十三
今回は息抜きの回です。
え? もちろん僕のですけど。
不知火支部長と出会ってから二週間が経った。
私は明朝から、九州防衛隊鹿児島支部の訓練場に来ている。大刀は宿泊している宿に置いてきた。どうせ盗まれることも、傷つけられることもないだろうし。
千尋の全力でも凹みもしなかったのには驚いたけど、千尋は全力ならあの大刀を蹴り上げられることがわかった。つまり私は千尋より怪力ってことだね! うわあすごい!
馬鹿力とか言っちゃいけない。
話を戻すと、私が何故九州防衛隊鹿児島支部の訓練場に来ているかの理由を話さなければだろう。誰にだろうか。
仕方ない、うん、仕方ない。
だって、筋トレしてる間って集中出来る時と出来ない時があるでしょ?
集中してるとあっという間に時間が過ぎるのに、どうして集中が切れると時間の流れが急に遅くなるかな……。飽きてきちゃうでしょ……。
ん? いやいやいや、もしかしたら、うん、もしかしたらだよ。飽きてきたから集中が途切れたんじゃないのかな?
ほら、楽しくないことに集中しようとしても、長くは集中できないでしょ? 勉強とか。千尋が日本語話してるように思えないんだよね……。九九できれば生きていけるでしょ……。筆算とか何者ですか……。
いやでもほら、無心になって剣を振ってる時は、いつの間にか日が暮れてても気が付かないよね! もうね、ご飯食べ忘れたせいで動けなくなっちゃったときは九十九に笑われたなー。千尋には凄い怒られたけど……。千尋はなんなの? 私のお母さんなの? それともお父さん? 九十九は私の兄役かな。
……………………。
笑っちゃ駄目、笑っちゃ駄目よ、燐火!
エプロン姿の千尋とか想像しちゃ駄目だから――!
「ぷはっ」
なんで似合ってるの。なんで似合ってるの……!
「く……はぁ……ん」
や、やばい、筋トレ! しゅ、集中しなければ!
「あー、やばひ……。ぅくっ! 花柄は反則……! 全然似合ってないし……!」
結局、夕方になるまで訓練場を周回し続け、それでも時々脳裏に浮かぶ千尋のエプロン姿には勝てなかったのだった。
くぅぅ……、と腹の虫が悲しく鳴く。そういえば、昼食を摂り忘れていた。ここから宿まで五分ぐらいなので我慢できるだろうと踏んで、私はサンドバッグの揺れを治めてから訓練場を後にした。
「あー、肩凝るなぁ」
こきこきと首を鳴らし、両手の指を組んで大きく伸びをする。
「んうー……。ぉぁ」
ばきばきと背骨が音を鳴らし、痛みのあまり短い間だが、動けなくなる。
それにしても、肩が凝る。
「あー、サラシもっときつく巻こうかな……。でも、あんまり胸を圧迫すると大きくなるって言うし、正直胸が大きくても動きづらいだけだしなぁ……。こんな脂肪の塊……」
いっそ斬り落とそうかな? いや、痛いのは嫌だからよしとこう。あーあ。うーあー。
重い。
意識したら余計お腹空いてきた。
この胸の脂肪が全部筋肉になれば、どれだけ動きやすいか。
……試してみようかな?
おかしいな、何故か千尋にしこたま殴られる未来が視えた気が……。新しい超能力に目覚めちゃったかな?
とりあえず、目立つ肉体改造は千尋にバレるからやめておこう。
俺はいつでも男女平等だー、とか、洒落になんないからね。
私が九十九だったら死んでた。
「あーあ、なんか今日一日筋トレしかしてなかった気がするなー」
ぼそりと呟く。
まあ、気がするでもなんでもなく、事実今日は筋トレしかしてなかった。
実際言っちゃうと、この二週間筋トレしかしてなかった。
おかしいな、五年前はもっと女の子らしかったはず……。
「う、『女の子』という言葉に違和感しか感じない……」
大丈夫、性格はともかく体型は凄い女の子だから! もうね、スタイル抜群だから! 自身持っていいからね、私!
「…………う」
あれ? おかしいな、今日は晴れてたはずなのに……。
夕立かな……?
胸が脂肪の塊とか言ってると、千夜に睨まれます。
谷と崖か……。




