四十二
一悶着あった後なので、二人と顔が合わせづらい。特に、メイド服の方と。
「で、猫。何の用だい?」
「ああ、はいはい……。っと、武器を造ってほしいんだけど、これ、造れるか?」
壱乃樹に至ってはさっきの出来事は無かったこととしてとらえているらしい。なんて都合の良いやつだろうか。
壱乃樹の挑発的な一言に赤髪の女性は目を輝かす。
「自分の発言を悔むことになるけど、いいんだね?」
「うぐっ……」
「料金は、そうだね……」
赤髪の女性は手を顎に当て、考える素振りを見せる。
「いつもならパッと出て来るのに……。猫の人は一体どんな注文したんだろうね?」
「……うん?」
メイド服の方が話しかけてきたらしい。
「時間掛かりそうだし、少しお茶しない?」
「ん、いや、オレも注文と言うか、なんと言うか……」
「そ。じゃあ、待ってるから」
「そうか」
こっちもこっちで気にしていないらしい。オレ一人だけ気にしていたようで、少し気恥ずかしくなってきた。
「皿洗いとか、水仕事は無理ですよ。俺ら、もうすぐここを出るんで」
「そうなのか? ちっ、使えない猫だ」
「長靴を履けばいいんじゃないか?」
「被はいきなり何を言ってるんだよ!?」
でもすごくはないだろうか? 長靴を履いた猫。壱乃樹だって化けても猫なのだし、いけると思うのだが……。
「却下だ却下!」
「えー、好きなんだけどな、長靴を履いた猫……」
ぽんと赤髪の女性が手を叩く。
「――よしじゃあ、でっかい魚を十匹と薪を三キロで勘弁してやるよ」
「魚って部分に悪意を感じる!」
「パンダは何の用だ?」
「パン――」
一瞬眩暈がした。そんなに隈が酷いのだろうかと一瞬考えたが、多分これは違う。きっと、この可笑しな髪色のせいだろう。
そう、あれは三年ほど前のこと……。
『うんうん、可愛い可愛い。絶対いけるって!』
『いや、何処が?』
『うーん、垂れ目の辺りとか最高じゃない?』
『そうかよ』
そして、忍術だか何だかで部分的に黒髪の部分を残し、他は白髪にされてしまったのだ。どうやったのか全く分からないが、変な伸ばし方をすると垂れた獣耳のような髪型になってしまう。仕方がないので、パンダな髪型にしているのだが、しかし、やはり何かがおかしい気がする。
忍術ってそんなに何でも出来たのか? ちょっと尊敬してしまう。
「そう、パンダ。垂れ目でその髪型、パンダだろ」
「いや、そりゃわかってますけどね……」
仕方ないでしょ、不知火が……。いや、言い訳だな。
「えっと、刀、っとか、手入れの仕方、とかを少し……」
「うん? 刀の手入れの仕方だな?」
え、違う。
「刀が一本欲しくて、で、刀の手入れの仕方も教えてくれたら嬉しいな、なんて……」
「なんだ、最初からそう言えばいいものを」
涙出そう……。
12月21日 一部改稿




