四十四
メイドの方に案内されて、店の奥の部屋に来た。ふんわりといい匂いがする。懐かしい匂いだった。
「……久し振りだね」
メイドの方が、ベッドのシーツを整えながらそう言った。
「……そうだな、久し振りだ」
何年振りだろうか。おそらく、実に四年は会っていなかったと思う。
「雀は何も変わってないな」
その言葉に怒ったように、雀は勢いよく振り返る。膨れっ面に笑ってしまいそうだった。
本当に、変わっていない。
「なにそれ、私が成長してないって意味!? こう見えても成長したんだからね! 胸とか!」
「……背は伸びてないんだな」
胸も服で誤魔化している程度だろうし。
「うるさい! 背はこれから伸びるの!」
「そうか、良かったな」
「嫌味がむかつく~!」
店の受付に居た時とは大違いで、喜怒哀楽の表情がコロコロと入れ替わる。見ていてとても疲れるが、慣れれば楽しいものだ。
「それはそうと、ニノって凄い変わったよね」
「ん、四年間色々あったしな」
「外見はわかるけど、性格も変わっちゃっててびっくりした。あんな楽しそうに喋れたんだね」
外見はわかるって……。わかるのか?
まあ、性格が変わったのはおそらく千夜から離れて自立した影響だろう。昨日、生まれただのどうだのとぐだぐだ考えていた覚えがあるが、それになぞらえて言うのであれば三度目のオレの誕生が、千夜離れと同義なのだろう。
「挙動不審なのは変わってなかったけどね」
「……雀は本当に、一言余分だよな。それを胸の脂肪に回したらどうだ」
「うるさい!」
「千夜は余分なところがなさすぎるけどな」
「あ、それは言えてる。胸とかそうだよね」
くつくつと雀が笑う。
本当に余計な一言がなければ、完璧、とは言わないが、千夜よりもいい女になっていたのかもしれない。流石は不人雀だ。
「そう言えば、猫の人と知り合いだったんだ?」
「うん? ああ、昨日会ったけど、向こうはオレを探してたみたいだ」
「……あー、そう言えば何年か前にそんなこと言ってたなー。小さなことだと思ってたやー。あはは」
「……あいつとはいつから知り合いなんだ?」
「まま、そんなことより席に座ってよ。立ち話もあれだし」
いや、結構オレの中では重要事項だぞ? そう考えつつも勉強机の前にある回転椅子に座る。勉強机の上には『会計』とだけ書かれたノートが置いてあった。
「猫の人といつから知り合いかって話だったよね?」
「そうだな」
「んっとね、ここに来てすぐだよ。だから、三年前。それがどうかしたの?」
「ん、まあな」
三年前か。化け猫の噂が立ち始めたのは五年ほど前だったと言うし、まあ、関係ないだろう。と言うか、よく考えたら雀が三年前にここに来る予定であったというのは知らされていたではないか。うっかり忘れていた。
「千夜ちゃん元気?」
っ!?
「ち、千夜か?」
「うん、猫の人って割とどこにでも現れるから、会ったのも最近だし、ね?」
「ああ、そう」
たぶん、雀は『最近ここに来たんでしょ?』と言いたいのだろう。難しい話し方をする。
て言うか、一言足らない。何故。
「千夜ちゃんと喧嘩でもしたの?」
「ぅ!? ……いや、そういうわけではないんだがな……?」
今会ったら殺されかけない。
「うーん、じゃあどうしてそんなに後ろめたそうな表情してるの?」
「あ、あはははは……」
渇いた笑い声をあげるしかできなかった……。
「目、逸らさないで?」
「それはちょっと――」
「ね?」
「はい……」
そう言えばの補足。
この時代、と言うかこの世界の気候は現在大変なことになっています。
そりゃあもう、沖縄は南国地帯になっていたり、北海道では一年中雪が降っていたり。
何故か四国にも雪が降ったりするほどです。
台風は滅多に来ませんね。地震もめっきりです。時々ではありますが、火山活動も激しくなりますが、まあ、それは今まで通りのことです。
まあ、しょあくのこんげんをなんとかすればどうにかなると思いますよ? 一応、設定上ラスボスがあそこに居られると日本にとって迷惑なので。




