十
やっと十話です!
なかなか筆が進まなかった……。
適当な飲食店(レストランと言うらしい)で、適当に注文したハンバーグをもぐもぐと食べていると、九十九に用があると軍服の男がやってきた。
支部長からの伝言のようだ。
「ちょっと待っててくれ」
九十九が言うと、
「俺の腹が待ってくれると思うなよ?」
「おいやめろそれは俺の肉だ」
「いいから早く行ってあげなよ……」
食い意地張ってないでさ……。
え? 私は二人の三倍は食べてる?
たくさん食べないと体が持たないから仕方がないのです!
「あの、一行さん……?」
軍服の男はがつがつとステーキを食べ始めた九十九に驚き、呆然として声を掛ける。
「まあ待て」
九十九はそれを片手で制した。
しばらくステーキのみを食べた後、キャベツを五玉程食べた九十九は紙ナプキンで口元を拭うと、襟を正して軍服の男の方を向いた。
「……で、何の用だ?」
「いえ、だから支部長から伝言が……」
「ああ、そうだったな。おいお前ら、行くぞ」
「いや、一行さんだけで良いと……」
「こういうのは、全員で行った方が一々伝える手間も省けるだろ」
「は、はあ……」
「待てよ九十九。鬼は新鮮な野菜より新鮮な肉を好んで食べるんだぜ。特に人肉」
「共食いしてろ」
「私はもう食べ終わったよ」
「……いや、俺は何も見ていないからな」
別に皿が積み上がってるだけじゃん。
別におかしいことではない。
「と、とりあえず! その支部長さんに会いに行くんでしょ! 早くしないと!」
「話反らした」
「うるさい!」
私は勢いよく立ち上がる。大刀は店先に置いてあり、と言うか刺してあり、人々の注目を集めている。
注目を集めている、と言えば私たちの姿も注目を集めるものである。亜人が三人も集まって大声で叫んでいるのだ、目立ちもするだろう。しかし、その視線は不思議と嫌なものではなかった。
こちらの実力を見定める様な、挑戦的で好戦的な視線。
居心地が悪いことには変わりないのだが、数年前に味わったあの見下すような、屈辱的な視線とは程遠いものだった。
だからだろうか。
少しだけ、嬉しかった。
認められた気がした。
「じゃ、俺会計行ってくるから」
「……お金あったの?」
私は不思議に思って千尋の方を見る。
すると、巾着からお札を数枚出して千尋は苦笑した。
「一文無しは燐火だけだと思うけどな」
「…………?」
じゃあ、どうしてお金を借りたのだろうか。いや、愚問かな。あんな金額、ぽんと出せるほどのお金は持っていない、という事か。
と言うより、海に沈んだときによく濡れなかったと思う。
乾かしたのだろうか?
「ここが、本日二度目の九州防衛軍鹿児島支部になります」
「何言ってんだ燐火」
「どうせまたここで待たされるんでしょ?」
わかりきってるんですよそんなこと、と地面に大刀を突き刺す。
すると、千尋が口を開いた。
「話聞いてたのか?」
「いいえ全く」
「……おい」
しばらく見ない間に陰湿だった景色が見違えるほど活気づいていたので、意識があっちに行ったりこっちに行ったりしてましたよはい。正直、九十九の話を聞く余裕なんてなかった。
「はあ……。思った通りだよ……」
「ふふん、三倍チョコバナナパフェ食べたいかな!」
「はいはい、とりあえず支部長と会いに行くぞ」
「えー、お金頂戴よー、一人で行くからー」
「成果上げたら考えてやらんでもない」
「やたっ! 約束だよ、千尋!」
「そんなことより行くぞオラ」
「ははは、支部長の前では恥晒すなよな」
ずるずると千尋に引きずられながら、私は九十九に釘を刺された。
「ほあー……」
建物の中は驚くほど真っ白で、清潔感が漂っていた。思わず情けない声が出てしまう。
「……ね、ねえ九十九」
「いや、トイレの場所とか知らねーから」
「そうじゃないから!」
確かに緊張はしてるけど、そこまでではない。
て言うか、緊張するとトイレ行きたくなるのってどういうことだろうか。
迷信?
「科学的に証明されてるから」
「あ、また漏れてた?」
「口に出してる」
いけないいけない、っと。
「話戻るけどさ、抜け毛とか、ねえ?」
「心配いらねえんじゃねえの? 自動掃除ロボットのナントカがいつでも掃除してくれるらしいし」
「……どうしよう、屋久島と九州本島の間で壮絶なカルチャーショックが……。て言うか、日本大丈夫なの?」
私は頭を押さえながら九十九と千尋を見る。
「さてね、大丈夫じゃないから、俺達みたいなのが生まれるんだろ」
「戦争なんて起こる筈もないしな」




