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武技憂気日本大戦  作者: 囲井 鯀
―参―
91/111

二十四

 俺がこの身体を手に入れてから早三年。北海道は晴れの日よりも雪の日の方が多いことがよくわかる三年間だった。……どうでもいいな。

 三年間でこの身体に眠る様々な記憶を手に入れることが出来た。超能力の使い方とか、肉体改造の仕方とか。いや、後者はどうでもいいか。


 一つの時代に超能力は一種類ずつ。

 単純な能力程強い能力。


 例えば俺の能力は『物を創り出す能力』だ。その名の通り、物を創る。

 無から有が創れるのであれば素晴らしいのだが、そうはいかない。核となる物質を定め、その核を中心に物を生み出すのだ。

 ……わからない? まあ、要は零から十は創れないけど、一から十なら創ることが出来るってことだ。質量保存の法則もあったもんじゃないな。

 あ? 質量保存の法則ってのは、どんなに頑張っても一と一を足して三になることは無いって意味だ。一だけじゃ十には絶対になれないってことだな。


 なんでってそりゃ、『超能力』だからだろ。キョウコだって『透視』の能力だろ? 普通じゃ有り得ないじゃないかよ。金庫の中身だって視えるんだろ? この前だって、勝手に金庫の鍵開けてたみたいだし、アレも『透視』のおかげだろ?

 ……いや、俺普通にドアの影から見てたから。

 ああはいはい、わかったって。変態でいいよ、変態で。その代わりもう金庫は勝手に開けるなよ。……って言うか、なんで中身見えるのにわざわざ金庫開けて取り出したんだ? ただの手帳だぞ?

 …………ああ、閉じた本は読めないってことか。

 つまり下心があって開けましたってことだな。

 あー、うるさいうるさい。どうせ読んでも意味わからなかったから良いけど、節度を持てよな、節度を。好きな奴が出来た時にデリカシーが無いと嫌われるぞ?


 は? 俺は好きな奴がいるかって? いるわけないだろ。いたら……どうなんだろうな。俺だっていつ死ぬかわからないし、まあ、死ぬって言うか、消えるって言うか、まあこの世からいなくなるのはほぼ確定してるからな。

 そんな悲しそうな顔するなよ。そう言う宿命なんだからさ。

 いや、そうは言われてもな……。俺だって出来ることと出来ないことがあるさ。

 うーん……寿命だと思ってくれ。その方が気が楽だろ? まあ、そうだよな。


 ん? 誰か来たみたいだな。珍しいな。キョウコ、ちょっと出てくれ。



 椅子の背もたれに体重をかけ、身体を後ろに反らしてリビングから玄関の方を見る。


「お前が参幅霧か?」


 豪雪の中、パーカーとジーパンにコートを羽織っただけの男が訪ねてきた。全身は雪で真っ白になっており、青い顔をしていた。


「いえ、私はキョウコですけど……。いー姉さんに何か用ですか?」

「キョウコ。上げてやれ」

「あ、はい! ……どうぞ」

「悪いな」


 俺は空気中の塵を核に真っ白なタオルを創り、男に投げ渡す。

 男は若干驚きつつも、右手でそれを掴み取った。

 そして、何故か笑った。


「ありがとな」

「お、おう……」


 ……笑った? 何故。普通は気持ち悪いモノを見る様な視線をぶつけてくるだろう? なんでこいつは笑ったんだ?

 俺はちらりとキョウコを見る。キョウコはそれを何かの合図と受け取ったのか、一礼してリビングから出ていった。

 一瞬、静寂が訪れる。


「俺は壱乃樹優って言うんだ。お前は参幅霧で間違いないか?」

「……ああ、間違いないな。俺は参幅霧凧だ」


 俺は壱乃樹が差し出してきた右手を眺めながら答えた。

 この手はどういう意味だろうか、と考えていると、壱乃樹は手を引っ込めた。顔を見ると何故か気まずそうな顔をしていた。


「あー、っとだ。まあなんだ、被とははぐれちまったが、三日後には合流できると思うぞ」

「被? 誰だそいつは。弐か?」

「そうそう、弐騎継被だ。いつもつまらなさそうにしてる奴」

「いや、知らねえよ」


 俺は首を回し、椅子から立ち上がる。壱乃樹は少しばかり驚いた様子だった。


「座って待っててくれ」


 俺はマグカップを二つだし、塵を核にホットココアをカップの中に創り出した。俺は右手のカップを壱乃樹に差し出し、彼が受け取るのを確認すると自分も椅子に座る。

 猫舌なのか、壱乃樹はホットココアを息で冷ましながらちょっとずつ口に含む。俺はそんな壱乃樹を観察しながら熱いココアで体を温めた。


「……凧の能力は便利だな」


 ココアをカップの半分ほど残したところで壱乃樹が言った。


「それ、やめろ」


 俺はムッとして言葉を返す。

 壱乃樹の目が点になる。


「へ?」

「下の名前で呼ぶな」

「ああ……。じゃあ、さんのきり……は言い辛いな」


 壱乃樹が微妙な顔をして困った様子を示した。俺の名前を教えたときのキョウコを全く同じやり取りをしている気になって、笑ってしまった。


「あっはは。まあ、凧じゃなければ好きに呼んでいいぞ」

「タコ」


 壱乃樹は急に真顔になった。


「即答だなおいぶっ潰すぞ」

「冗談だって。そうだな……いや、やっぱり参幅霧でいいか」


 俺がやれやれと首を横に振ると、壱乃樹は楽しそうに笑った。

 やはり、俺にはこいつが理解できなかった。

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