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武技憂気日本大戦  作者: 囲井 鯀
―参―
85/111

十九

 軍事部長が意識不明の重体となってから、急きょ彼の秘書官であった男性が臨時の軍事部長として抜擢された。名前は聞かされていない。興味ないのでどうでもいいが。

 なぜ、軍事副部長出なかったかと言うと、なんと副部長が自分よりも秘書官の方が適役だと辞退したそうなのである。欲がないというか、思いきりが悪いというか。まあ、秘書官のおかげで上手く回っているので良しとしよう。

 なぜ上から物を言う?



 そんなこんなで、私達が北九州の九州防衛軍本部に召集されてから半年が過ぎようとしていた。


「九十九、千尋。お互い、死なないようにね!」

「そうだよなー、俺って千尋とか燐火とかより死にやすそうだからなー」

「自分で言うか、普通?」

「いやいや、あえてそれっぽいことを言う事で、死亡確率を低くしようというジンクスだ」

「ジンクスじゃん。九十九死ぬよ?」

「いや、それ言ったら終わりだって……」


 私達三人は、一週間後に予想される中国・四国連合軍との戦闘のために、それぞれ関門海峡付近に適当(ここ重要)に配置されている。どれぐらい適当かと言うと、大声出しても声が聞こえない程度に一人一人離されているぐらい適当な配置具合だ。

 自分でも何を言ってるかわからないです。


「にゃー、どうしましたかにゃ、三冬さん」

「んー? ああ、うん」


 戦闘開始予想時刻まで、残り一時間。関門橋前でぼーっとしていた私に話しかけてきたのは、いつの間にか舎弟になっていた猫目未羽。舎弟と言っても、猫目が勝手に名乗っているだけで、特に意味はない。勝手に私の後ろを着いてきているので、いい加減鬱陶しくなってきたのが五か月前私の方が諦めて否定をしなくなったのだ。……認めてはいない。

 癖毛のようで、髪の毛は猫耳のようになっている。一緒に風呂に入った時も、濡れた猫みたいな髪型になってて面白かった。人を疑わないというか、思い込みが激しいため適当な事を言うとすぐに信じてしまう。その性格のせいで何度迷惑をかけられたことか……。

 まあ、面白いけど、時々鬱陶しい。

 そんな感じの少女だ。


「にゃー、元気ないですよ?」

「そりゃなくなるよ……。猫目みたいな訓令兵がこんな戦場の最前線に引っ張り出されるなんて……。世も末だよね」

「にゃあ……。ま、まあ、私は志願してここにいるんですけどにゃ!」

「そうなの?」


 なぜわざわざそんなことをするのだろう? と猫目を見ると、猫目の年頃にしては大きめな、と言っても基準はないので普通なのかもしれないが、まあなくはない胸を張って自慢そうに語り始めた。触ったら柔らかそう。


「にゃんとですね、訓令兵は志願することで軍の行う作戦に参加できるのですにゃ! 役割は捨て駒同然と言っても過言ではにゃいですけど……、でも、そのぶん生きて帰ってこられたにゃら軍からの信頼も厚くにゃるのですにゃ!」

「へー。じゃあ、猫目と一緒の配置につかされてる私や防衛軍の兵士は皆捨て駒ってこと?」

「にゃふー、多分違うと思いますにゃ」


 私が、それはどうして? と猫目に聞くと、今度は背中を丸めて肩を落としながら話し始めた。


「将校さんもにゃんにんかいるようですにゃ、多分、あの人を守るための人が半分以上いそうですにゃー」

「うーん、じゃあ、この部隊のいる意味は、敵軍の足止めと、あとは若干の戦力を削ることぐらいかな?」

「多分、そうですにゃー。訓令兵も沢山いるようですし、外れてはにゃいと思いますにゃ」


 と言われても、私には訓練兵と防衛軍の兵士の見分けがつかないが。若い顔の兵士が訓練兵と認識して間違いないだろうか?


「にゃー、多分三冬さんも捨て駒でしょうが、でっかいカタニャ持ってるので私は後ろで応援してますにゃ!」

「はいはい。……そう言えば、もしこの戦争が終わって、お互い生きてたら、その時はどうするって話だったけ?」


 あからさまな事を言ってみる。死にフラグと九十九が言っていたきがする。

 だが、やはりと言うべきか、私の話に食いついてきた猫目は興奮気味に話し始めた。さっきまで落ち込んでたのに、忙しい子だと思う。


「にゃ! 私が良いというまでぎゅーっとさせてくれるって約束ですにゃ!」

「ああ、そう言えばそうだったね」

「私が良いというまでですにゃ!」

「この戦いじゃなくて、戦争が終わったらだからね?」

「戦争にゃんてすぐ終わりますにゃ」

「……だと嬉しいんだけどね」


 一瞬、脳裏に嫌な顔が浮かぶ。あの白衣の男だ。

 事あるごとに私に接触しては、意味深な事を言ってさっさと何処かへ行ってしまう変態だ。似合っていない眼鏡が怪しさと言うか間抜けさを引き立たせているような青年だった。


「ですにゃー……」


 会話の終わりを感じさせるような呟きが、突然起こった風に運ばれて何処かへ消えていった。

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