだ?」
「あれ? て言うか、『壱』は生きてたんですか? 死んだって報告されてますよ?」
「誰からだよ」
「おっとそれは言えません」
「そうか」
弐騎継が矛盾点を指摘するも、ビー取り合ってくれなかった。
都合の悪いことは教えてくれないのだろうか。
そう言う思いも込めて、質問してみる。
「計画って言うのは何だ?」
「帝なしで日本を立て直す計画です」
「……帝?」
初耳だな、帝なんて……。
「帝って言うのは、日本帝国を治める人物のことで、戦前のぶっ潰れる前のオリジンに住んでたんだ。今はどうか知らないけどな」
「オリジンって何だ?」
「オリジンってのは、近畿地方にある、じゃないか。あった、高い壁に囲まれたいわゆる理想都市だ。帝都オリジンて言われてたと思うぞ。俺も社会科見学で一度行っただけだけど、オリジンに行くには地下鉄に乗っていくしか方法がないんだ。多少不便な事もあるかもしれないけど、空気は綺麗だし、街並みも綺麗だし、いいとこだったぞ。帝様の邸宅周辺は近づけなかったから知らないけどな」
「やけに詳しいな、壱乃樹……」
「常識じゃないか?」
そう言えば、壱乃樹は住んでた世界が違かった。
「だけど、今の近畿は戦争の発端となった場所で日本中から目の敵にされてるよー」
「そうなんだよな。俺と被は一回近畿に行ったんだけど、ありゃもう、恨みつらみが飽和状態だったな。気が狂うかと思った」
「そんなにだったか?」
「被にゃわからない苦しみだよ」
「そうか」
「そうそう」
壱乃樹はアホ毛をひょこひょこ動かしながら、興味無さげな弐乃継の相槌にもっともらしく頷いて見せた。
弐騎継も壱乃樹のアホ毛を見ながら納得した風に頷いていた。
「結局、近畿に帝が居たってことでいいのか?」
「まあ、そういうことですねー。帝は今、何処行るのかは分からないけど、邪魔なので見つけ次第殺すつもりです」
「殺すのですか? どうして?」
「計画の実行に邪魔だからです」
「邪魔と言うだけで殺すのですか?」
「それが組織のやり方だからね」
「……納得いかないです」
「私は割り切ってるよ。どうせ私は組織の道具でしかないからね」
ぎゅ、とキョウコが俺の和服の袖を掴む。見ると、不満気な顔で俯いていた。
「…………」
やれやれ、と言った感じだ。どうもキョウコを甘やかしすぎたかなと思いつつ、俺はキョウコの頭を軽く撫でてやった。袖を掴む力が強くなった。
「そういや、どうして戦争が始まったんだ?」
壱乃樹が手を挙げながらそう言った。
それを見て、ビーが胸を張って答える。
「旧オリジンの機能が停止したためです!」
「機能が停止? 機能って何だよ」
ビーは主張するだけの胸があるようだ、などと考えていると、キョウコに軽く小突かれた。
「なんだ?」
「いえ、壱乃樹さんって、やっぱり異世界、って所から来たんですかね?」
「かもな。常識がずれてる感じがするし」
そんな俺達の会話を他所に、ビーは話を続ける。
「日本帝国には帝国領全土から見て中心にある帝都と、南の小さな列島を除いた日本列島の中心関東と、北九州にある第二のオリジンと言われる帝国領防衛拠点都市の三つの大都市があります」
キュッキュとホワイトボードに白地図の如く日本列島を書き込むビー。予想外の精巧さに舌を巻いてしまった。そして彼女は地図に三つの赤い丸を書きこんでいく。
「どれも、近隣地方への物資の供給と、近隣都市の不要となった資源を再利用するべく回収していました。資源の再利用は大切ですねー」
「生ゴミも回収してたのか?」
「……生ごみは色々手を加えた後家畜の餌ですね」
ビーの目が死んだ……。何か嫌な思い出でもあるのだろうか。
とりあえず、話を逸らす目的で質問してみることにした。
「なあ、どうしてオリジンは機能を停止したんだ? そのせいでこの戦争は始まっちまったんだから、今からでも機能を復旧させればいいじゃないか」
そう言うと、ビーは舌を鳴らしながら、人差し指を舌を鳴らすリズムに合わせて横に振った。
「わかってないですねー。まあ、当然と言えば当然ですけど」
「おいてめえ潰すぞ」
「わー! すいません! 私が悪ぅござんした!」
「絶対反省してないだろ!?」
しばらく騒いだ後、ビーはコホンと一つ咳払いをした。
「えー、そのことについて詳しく話すには、オリジナルナンバー零についてお話しなければなりません」
「零についてか? と言うかそもそも、何で俺達三人だけで日本を救えるんだ、壱乃樹」
弐騎継がふとそんなことを言った。
「……なに? 日本を救う? 俺達が? 戦争を終わらせるじゃなくてか?」
「お前、参幅霧に詳しいこと話してないのか?」
「おわー! すまん! すっかり忘れてた! ……いや、俺も黒い少年に三人集まって近畿行けば戦争終わるとしか言われてないから、詳しいことわからないけど」
……戦争が終わる?
「じゃあなんだお前、日本が救われるわけじゃないのか……?」
弐騎継が唖然とした表情で壱乃樹を見た。
俺も勢いよく立ち上がり、目を剥いて壱乃樹を怒鳴る。
「戦争が終わるってお前、それだけか!? 俺達がどうして集まる意味があるんだ!? 戦争なんていつか終わるだろ! 何か意図があるに決まってるのに、それなのにお前は何も考えずに俺達を近畿に向かわせるのか!?」
しん、と辺りが静まり返った。
「あの、いー姉さん……?」
「…………ッ! す、すまん……」
キョウコに呼びかけられて、冷静になる。
俺は慌てて座り直し、俯いた。
「あー、いや別に何も考えていないわけじゃないさ。少なくとも、この世界にはもう居ないはずの『壱(俺)』が居れば、俺達が死ぬなんて未来は少なくともないんじゃないか?」
「……いー姉さんは死ぬのですか?」
壱乃樹の言葉に、キョウコが反応した。
「このまま、何も知らないままだと全員死ぬ気がする。少なくとも、俺は近畿に居た時そう感じた」
いつもと同じ調子で紡がれる壱乃樹の言葉は、何故か心に重く圧し掛かった。
「……嫌です、死なないで下さい」
キョウコは涙を流しながら俺の胸に顔を埋めた。押さえようとしても漏れ出してくるキョウコの小さな泣き声が静寂の中に大きく響く。
俺はキョウコの肩をそっと抱きしめた。
「おい、壱乃樹」
「なんだ?」
「……俺達はどうすれば良いんだ?」
「まずは、己について詳しく知る必要があるんじゃないかな。という事で、説明よろしく」
「おー、やっと私の出番が回ってきましたか」
なんか、参幅霧の口調が原案と投稿時の本分で
原案:
タコ「んだてめぇは」
本文:
タコ「お前ナニモンだよ」
……ぐらいの差がついてたことにびっくりしました。
彼(彼女?)に何があったんでしょうかね。




