四十
…………?
「五年?」
「ああ、五年だな。色んな事があったぞ」
「いや、五年前? 五年前だな?」
オレが十六の時、つまり、オレと千夜が四国を後にする一年ほど前、という事だろう。戦争はもうすでに七、八年は続いているが全く収束する気配を見せない。
むしろ、小規模・中規模な争いが各地で起こり、緩やかに激化への道を歩み始めているようにも思える。その中でも中国・四国連合軍と九州軍の戦いが一番大きなものだろうと思う。
なぜ、三年間もオレ達はすれ違い続けていたのだろう? くそ、まただ、何かが干渉しているような、干渉してくるような苛立ちを覚える。
一瞬、白い何かが脳裏を横切ったが、すぐに靄の中に混じっていった。
「……そう言えば、被はいつからここにいたんだ?」
「は? さっきお前に連れてこられたばっかりだぞ?」
いきなり何言ってんだ?
「…………」
「…………」
壱乃樹は一つ咳払いをする。
「このスラム街には、いつから居るんだ?」
「ああ、三年前からだ」
「……またあいつの仕業か……」
呆れ交じりに、そう呟いたのだった。
明くる日。破壊の爪痕が残るものの、スラム街の住人は全く興味を示していない。ただ、舗装が面倒だとぼやくだけなのだ。
「今日はどうするんだ? 出航か?」
「気が早いな! ……買い出しだよ」
「いってらっしゃい」
「待て待て待て! 待てぃ! 被も一緒に来るんだよ!」
倉庫に戻ろうとするオレに壱乃樹は抱きついてくる。腰の刀で一突きしてやろうか?
刀の柄に手を乗せると壱騎樹はオレから離れた。ものわかりが良い。
「まあまあ、武器とか揃えに行くだけだし、良いだろ?」
「オレは関係ないだろ」
仙流があれば問題ない。
しかし壱乃樹は諦めない。
「俺が世話になった奴でもあるんだ、会っておいて損はないだろ?」
「いや、意味がわからないから」
「腕は確かだし、業物にだって出会えるかもしれないだろ?」
「オレが浮気するわけないだろ、アホか」
「そういう話じゃない!?」
「オレには仙流があれば十分だ」
「でも、その刀、ボロボロじゃないか?」
「…………」
鬱陶しくなってきたから仕方なくついて行くことにした。
まあ、仙流以外に刀が貰えるなら嬉しいのだが、期待しないでおこう。
あと、手入れの仕方とか教わりたいし。




