三十九
師走です。大人の方が忙しい季節がやってきましたが、子供や学生だって負けない位忙しい季節です。
忙し過ぎて寝て過ごしたいです。
一度言ってみたい言葉は、
「今寝るのに忙しいから学校行きたくない……」
求む、豪雪。
人気のない小さな倉庫の中にオレ達はいる。
新月なので月明かりもなく、未だ壱乃樹の顔も確認できていないが、相手はオレの顔が良く見えるようだ。便利な目を持っている。
「俺の目的は人探しだ。そのうちの一人が被、お前だ」
オレはお前を知らないぞ。
「……お前、真っ黒な少年に会ったことはないか?」
「真っ黒で少年……?」
いや、壱乃樹だって充分黒いし、お前のことじゃないのか? いやでも、優はオレと同じ二十一歳だし、これはもう青少年とかではなく立派な成年だ。
そうなると、壱乃樹ではない、と……。
「ない、な。そもそも知らない」
有名な人なのかもしれないが、オレは自他ともに認める世間知らずだ。知らなくても不思議ではないだろう。
「そうか。となると……」
壱乃樹はぶつぶつと独り言を呟き始めてしまった。
暇なので水を呼び出し遊ぶ。掌の上で水を躍らせる。感覚だけで動きを制御しながら幾何か暗闇に慣れた目でその眺める。
それにしても、狭い倉庫だが物は少なく、むしろ寝具だけしかないといってもいい。六畳程度の硬い床に布団が二枚ほど敷かれているだけだ。
それを俺達二人で使うのだ、広いくらいだろう。しかし、今は冬だ。むしろ寒いぐらいなのだが、慣れれば問題はない程度だろう。
「まあ、詳しい話はもう一人の方を見つけたらだな」
「まだいるのか?」
まあ黒い少年なんて、その辺歩いてそうだしな。
「ああ、性別は男だと思うけど、参幅霧凧とかいうやつだ」
いや、さんのきりいかのぼり……。
「え? 何その名前?」
美味しいの? て言うか、イカって何だよ。名前かよ。
「俺もそう思う。これで女だったら本気で同情するな、俺」
「……だろうな」
「お前、何だ今の間は?」
「なんでもない」
しかし、壱乃樹は相変わらず不満そうに唸りながらこちらに視線を向けている。その目はどうにかならないのだろうか? 正直、怖いのだが……。
まあしかし、自分の名前が女っぽいという自覚はあるようだ。凧は男でも女でもないと思うが。その点、被という名は普通ではないが、まあそれ程でもない程度だろう。
「参幅霧はどこで会えるんだ? 早い方がいいし、出る準備ならすぐにでも済ませられるぞ」
「いや、参幅霧は北海道にいるらしい。出発は、まあ、早い方が良いか」
「……ほっかいどう?」
え、北の孤島で名高い北海道? 年中雪が降り続いているって話だぞ? そんなところに行くのか?
「まあ、五年近くもここらへんに閉じこもってたんだ、外の景色を見たくもなるさ」




