表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武技憂気日本大戦  作者: 囲井 鯀
―弐―
60/111

五十五

「ぐぅうっ!」


 秀吉は攻撃を反射された反動で後ろに吹っ飛ぶ。天井を突き破り、秀吉はオレの視界から消えた。


「……流石は最後の不知火よ。まさか、『にんぽーは一人一つ』という血の約束すら破るとはな」

「ああ、そういやあいつもそんなこと言ってたな」


 オレは立ち上がり、頭上から聞こえる秀吉の声に応じる。

 確かに、不知火まことは『にんぽーは一人一つ』と言っていた。何故かと聞けば、そう言うものだからと言われたが、秀吉の言葉で大体把握できた。

 滅び行く不知火の最後の希望を恐らくあの小さな少女に託したのだろう。『呪われた小さな女神』と言われた彼女たちにいつ、どこでであったのかはオレは知らないが、何処かで知り合っていたが故に、何処かで知ったが故に、彼女に『不知火』の全てを託したのだろう。

 そうするしか、彼らには未来へ『不知火』の人々が生きた証を残すことが出来なかったのだから。


「今日は不知火の名に免じてお前の勝ちという事にしておいてやろう」


 疲れた声で秀吉は言う。そして、苦笑交じりに言葉を続けた。


「俺の右足も折られてしまったことだしな」

「そうだな。オレの勝ちだ」


 オレは踵を返し、秀吉から離れ壱乃樹達がいるであろう廊下の先へ向かって走り去った。


「また会おう……」


 後ろから聞こえた秀吉の低い声はしばらくオレの頭の中で反響し続けた。




「壱乃樹!」

「悪い! 足止めくらってた!」


 表情からして、どうにか倒してきたところらしい。右手にはオレの刀を二本とも持っていた。


「ほら、お前のだ」

「悪い」

「いや、いいって。それよりも、面白いものを武器庫で発見してだな! それを使って北海道へ行けるぞ!」


 壱乃樹は嬉しそうに身振り手振りを交えながら話した。


「おお! じゃあ、早速上へ行くか?」

「ああ! 行こうか!」


 言うが早いが壱乃樹は階段を駆け上がる。その背中に常夏月がうとうとしながらへばりついているのを見つけた。オレはその子供らしい寝顔に苦笑しながら、壱乃樹に倣って階段を駆け上がった。


「……常夏月も、こうしていれば可愛いのにな」

「まあな。九も所詮は子供だし、そもそもこんなくだらない戦争なんて、あっちゃならないんだ」

「くだらない、ね」

「ああ。くだらない」


 壱乃樹は厳しい表情で前を睨みながら廊下を走っていた。

 しばらく無言の時間が生まれた。


「……オリジン、って知ってるか?」

「オリジン……。たしか、日本帝国の首都だったよな?」

「ああ。九年ほど前に滅んだがな」

「……戦争が始まったのは七年前だろう?」


 どうして二年も誤差が生じているのだろう?


「ああ。七年前ごろから戦争と言うより、争いが各地域で目立ってきたんだ。だが、それより二年ほど前にはもうオリジンの機能は停止していた」

「どうして二年もの誤差が生まれたんだ? 普通、首都がぶっ潰れたら国は終わるだろうし、覇権争いも直後に起きるものじゃないのか?」


 詳しいことはあやふやなのだが、日本帝国はこの地球と言う星の上では五本の指に入る程の力を持った国だと言うではないか。どこかの馬鹿が世界征服を企んでもおかしくないはずだ。


「そうなんだがな、不思議なことにそれが起こらなかったんだ。いや、案外不思議じゃないのかもな」

「どうしてだ?」

「首都オリジンは日本帝国のほぼ中心と言ってもいい場所にあったんだ。まあ、言ってしまえばこの近畿全体が首都オリジンだった」

「ここが? それにしては、壁の上から見た景色は汚かった覚えがあるが」

「もともと、歪のような形でオリジンにはスラム街が転々としていたからな。あの景色は、その歪から染み出たオリジンの『負』の側面がオリジン内に蔓延した結果だ。つまり、あの壁はそう言った危ないモノを日本帝国に充満させないための働きもしているってわけだ。此処の奴らが安易に他へ攻めることが出来ない理由にもなっているな。この壁には入口も出口もないらしいしな」

「ないって、どういうことだよ。此処の人間は、つまり檻の中ってことなのか?」

「……そういうことになるのかもな」


 壱乃樹がそう呟いたところで、オレ達は屋上へと出た。


「随分とまあ、複雑な建物だったな」

「まあ、ここに侵入者を入れるみたいだからな。そんなところに入った間抜けは俺達だけみたいだけどな」

「まったくだ」


 オレは肩を竦めながら笑う。たしかに、こんな間抜けはオレ達ぐらいだろう。

 空から降ってきたわけだし。

 病人のようなパンダと、体に色んな物を仕込みたがる変態。間抜けな二人組だ。と言うか、何故空から降りてくる。


「――ほら。グライダーだ」


 壱乃樹はパーカーの下から自分の二、三倍はありそうな大きさの青い紙飛行機のような巨大なものを取り出してみせた。


「ふーん、それがグライダー……。ところでどうやって使うんだ? いや、その前にお前はこれを何処から出した?」

「んー、見てなかったか? もう一個あるから、っと。ほら」


 パーカーの下から同じ青いナニカを取り出した。

 形も大きさも先ほどの『グライダー』と同じものであった。


「お前の服の下はどうなてるんだよ!」

「あはは、プライバシーに関わる話だよ」


 プライバシーってなんだよ。また改革に関わる新しい要素か?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ