四十一
壱乃樹に連れられ、何の変哲もない通りを歩く。歩いて三十分は掛かるらしいので、その間に話をしながら向かった。
壱、弐、参の数字がこの世界には存在するらしい。それぞれ、『生きること』、『学ぶこと』、『創ること』を重んじて作られたらしい。
壱乃樹は生きること。
弐騎継は学ぶこと。
参幅霧は創ること。
この三人が揃うことで、世界が変わるそうだ。そのため、壱と参は日本の両端に配置させられるらしい。壱と参だけでも不完全だが、世界は変えられるらしい。それには何らかのあくしょんとやらを起こさなければならないらしいが。
「弐は?」
「別に弐はどうでもいいらしい。必要には必要だが、なくても良いらしい。時計でいう、秒針だな」
「壱と参は時針と分針、ってとこか?」
「分針と、時針だ」
弐はどうでもいいらしい。別に弐はどうでもいいらしい。
まあ、オレ一人じゃなにもできなかったから、認めるけど……。扱いが違いすぎやしないだろうか?
「――っと、ここだ、ここ」
壱乃樹は古びた家の前で立ち止まる。隣の家とさして変わらない風貌だ。全く見分けがつかないが、中から僅か熱気を感じる。
壱乃樹が先にどうぞと言う風に一歩下がる。
「入るぞ」
そう言って、オレはドアノブを回す。鍵はかかっていないようだった。そのままドアノブを押すと、軋んだ音を上げながら扉が開く。
暖かい空気と柔らかな光が中から漏れ出してくるようだった。
「へいらっしゃい!」
凛とした女性の声が響く。
「いらっしゃいませー」
和やかな女性の声が聞こえてくる。
見ると、脂で汚れ、端々が焦げ付いたつなぎを着、長い赤毛を後ろで縛った背の高い女性と、隅々まで手入れされたような綺麗なメイド服を着こなす、茶褐色の髪を持つ背の低い女性がいた。
「間違えました」
いけない、オレとしたことが恥ずかしい。
丁寧に扉閉めようとするとなると慌てたように壱乃樹が邪魔に入る。
「間違えてないから!」
無理矢理扉が開かれる。
「いやいや、壱乃樹の趣味はよくわかったから。人間間違えることもあるって、な?」
「そうじゃないって! そうじゃないから! 違うんだ、誤解だ!」
「やましいことがあるからそんなことを言うんじゃないのか?」
無理矢理扉を閉める。
「お前は俺の保護者か! 父さんか!」
「言ってみろ、お前の好みはどっちなんだ? 右か? 左か?」
小さい方か、大きい方か(胸が)。
「オレは胸は大きい方が良いと思ってる」
「あ、それは俺も同感……、って何言わせてんだよ!?」
「別に恥ずかしがることじゃないだろ? 女なんて子供産めば皆胸デカくなるんだし」
「む……、それもそうか……」
千夜はどうかしらないけど、早苗さんを見ればまあ、将来に期待ってとこかな? 信長は知らん。




